« アニキノブログ | メイン | 菅沼実に注目すべし!! »

2007年03月04日

●変わらないもの、変わるべきもの (FC東京×サンフレッチェ広島)


昨日の午後、味の素スタジアムでJ1第1節。FC東京 2-4 サンフレッチェ広島。さて、いよいよやってきた開幕戦である。2007年シーズン最初の試合はホームの大声援に押されて全体的には攻勢に出ながら、苦手・広島(勝てない印象なんだよなー)の超強力2トップに4失点を喫してあえなく撃沈。勝負としては紙一重にも思える内容だったけれども、「相変わらず変わらないもの」も痛感させられる敗戦だった。


今回の開幕戦ゲストは岡林信康さん。アップテンポの太鼓と尺八に「エンヤー、ローサー!」のボーカルを乗せていく不思議な演奏でそれなりに楽しかったが、しかし場内はなんとなく狐につままれたような雰囲気になっていたような(笑)。途中「諸君!こんな声では船が沈んでしまう。東京が沈んでもいいのか!!」(うろ覚え)とかいう煽りを入れてくれたにも関わらず、いまいちノリきれなかったかも。さすがにみんな知らないからなあ、この人。



試合は東京の攻勢で始まった。前からの積極的なプレスでボールを奪い、石川のドリブルを軸に攻めたてる。中盤では福西が慌てないボールさばきで攻撃を作る。0分金沢のロングシュートを皮切りに、1分ルーカス(ミドル)、3分今野(ヘッド)、3分伊野波(ミドル)と立て続けのシュート。広島は少ないタッチでつないでリズムを整えようとするも、東京の前がかりの守備を前にパスミスを連発してなかなかFWまでボールが届かない。

8分、中盤まで下がったウェズレイのスルーパス、足を滑らせた吉本の裏をとった佐藤寿人が土肥と一対一になりかけるも、カバーに戻った伊野波のスライディングタックルが決まる。よし!12分には広島陣浅い位置でスタートを切る石川から平山へ楔のパス、平山の戻しパスを受けた梶山がダイレクトでスルーパスを送り、DFの間に走り込む石川がGKと一対一に。決まったか、と思った瞬間にシュートはバーを直撃。いい形だったが……。

13分、なんと先制点は広島側に入る。左サイドの争奪戦から大きく右へ展開、駒野のアーリークロスがさらに逆サイドへ抜け、抜け目なく走り込んでいた佐藤寿が左足のダイレクトボレー。ボールは、横っ跳びする土肥の指先をかすめてゴール右隅へ……東京ファン一同呆気にとられる、見事な得点シーンだった。毎度のことながら、このチームの2トップには圧倒的な決定力を見せつけられてしまうのであった。

この得点で広島側はにわかに活気づき、ほぼ互角の攻め合いに。そうなると決定力の差がますますものを言う。15分、石川が高速ドリブルから鋭いクロスを入れ、平山倒れながらのヘッダーはポストわずか左。17分にはようやく左サイドをえぐった金沢がDFを抜いてクロス、どフリーのルーカスが頭で合わせるもバーの上。そのゴールキックからの流れで広島は縦のロングパス、佐藤寿が吉本を振り切って抜け、きっちり土肥の脇を抜いてゲット。0-2。
 
こうなると広島ペース。20分、大きな展開から駒野ががら空きの右サイドを一気に駆けてシュート、土肥がかろうじて弾き出す。駒野は文字通り傍若無人の暴れぶりである。24分には服部の斜めパスで柏木がボックスへ侵入してシュート、土肥セーブ。そして27分、右サイドの攻防から柏木がDF裏に抜け、斜めにボックスへ突入してシュート。至近距離の一撃に土肥キャッチしきれず、拾ったウェズレイのシュートがDFの足の間を通ってゴールイン。0-3。

さすがに耐えきれなくなった東京ベンチは吉本OUT藤山INの交代。藤山は鋭い飛び出しで2トップへのパスを遮断し、東京はやっとひと息がつけた。もっとも、リードする広島は余裕のパス回しぶりで、逆に東京は迷いと焦りからか淡泊なロングパスが増える。前に蓋をされた石川が空回りし始め、梶山は「持つだけ」になってしまうのもいつもの悪いパターン。下田の堅実なセーブにも阻まれ、なかなかチャンスを作れないまま前半終了。

ハーフタイムにファンクラブテントの前を通りがかった時、「キッズクラブ受付はこちらです…」と案内するスタッフの声がやたらか細かったのは気のせいか(笑)。


後半頭から東京は梶山に代えて馬場憂太投入。これで前半よりもパス回しが滑らかになり、アタッカーが勝負する状況を作れるようになった。49分、右でキープした憂太からボックス手前のルーカスへ斜めパスが通り、左→右と切り返して倒れながら撃ったシュートがゴール右隅へ決まった。1-3。「よし、まだ時間もある。今日は平山の日ではなさそうだが、ルーカスからは得点のニオイが漂っている。まだ行けるぞ!」。

……と思っていたら、直後の52分。ゴールキックからウェズレイが競り落としたボールを佐藤寿がダイレクトボレー、バーに当たって跳ね返ったボールをきっちり詰めるウェズレイが頭で押し込む。1-4。反撃に転じてすぐの追加点。カバーに入るべきDF(徳永か?)が棒立ちになっていたみっともなさも合わせ、これはあまりにも痛かった。55分には駒野のアーリークロス(またか!)をファーで佐藤寿が待ちかまえる、というシーンは戻った福西が間一髪カット。

東京は何度もアタッカーまでボールが入るのだが、広島が引き気味ゆえにDFの壁を前にする場面ばかり。60分、孤立した福西が自陣でボールを奪われ、森崎のミドルシュートがバーの上へ。61分、敵陣左サイドのFKで憂太が巻いてゴールへ向かうキック、ルーカスがDFと競りながらわずかに頭で触り、右隅へゴールイン。2-4。63分には憂太から左の平山へ展開、折り返しを受けた福西がボックス内へ強引に突入して倒されるもノーファウル。

東京としてはここで畳みかけたいところだったのだが……そろそろ体力的に苦しいのか、後半当初のつないでいくイメージは失せ、ロングボールを使った粗い攻撃が再び増えてしまう。特に今野(数日前まで高熱があったそうだが)は動きの質も量もガクンと落ち、すっかり存在感を失ってしまった。大きくボールが行き来しているうちに時計はどんどん進んでいく。

流れを変えたい東京は、70分にボックス正面FKの場面で規郎投入。このFKは思い切り壁に当たったが、クリアのこぼれ球を伊野波が右へ展開、石川がグイッとえぐってから走り込む平山の頭目がけて絶妙のクロス。完全に決まっただろう、と思えた場面。しかしシュートはバーの上へ。頭を抱えたのは僕だけではあるまい。平山はその直後にも憂太のスルーパスでボックスへ突入するも切り返しでまごついて逸機し、「シュート撃て!」コールを浴びていた。

終盤には双方とも体力的に苦しく、試合は膠着気味に。東京も福西を起点に攻めはするのだが、各選手のフォローは遅く、かさにかかることができない。状況を何とか打開しようと目立ったのは藤山で、ボールを奪っては敵陣へ持ち上がる姿に拍手がわく。が、あくまで孤軍奮闘。80分、FKから波状攻撃となり、徳永の鋭いミドルシュートを下田が横っ跳びで弾き出し、そのCKにルーカスが頭で合わせるが枠外。結局、2-4のまま終了のホイッスルが鳴った。



広島は、アウェイ仕様ということなのか全体的にカウンター中心だったが、それでもJ屈指の2トップがいれば威力は十分。日本代表駒野からの好クロスもあり、佐藤寿とウェズレイがそれぞれ2得点。自らの持つ強みは存分に生かしたと言えるだろう。チームの意思統一も見事で、いい意味で「身の丈に合ったサッカー」だと思った。参りました。他の選手では、U20代表の柏木が素晴らしかった。彼はいまにA代表にも上がってくるだろうね。

FC東京の方もスコアほどにはひどい出来でもなく、12分の石川のシュートが決まっていれば勝負は全くわからなかったとは思う。前半の敵陣における攻撃的守備などは02~04年の東京を想起させ、「ああ原さんが帰ってきたんだなあ」ということを改めて実感することになった。ただし、色んな意味での対応力のなさも相変わらずで、加えて今後整理されるべき課題も多々あることが明らかになった試合であったとも思う。

例えば新人・吉本の先発。これははっきり失敗だった。確かにヴェルディとの練習試合で周りと遜色なくやれていたのは事実だが、何しろ今回は佐藤寿とウェズレイが相手である。いくらなんでもJ最強のFWを相手に、しかも開幕戦でデビューさせなくても、というのが正直な感想。まあ、原さんも半ばギャンブルのつもりだったろうけど、「9回外しても1本決めれば自信になる」FWと違い、DFは「9回止めても1回ポカすれば自信を失う」ポジションだから。

また、この試合では時間帯によって4-3-3気味になったり4-4-2気味になったりしていたようだが、その時々の状況に応じた各選手の役割は徹底されていない様子だった。特に左サイドの守備については曖昧で、そこを駒野に使われてどうなったかはご覧の通り。ルーカスが引いてこず、おまけに後ろの吉本にも気を遣わねばならなかった金沢はまことに気の毒。本来ならそこまでカバーできそうな今野は体調不良……。

研究・対策をしっかりやって目の前の「この試合」を取りに来た広島に対して、東京は新加入選手の融合など「チーム固め」や将来を見据えた「抜擢」を重視して(というかそれらに追われて)選手のポテンシャルを出し切れなかった、とも言えるだろうか。結局、こういう事をやって(開幕戦はなぜかいつも勝っていたが)もたついているうちに勝点で上位と離されて苦況に陥る(そして終盤に帳尻を合わせる)例年のパターンになったりして。

繰り返しになるが、決して騒ぐべき事態(惨敗)ではない。開幕戦連勝記録だって、当たり前だがいつか途切れるのはわかっていたのだし。でも、「今の時点」で完敗を喫したという事実は真摯に受けとめて次に生かさなくては。必要なのは「対応する力」。福西先生に期待したい。


しかし、それにしてもこの試合の藤山は良かった……彼のプレーで萌える、じゃなかった、燃えるために入場料を払ったようなもんだ。誰だ、「藤山はもうCB無理」とか言ってたのは(笑)。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2206

コメント

■藤山でいいじゃないか!
いのうえと申します。
3日の試合見て、どこかに書き込もうと思ってたのですが、ディフェンスリーダは藤山でいいじゃないか!!という感想です。無理に若い人にやらせなくたって、毎年毎年ディフェンスラインの見直しをしなくても、経験豊富で、ずっと東京を支えてきた彼がリーダでいいじゃないの!?という気がしますが、ダメっすかねぇ?
ミスタートーキョー、東京のカンナバーロ!がんばれ藤山!!

左サイドを狙われてしまいねぇ…。後に戻れる戸田がいなくなったのはこれだけ痛いものなのかと感じました。ただ課題は浮き彫りになったし、修正は一週間で出来る範囲のものだと思います。次節に期待したいなぁ。

試合後にMDP読んで気付いたのですが、対広島って、戸田の例のハットトリック以来勝てて無かったんですね。
5年弱、勝てて無いってもスゴい話だ。

いやーしかし、気候の良い試合ってのは、
内容問わず少なくとも幸せですね♪

>いのうえさん
確かに。
原さんとしては、おそらく「いざとなれば代わりに藤山がいる」ということで(実際そうなってしまったのですが)思い切って吉本を起用してみた、ということだとは思うんです。
ただ、ヴェルディ戦の藤山、その時に私もちょっと触れましたけど、やたら体調が良さそうでしたからねえ(FWをショルダーチャージで吹っ飛ばしたりしてた)。普通に藤山で良かったじゃないか、とは思ってしまいますよね。特にDFだし。

>修正は一週間で出来る範囲のものだと思います。
そこで、左に「戻れる」サイド系の選手を置いて完全な4-5-1布陣にするのか、それとも別の解決策を打ち出してくるのか、楽しみですね。
大宮も4-5-1に近い形のはずだから、あえてがっぷり四つを選んで前者で来るかな。

>5年弱、勝てて無いってもスゴい話だ。
私の父親は、開幕戦のカードを聞いた瞬間に「広島か……駄目だ……」とか呟いてましたから(笑)。

>いやーしかし、気候の良い試合ってのは、
>内容問わず少なくとも幸せですね♪
まったくです。なんだかんだいって、暖かい中で割と楽しく観てしまったような(笑)。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)