« 「天気晴朗なれども波高し」 (練習試合「ダービー」テレビ観戦) | メイン | ひたすらに、寒かった…… (U22日本×香港) »

2007年02月27日

●東芝×トヨタ自動車 ('07ラグビー日本選手権決勝)


日曜の午後は、ラグビー日本選手権決勝を生観戦。東芝ブレイブルーパス 19-10 トヨタ自動車ヴェルブリッツ。準決勝でヤマハ・サントリーという強豪を一蹴して勝ち上がった、好調同士の対戦。東芝にしてみれば連覇(そして昨年は逃した単独優勝)が、トヨタにしてみれば20年ぶりの優勝のかかった大一番である。寒風吹きすさぶ冬晴れの午後、秩父宮には1万8千人の観衆が詰めかけた。



立ち上がり、まずはトヨタが攻勢に出る。SOアイイが大きくボールを散らし、NO8菊谷・CTB赤沼・WTB遠藤らが次々と突破を図る。押し込まれた東芝はたて続けに反則を犯し、6分に2つ目のPGをアイイが成功させてトヨタ先制。準決勝の勢いそのままに自信をみなぎらせるトヨタのプレーぶりは、その後の展開に大きく期待を膨らませるものだった。

しかし、そこはさすがに王者・東芝。SO廣瀬を起点とするパス攻撃ですぐさま反撃に出る。8分、右タッチライン際22m内のラックから左へ展開、5人の手を経たパスは左サイドでフリーになっていたLO石澤まで渡り、追いすがる菊谷を振り切ってトライ。5-3。東芝のパス出しが特段速かったわけでもなく、普通の展開だったのだが……あっけない逆転シーンだった。

逆転しても東芝は攻撃の手をゆるめず、得意のドライビングモールも交えるように。モールがゴールラインを越えた場面はトヨタDFが粘って押さえさせなかったものの、18分、東芝はパス攻撃でマクラウド、続いてオトを撃ち込んでから左へ速い展開、またも石澤が真っ直ぐ走りきってゴールへ飛び込んだ。コンバージョンも決まって12-3。うーむ、やはり東芝が強いのか、という展開。

ところが、前半残り時間も少なくなったところで再びトヨタが盛り返す。東芝は反則やミスで逸機するうちにリズムを失い、逆にトヨタのDFは東芝の攻めがやや単調になったところできっちり対応できるようになって逆襲に転じた。が、右ライン際あと一歩まで達した遠藤は東芝懸命のダブルタックルに押し出され、30分にはアイイがイージーなPGを外してしまう。結局9点差のまま後半へ。



後半。悪い時の「モール依存症」が出た東芝は、ラインの人数が足りなくなっては蹴ってボールを手放してしまう悪循環。トヨタの方は迷いなくイケイケの状態になってきた。11分、アイイの柔らかいパスを受けたFB正面が左サイドを走り、ゴール寸前つかまったところでフォローに入った赤沼へ折り返し。赤沼はタックラー2人に絡まれながらもギリギリのところでトライラインを越える。気迫のトライ。12-10。

一気に逆転したいトヨタ、是が非でもしのぎたい東芝。東芝はまたしても反則が増え、今度はトヨタがスクラムやモールで押し込む場面も。選手もスタンドの観客も、ここからの攻防が勝敗を分けることを確信していたに違いない。一つ一つのプレーに対して喜怒哀楽のこもった声援が飛び続ける。「行けー!」「ガンバレ、耐えろ!」。僕の周りはトヨタファンが多く、エライ盛り上がりようだった。

右ライン際、突進するアイイに立川が正面からぶつかって押し出す。ハイタックルの反則。この試合、立川がシンビンをくらわなかったのは東芝にとっての幸運だった。20分頃にはトヨタのモールがゴールラインを越えるも、グラウディングできずノートライ。これも非常に微妙な判定で、トヨタファンからは不満の声が上がっていた。直後、ゴールライン手前のラックで東芝がボールを奪う。富岡が拾ってすかさずタッチへ。この粘りはさすがだ……。

22分、ハーフウェーライン近くから狙ったアイイのPGは距離十分だったもののわずかに外れ。その後も東芝のしつこいDFが続き、30分を過ぎる頃からはなりふり構わずモールを多用してゲームを眠らせにかかった。ジリジリと進んではサイドを突き、またモールを組んでジリジリジリ。相手にしてみればこれはキツイ。トヨタは次々と選手を入れ替えるが、目立った効果は表れず。東芝はバツベイ投入で密集戦を強化。

そして39分。東芝はピッチ中央のラックから左へ展開、DF3人につかまったオトのオフロードパスで立川がラインの裏に。立川はそのまま勝負し、スラロームのようなステップで最後のDFを抜き去ってゴールラインへ駆け込んだ。勝利を確信したか、片手でボールを高く掲げてトヨタに見せつける立川。相変わらずだなこの男は。微妙な点差だけに、「んなことやってないで中に回り込めバカ!」と叫んだのは僕だけではあるまい(笑)。

ロスタイム、なおあきらめず攻めるトヨタ。東芝は油断もあったか、あっさりと22m内への進入を許した。右ライン際を途中出場のセコベが駆ける。不用意にタックルへ入る立川がかわされ、前が開いた。ここでトライをとれば(トヨタは廣瀬が入っていたので)即2点差。時間は残っている。まだわからない!と思った瞬間、富岡主将の炎のカバーディフェンスが決まってセコベはラインの外へ飛んでいった……。東芝、2連覇達成である。



正直なところ、内容はさほど褒められたものではなかったように思う。確かに拮抗はしていたしロースコアではあったが、双方とも反則やミス、それもさあチャンスになるか、というところで自滅するケースが多く、「引き締まった防御戦」とはとても呼べない試合だった。特に東芝は苦しくなるとすぐ密集周りで反則するのが……この両チームに限らず、ディシプリンの重要さはもっと強調されてしかるべきだろう。

とはいえ、東芝相手に正面から力勝負を挑んだトヨタのラグビーにはある種の潔さがあり、見ていて清々しかったのも確か。来季はもっとムラっ気を少なくして細部を詰めることだろう。また、東芝は……良い意味でも悪い意味でも、完成されたチームであることを改めて示す勝利だったと思う。後半20分の勝負所で相手をめくり上げたラック、そして富岡キャプテンを筆頭に見せた粘り強いカバーディフェンス。繰り返すが、さすがである。


東芝の薫田監督、トヨタの朽木監督、ともにこの試合で勇退。結果的に明暗が分かれてしまったわけだが、昨年の早稲田戦の敗北からここまで、不安定なチームをどうにか引っ張ってきた朽木さんには拍手を送りたい。薫田さんの功績については言わずもがな。トップリーグ開幕戦の驚きと興奮は今でも忘れがたい。この5年間は、芯の通った指導者が芯の通ったチームを作り上げ、維持してきたモデルケース。いや、ホントにお疲れ様でした。


さあ、トップリーグはこの1ヶ月で日本ラグビーを確実に盛り上げた。次はジャパンの出番だ。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2199

コメント

勝敗や両監督の事情を抜きにして、選手の気持ちが伝わり、ズシリと重たい試合でした。
試合を見終えた帰途、次第に感情を微妙に動かされました。
まさか最後の試合でこんな微妙な気持ちになるとは思いもしませんでした。

あとこれだけ言わせてください。
トップリーグは我が軍のライガーを『ベストファンサービス賞』加えて欲しかった(笑)。
ファンサービスが不得手な我が軍の中で選手達に代わってこれでもかとファンサービスに徹したライガーほどサービス精神旺盛なマスコットは他のチームには居ません。

あのトライについてはいろいろと考えされられました。

>選手の気持ちが伝わり、ズシリと重たい試合
確かに。勝ちたい気持ちは伝わってきましたですねえ。

もしかしたらト、ヨタは気持ちが先行しすぎて「一番いいラグビー」ができなかったのかもしれません。まあ、久々の大舞台だったから……。トップリーグ初年度の2部スタートから着実に盛り返して、来年はさらに期待ができるでしょうか。

>ライガーほどサービス精神旺盛なマスコットは他のチームには居ません。
つーか、はっきりしたマスコット自体がトップリーグでは稀有では。

>あのトライについてはいろいろと考えされられました。
立川のトライですね。おしゃるとおり、あのボールを高く掲げながらの走りは、「ボールを落とす危険」と「相手への敬意の欠如」の2点から賞賛しがたいものがあります。んなこったから審判にも目をつけられるんだ……と言ったら言い過ぎかな。

一昨年のイタリア戦の大畑「幻のダイビングトライ」が頭をよぎりました(笑)。

murataさんへ
コメントを読んでいただきありがとうございます。
murataさんと同じ内容になると思いますが、この件について僕もブログに書きました。
拙い文ですが、良かったら読んでください。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)