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2007年02月19日

●東芝×ヤマハ発動機 ('07ラグビー日本選手権準決勝)


午後、秩父宮ラグビー場で日本選手権準決勝。東芝ブレイブルーパス 47-10 ヤマハ発動機ジュビロ。試合直前まで降っていた雨のせいか、お客さんはちと少なめ。メインはいつも通り常連さんで一杯だったが、バックスタンドはややまばら、大半が青か赤の雨合羽を着た応援団のようだった。MSカップ決勝の満員ぶりと比べてやや寂しく感じてしまう。まあ、トップリーグも「社会人」と「プロ」の境界線上にある状態だからなあ……。



序盤から攻勢をかけたのは、風上に立つ東芝。最近にしては珍しく(?)思い切りのいいパス攻撃を仕掛けていく。4分、SO廣瀬からロングパスを受けたCTBマクラウドが右ライン際へスワーブを踏んで勝負、タックルを受ける間際にWTB吉田大へ渡し、吉田が躊躇のないカットインでDF2人をぶち抜いてインゴールへ。続く11分、ヤマハ陣深くまで押し込んでから必殺のドライビングモールが中央に決まる。あっという間の連続トライで14-0。

対するヤマハは、どうも攻守に精彩を欠く。先制トライを許した場面に象徴されるようにタックルは後追いで甘く、DFラインは後退ばかり。攻撃でもハーフ団からのパスが浮き気味で、すぐに行き詰まっては効果の薄いキックでボールを手放してしまう。キックはFB立川を狙い撃ちする意図もあったのかもしれないが、それにしても淡泊だった。東芝の方にもミスは多く案外得点は離れなかったものの、形勢は明らかだった。

28分、東芝の追加点。左サイドでのつなぎから立川がステップを踏んでDFラインを崩し、後ろから加速して走り込む廣瀬にラストパス。廣瀬はDFを引きずって前進し、ゴールポストに当たりながら上手く押さえてトライ。21-0。さらに35分には左サイドへの飛ばしパスが決まって立川がトライラインを駆け抜ける。28-0。この時点で勝敗は決まった、とも言いたくなるような一方的な展開であった。どうしたヤマハ?


後半、今度は風上に立ったヤマハが反撃。4分、右サイドへの展開からFBウイリアムズがギリギリのところに飛び込んでトライ。コンバージョンは惜しくも外れたものの、追い風に乗ってさらに攻勢をかける。10分前後にはドライビングモールがゴールラインを越えたかと思われる場面があったが、これはダウンできず。逆に、次の攻防の密集でボールを奪い返した東芝が逆襲からオトの独走でトライを奪い、再び突き放す。35-5。

ヤマハはCTBにレーニーを、SHに村田亙を投入。人気者たちの登場に、元気を失っていたヤマハ応援団もやや力を取り戻したように思えた。実際、この2人が入ってからヤマハのパス攻撃は正確さを増し、しつこくつないで東芝DFラインを突き続けることに。20分には東芝ゴール前のラックから村田が懸命にかき出したボールをSO大田尾が拾い、自分の股の間からラストパス。再びウイリアムスがインゴールに飛び込んで35-10。

ところが。直後の23分、ヤマハ陣に入った東芝は廣瀬が左隅に巧みなグラバーキック、ヤマハDFの戻りが遅れたところを立川がさすがの反応で抜けて押さえ、あっけなくまたトライを奪う。40-10。密度の濃いDFで隅にしかトライをさせない上に、得点されればすぐに抜群の集中力でトライを返す。MSカップ準決勝対トヨタ戦でも見られた光景だが、ここら辺は本当に勝ち慣れているチームの強みなのだろう。「勝ち方を知っている」とでもいうか。

その後は、懸命に攻めるヤマハに対して東芝がしつこいタックルと密集の絡みで試合を眠らせにかかり、思惑通り膠着状態に。ジリジリと時間がたつ中、PR笠井のシンビンでヤマハが数的優位となるも大勢には影響なし。結局、ロスタイムにも1トライを追加した東芝が実に37点の大差で圧勝した。試合後、ヤマハの選手たちのサバサバした雰囲気が、両チームの力量差をよく表していたように思う。



東芝にしてみれば、ヤマハはリーグ戦で苦杯を喫している相手。胸のすく快勝だろう。嬉しかったのは、前半に見せてくれた展開ラグビー。無論「風上のうちにできるだけ叩く」プランに沿っての選択だろうし、薫田政権前半期の「高速編隊攻撃」とは異質のものではあるけれど、ここ最近の「一丸モールこそ東芝」みたいなスタイルがあまり好きではないだけに気持ちがよかった。薫田監督退任と「侍」不在が効いたということかな。

もっとも、一方で、見ていて気持ちのよくないプレーも東芝にはあった。特に後半多かった、密集周りでの反則である。おそらく村田亙を封じたい気持ちが強かったのだろう、スタンドから見てもはっきりわかるほどのオーバーザトップやオフサイドで村田を巻き込みにかかっていた。笠井のシンビンは当然だし、もっと早くイエローを出してもよかったくらい。誰もが認める王者だけに、それに相応しい堂々たるプレーを望みたい。

敗れたヤマハは、元々勝ち味に遅くなかなか優勝に手が届かないチームではあるが、この試合ではこれまでとはちょっと異なる脆弱さをさらけ出してしまったように見えた。ユルい守備に淡泊な攻撃。昨年までのチームが持っていた粘り強さと堅牢さはどこへ行ってしまったのだろう?攻撃に関しては、村田亙とレーニーを投入してからは多少は締まったように見えた。守備は……立川や吉田が凄いだけではないよなあ。


さて、準決勝のもう一試合はNHKの録画放送で後半だけ観た。トヨタがサントリーに完勝。トヨタは伸び伸びと自らの強みを前面に出し、受けに回ったサントリーは完全に腰砕けになってしまったようだ。サントリーについては、MSカップ2試合の疲弊・消耗ぶりを見るに、結局シーズン通して覇を競うだけの力がまだないということだろう。まあ、たった1年で本質的に変わるのも無理な話で、暗示が解ければこんなものかもしれない。監督もチームもまだまだ発展途上。

ということで、決勝は東芝×トヨタ。ともに監督の退任が決まっているチーム同士の対戦でもある。メンツ的にも実績的にも、トヨタの方が爆発力みたいなものはありそうだ。チームの熟成度と安定感ではもちろん東芝が上回る。どっちが勝つか予測は難しいけれど、とりあえず僕は東芝を応援することにしたい。朽木さんも素晴らしい選手だったけど、世代的にはやはり薫田さんの方に思い入れがあるから。良い試合になってほしい。

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コメント

サントリーは思ったような試合ができなかった感じでしたね。

東芝の密集周りでの反則、そんなにひどかったのか。
サントリーVSトヨタの試合を見ていたので分からなかったんだけど。
こっちの試合もトヨタの倒れこみはすこしひどいなぁと思ったけどね。
ヨメサンとあれじゃボール出ないよ!って2人で憤慨してました。

トヨタは東芝に勝つのは難しいだろう…

不可能では無い、実現可能と自らを信じ込ませています!

贔屓チームの見事な勝利。本当に嬉しいし、決勝戦に出場できる喜びに暫し浸っています(笑)。

我が軍が20年ぶりに日本選手権優勝の賞状etcとNHK杯を豊田市に持ち帰ることを願い、今季4回目の秩父宮行きです。

これが終わればいよいよJリーグ開幕ですね(笑)。

>サントリーは思ったような試合ができなかった感じでしたね。
まあ、若いチームなので、一旦勢いが止まった状態になるとツラいんだろうね。

>東芝の密集周りでの反則
東芝もここ2年くらいはちょっとねえ。トップリーグができて、ようやく日本のラグビーも「全員が立ってプレーする」事が普通になったかな、と思いきや、最近また(東芝に限らず)スピーディーな展開を阻むプレーが増えてきたような気がする。そんなことではお客さんが増えないぞ。

>クロゴマさん
さすが、良くも悪くも振り幅の大きいトヨタですね(笑)。いや、冗談抜きで、今の東芝を葬り去るとしたらピークパワーのトヨタしかないのではないかとも思います。

>これが終わればいよいよJリーグ開幕ですね(笑)。
フットボールおたくにオフシーズンはない、ですね。お互いに(笑)。

>>東芝もここ2年くらいはちょっとねえ。

以前は東芝は立ってプレーするんだ!っていうのが東芝の強さであり、そういうスタイルだと思っていたので、ちょっと意外な印象ですね。
安定期を過ぎてパフォーマンスが下がってきてしまっているのかな?

そうなんだよねー。今でも、「ここが勝負」のところのモールはけっこうすごいんだけどね。

やっぱ勝ち慣れるとサボることを覚えてしまうのかね?

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