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2007年02月16日

●『機動戦士ガンダム一年戦争全史 上』

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先日、さる方からいただいた『機動戦士ガンダム一年戦争全史 上』(Gakken)を読んだ。おなじみ『機動戦士ガンダム』(いわゆる「ファースト・ガンダム」)で描かれた地球連邦とジオン公国の戦争について、「歴史群像」シリーズと同様の形式でまとめた架空戦記書。

内容としては、「宇宙世紀」の年代記、ミノフスキー粒子の「物理学的な」説明、両国の政治体制や軍事組織の解説、MSの工学的検討、兵器や作戦についての考察、etc……すげえ膨大な量であり、一つ一つのこだわりも凄い。たかが一つのアニメのためにようこここまで作るなあ、とひたすら感心。「アホだ」とも言えるし、「やはりガンダムは偉大だ」とも言えるだろう。

本書は上巻ということで、いわゆる「一年戦争」の前半までを対象としている。具体的には宇宙移民の経緯からジオンの奇襲による開戦、ルウム戦役と地球降下作戦を経て、オデッサ作戦による連邦の反攻が始まるまで。ここら辺は戦争終盤を舞台とする『機動戦士ガンダム』本編では描かれなかった部分であるり、従来まとまって一冊になっているものがなかったので、ファンとしてはけっこう嬉しい。


その制服や首脳陣の持つ優生思想的なものから「ジオンはナチス=ドイツそっくり」とは前から思っていた(実際、映画の中ではギレン・ザビをヒトラーに喩える台詞が出てくる)のだが、この本で詳しい経過を追うと、戦争それ自体の展開もまた第二次世界大戦をモデルとしていることがよくわかる(まあ書いているライターがミリタリー系だからっつーのもあるのだろうけど)。

つまり「奇襲による緒戦の大勝」→「快進撃、資源確保を目指して領土拡大」→「攻勢限界点を超えてしまい膠着状態に」→「当初劣勢だった側の反撃作戦により形勢逆転」という。これは、ナチス=ドイツや大日本帝国が苦汁をなめたパターンの通り。また、連邦とジオンの圧倒的な物量差が勝敗を分けたことも示唆されているが、これまた第二次大戦における連合国と枢軸国そのままである。

主人公アムロらホワイトベースの面々の戦いというのは、劇的ではあった(当たり前か(笑))けれども戦局を決定的に左右したわけではない、というのが「ガンダム」の設定のオトナちっくなところであり、まさにそれまでのロボットアニメとは一線を画する点であった。だから、この本で読む戦争の推移については非常に納得させられる。米国が少数の英雄によってドイツや日本に勝ったのではないのと同様、連邦もまた国力全体でジオンを圧倒したのだ、ということ。


……って、ガンダムについて書き出すとホント止まらなくなるな(笑)。まあ、とにかく、ガンダム(あくまで「ファースト・ガンダム」ね)好きな人にとっては必携、とまでは行かなくてもそれなりに読む価値のあるサブテキストなのではなかろうか。下巻もきっちり購入することにしよう。

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コメント

やっぱ、偉大ですよね。好きな人には。
なんでハリウッド(つか徳間書店でもなんでもいいけど)が実写版で映画化しないのかと思いますよ、奥さん!

ガンダム、偉大ですよ。なんせ僕らの世代の「神話」ですから。

>なんでハリウッド(つか徳間書店でもなんでもいいけど)が実写版で映画化しないのか
実写版……うーん、今の技術ならばモビルスーツや宇宙戦闘の描写なんかもかなりいい線行くんでしょうけど、人間パートの描写がかなり難しいことになるかと。あまたあるアニメ(やマンガやゲーム)の実写化の失敗例(マリオとか(笑))を考えると、ファン的にはちょっと腰が引けますね……。

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