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2007年02月02日

●「魔術と呼ばれた組織プレー」


先日BS-hiで録画しておいた『スポーツ史の一瞬 魔術と呼ばれた組織プレー』を観た。


日本ラグビー史上最高の名将である、故・大西鐵之祐監督が率いた日本代表の「伝説の」戦いを描いたドキュメンタリー。当時の選手たちの証言を交えながら、大西監督の編み出した数々の新プレーや「知と熱」を兼備した独特の指導法を紹介し、50年代の早稲田時代から68年のNZ遠征、71年のイングランド戦に至るまでをバランスよくカバーする構成となっていた。

出てくるエピソードはどれも、熱心なラグビーファンにはお馴染みのものである。緻密な研究によるダイレクトフッキングとカンペイの開発、NZ遠征前半の苦闘とオールブラックスJr戦の大金星、そして秩父宮のイングランド戦でピッチ脇に溢れた大観衆と、試合後の興奮の中での胴上げ。目新しいものは特にない……はずなのに、見ているうちに鼓動が高まり、目頭が熱くなってくるのはなぜだろうか。


とにかく嬉しかったのは、大西ジャパンの主要な試合のVTRを目にすることができたことである。イングランドとの第1試合(花園)についてはビデオも発売されているのだが、NZ遠征やイングランドとの第2試合(秩父宮)についてはなかなか見られなかったのだ。実際に目にする当時の日本代表のプレーは本当に素晴らしい。今の日本人から見るとはるかに小柄な選手たちが、一回りも二回りも大きい巨漢に敢然と挑む姿は。

正真正銘の「展開・接近・連続」。目にもとまらぬスクラムの球出し。衝突寸前、DFの脇の下を縫うようにパスを通すCTB横井。カウンターからカンペイから、スルスルスルッと抜けていくFB萬谷。ライン際で快足を飛ばすWTB坂田。転がるボールに身を捨てて飛びつくFL山口。確かにこのチームには、僕たちが愛してやまない日本ラグビーのエッセンスが詰まっているのだ。しかも相手はNZにイングランドだ、感動しないわけがないだろう!


昔から思っているのだけれど、日本ラグビー協会はジャパンの過去の勇姿についてファンに伝える努力をもっとするべきだ。懐古趣味に浸れというのではない。新しい技術を否定するのでもない。でも、大事なものをどこかに置き忘れてしまうことがあってはならないし、歴史から多くのことを学べるのが人というものである。そして何より、素晴らしい先輩たちが成し遂げた栄光は、僕たちにとっても誇りと希望であるに違いないのだから。

たとえば、今年のパシフィック・ファイブ・ネーションズのオールブラックスJr戦。おそらく会場は秩父宮だろうから、そこで試合前に短くてもいいから、68年のジャパンがパス攻撃(もちろんカンペイを交えて!)で黒衣軍団からトライを奪うシーンを流したならば……ファンの思い入れは違ってくると思うのだがどうだろう。今秩父宮のスタンドに一番足りないのは、日本代表に対する大いなる期待、つまりは「夢」だと思うのだ。


[追記]
明日(土曜日)の朝8時から、BSハイビジョンで再放送があるらしいぞ。必見!!

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コメント

そんな番組しらなんだ。一生の不覚Orz

こんばんは。

>ぶらっくばすさん
4日(日曜日)の午前11時10分からBS1で最後の再放送がありますよ。

>murataさん
山口さんは確かフランカー(7番)だったはず。
エイトは宿沢ジャパンのコーチで、ラトゥや梶原をシゴキまくった村田義弘さんですよ。
すみません、重箱の隅で^_^;

>オ~スティン さん
ご指摘ありがとうございました。
さっそく訂正させていただきました。

見ましたよ。

いや~よかったですね。
横井さんの接近戦の話なんて最高でしたね。

>68年のジャパンがパス攻撃(もちろんカンペイを交えて!)で黒衣軍団からトライを奪うシーンを流したならば

ぜひともやってほしいですね。

>横井さんの接近戦の話
シンプルながら実に理にかなった話だったよね。あと、「当たること」そのものを回避しているのではなく、小さい人間がクラッシュの際(あるいは間際)にいかにしてプレーの自由を奪われないか、というスタンスなのを確認できたのがよかった。

今年のオールブラックスジュニア戦は秩父宮で行われるので、試合前の演出はぜひともがんばってほしい。変なDJとかタレントとかじゃなくて。

>スタンス

まさに肉を切らせて骨を絶つって感じだよね。

あの番組はジャパンスコッドの合宿で放映して感想文書かせたいよ。

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