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2007年01月29日

●'06-'07マイクロソフト杯準決勝


昨日の午後は、秩父宮ラグビー場でマイクロソフトカップ準決勝を観戦。東芝ブレイブルーパス 38-33 トヨタ自動車ヴェルブリッツ。事前に当事者もファンも頭に思い浮かべていたであろう「王者・東芝にタレント軍団トヨタが挑む」という構図そのままの内容となった。結果は、優位に試合を進める東芝をトヨタが何とか追走し、トライの奪い合いの末にわずかの差で東芝が逃げ切り。最後まで一方的にならずなかなか楽しめる試合だったと思う。


序盤は完全な東芝ペース。先制点こそトヨタがPGであげたものの、すぐさまFB立川が右タッチ際を巧みなドリブルで抜け、あれよという間の独走トライ(さすがは日本有数のビッグプレーメーカー!)。そして9分、東芝が今度は左→右とピッチを横断するパス攻撃を見せ、WTB吉田がきれいに抜けてトライ。仕留めの正確さとDFライン構築の速さでは明らかに東芝が上回っており、「これは大差がつくかも」と思える展開だった。


しかし、トヨタも食い下がる。まずはモールからNO8ホルアが飛び込んでトライ。後半開始直後に15点差とされた場面もWTB久住のトライとアイイのPGで追い上げる。個々の強いトヨタは単騎での突破が目立つのだが、SH麻田懸命のつなぎによって何とか攻撃を継続。ボールを支配していたのは完全にトヨタだった。ただし、東芝の素早い戻りに攻撃のフォローが追いつかず、なかなかトライまで至らないのがもどかしいのだけれど。

後半半ばの東芝の攻撃、侍バツベイの突破からSO廣瀬がつないでCTBマクラウドが左中間にトライ。吉田大のPGも決まり、これでさすがに勝負あったかと思いきや、トヨタはアイイとWTB遠藤が馬力でDFを振り切って2トライをあげ、ロスタイムでついに5点差。一発逆転なるか……という状況に。結局は東芝が密集戦の強さを発揮してボールを奪取、そのまま終了となったのだが、しかしトヨタの見せた踏ん張りで場内は沸いた。


前述の通り、決定力と速さは東芝が優れていた。一方、トヨタは個人の強さで上回っていた。勝敗を分けたのは、ゲームコントロールあるいはスコアメイクの巧さの差だと思う。トヨタはせっかく得点してもすぐに失点を許すことが多く、自ら流れを手放すような戦いぶりが目立った。後半28分、アイイのトライで7点差に追い上げた次のキックオフでペナルティを犯し、PGで突き放されてしまったのが象徴的。トヨタらしいと言えばらしいのだが……。

それに対して、ブレイブルーパスの全くソツのなかったこと。全体的に2~3年前のようなキレ味は失われたようにも思えるし、ミスも多いのだけれど、ここぞという場面で見せる自信と集中力はさすがである。素晴らしかったのは前半21分、吉田大(※注)のグラバーキックをCTB富岡がポスト下で押さえたトライ。選手たちの動きと意図がピタリと合って、トヨタDFは何もできず全員置き去り。ああいうのを本当の「キラーパス」というのだ。


ともあれ、トヨタは(調子の波もあるのだろうが)リーグ戦での対戦よりも着実に点差を詰めてきた。東芝は、ある意味完成されているのだけれども、逆に言えば伸びしろはやや少ないのかもしれない。問題は決勝戦の相手がどうか、だ。サントリーも随分とまたど派手な勝ち抜き方をしたものだが……有賀の怪我の具合が気にかかるね。


※注
このゴロのキックパス(という表現がわかりやすいか)、蹴ったのは吉田ではなく廣瀬だった模様。うーむ、そうか……この廣瀬という選手、もう少し展開力というかチーム全体を動かす力が付いてくれば、間違いなくジャパンの10番の本命なんだがなあ。

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コメント

画像を確認すると私とほぼ向かい合わせでみていたようですね!
何気にトヨタ寄り(笑)。
東芝3トライ目のゴロキックは私も手前の東芝の選手に気をとられて富岡鉄平が迷わず走り込んできた時には既に遅し…
負けは負けです。
スポセンに戻ってカイゼンを施し、進化したトヨタラグビーを再び披露できればとファンの身としては思っております。

家でテレビ観戦してました。

>>トヨタはせっかく得点してもすぐに失点を許すことが多く

たしかに、そうだったねぇ。

でもさすが4強同士の戦いっていう質の高いゲームでしたね。花園のほうも。

>クロゴマさん
どうも。やっぱりバスツアーでいらしてましたか(笑)。

廣瀬(だったんですね。吉田大だと思いこんでました)のキックの場面は、確かに富岡は「ファーサイド」の死角にいたので、あのコースに蹴られてドンピシャで走り込まれたら、マークするのはまず不可能ですね。足でこれほどきれいな「ラストパス」が通るのも珍しい。

東芝のチームとしての熟成度を思い知らされると同時に、廣瀬君にはとっとと岩淵の後継者としてジャパンの10番を確保してほしい(それくらい成長してほしい)と思いましたよ。


>こばえもん
さすがに、このレベルになると見応えあるわな。東芝の最初の2トライが入った時はスタンドも「あ~あワンサイドか」という感じだけど、トヨタの、特に麻田の奮闘が試合を救った感じです。

来年は、この力関係が拮抗するくらいまで行くと、トップリーグも相当に面白くなりそう。

不安になりましたので確認しましたが、廣瀬のキックで間違いありません。

ラグビー魂の薫田監督のインタビュー記事を読まれた知人の話によると、薫田監督はあまり話したがらない廣瀬本人に自覚を促す意味も含めて彼を副将に任じたそうです。
お話したことがありますが、現役時代のポジションがフッカーとあって、薫田監督は細かく気が回る手強い御方です(笑)。

私、ラグビー魂はまだ読んでいません(汗)。

>はあまり話したがらない廣瀬本人に自覚を促す意味も含めて彼を副将に任じたそうです
ああ、そうなんですか。慶応のキャプテンだったのにね、彼(笑)。

廣瀬のセンスは間違いなく、現在の日本のSOの中では卓越したものだと見込んでいます(たとえば、サントリーのSO陣と比べても)。でも、センスとフィジカルだけじゃ駄目なんですよね。

薫田監督には、ぜひとも彼を立派なジャパンに育て上げてほしいと思います。

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