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2006年11月16日

●彼らは確実に進歩している (日本×サウジアラビア)

昨晩、NHK-BSの録画でアジアカップ予選最終戦日本 3-1 サウジアラビア。今年最後の代表戦は札幌ドームにて、2ヶ月前にアウェイで負けているサウジが相手。持ち味の素早いパス交換から3点を奪い、相手の攻撃はPKの1点のみに押さえて快勝。見事予選リーグ1位通過を決めた。終わりよければ何とやら、ではないが、来年以降が楽しみになる内容と結果であったように思えた。


今の日本代表の良いところと悪いところが、わかりやすい形で見えた試合だった。良いところは、オーバーラップの繰り返しとテンポよいパス回しで相手DFを置き去りにする攻撃と、労を惜しまず寄せ続ける守備。特に前半先制してから2点目を奪うまでの時間帯は、まるで大人と子供の試合のようにサウジを翻弄し続けた。観ていて非常に楽しいサッカー。これに我那覇の決定力が加わったのだからそりゃキモチイイ。

悪いところは、慌てて、あるいは無理矢理前にボールを運ぼうとしてミスし、自らリズムを崩すシーンが多かったこと。PKを与えた場面は典型で、鈴木啓太のパスミス→啓太慌ててスライディングも交わされる→リトリートするDFライン、加速する相手アタッカー→体勢が苦しくなった今野のファウル、と。ここら辺は攻撃の特長と表裏だろうから、とにかく精度を上げるしかないか。あとはゲームコントロール、か?

まあ、実のところ、後半15分くらいからは北海道の地震と津波関連の特別番組に切り替わってしまい、試合映像は観ることができなかったのだが。闘莉王PK外したんだって?もったいないなあ、最後は随分攻めていたみたいだから、突き放せればまたサウジ相手の「お得意様イメージ」を強化できたんじゃなかろうか。オシム爺さんのジョークのネタを提供したのは美味しいとも言えるが(笑)。

ともあれ、ホームでの消化試合とはいえ、サウジ相手に危なげない勝利、というのは評価すべき結果である。後半15分までの内容も、全体的に見れば決して悪い印象のものではなく、「縦のポジションチェンジと第3の動きを軸にした速攻」という特長がよりはっきりしてきたのは(代表の「プレゼン」という意味でも)とてもいいことだと思う。個々の選手も、チームとしても、確実に進歩しているようである。


個人的な話をすれば、先日、オシム監督の評価を巡って言い合いまがいの議論に発展する、という出来事があったところなので、オシム支持の僕としては今回の勝利は嬉しさもまたひとしおである。

その時は、居酒屋(「すっとこどっこい」ね)で飲んでいて、テレビ業界に身を置く友人がポツリと「オシムさんは長くもたないだろうね。何をやりたいのか、わからないよ。それを相手に伝えようとしているとも思えない。走れ走れだけじゃ……」と口にしたのが発端だった。で、それに対し、いい年こいて怒髪天を衝き、口を尖らせてまくしたててしまった僕。子供みたいだな(笑)。

「全然わかりにくくねえよ」「日本人の走力と俊敏性を生かすサッカーじゃん」「ジーコと比べれば一目瞭然じゃん」「仮にわかりにくいとしても、トルシエだって、任期の前半からやろうとしてるサッカーがそんなに明快だったか?」「だいたい、まだ1年たってねえよ」「ちゃんと必要な結果は出してるのに何でもつとかもたないとかそんな話になるのよ」「前任者はアホ采配でシンガポールに負けかけても首にならなかったのに、理不尽だろ」……。

相手も深く考えて言ってるわけじゃないんだから、「んなことないっしょ」くらいでサラッと流しておけば良かったのにね(笑)。 ただ、同席していた人たちが、ほとんど僕に同意せず、「あちら寄り」だったのはショックだった。酔いで論理が無茶苦茶になってたからかもしれんが。スポーツ新聞や夕刊紙のネガティブ・キャンペーンが頭に浮かび、「爺さんを守らなくちゃ」などと柄にもない使命感を抱いてしまったよ。

しかし、どうしてあれだけ頭に血が上ったのか……多分、マスコミの世界に身を置く人が、あまりにあっさりと「わからない」という物言いでネガティブな評価を下したからだろう。「そこを考えるのがキミ達の仕事ではないのかね。もしくは、わからないのならわかる人に聞けばいいのではないのかね」という。「わっかんなーい」連発のアーパー大学生じゃないんだからさ。 いくらサッカーの専門家ではないとしても。

まあ、オシム監督が「素直でない」偏屈爺さんというのも確かなのだろうが……なんだかなあ、と思ってしまったのだ。今回勝ってだいぶスッキリしたけど。

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コメント

はじめまして、
いつもblogを読ませていただいています。
ショックですねー。オシムさん、理解されてないんですねー。
マスコミに対しても辛辣だから、ちょっと結果が悪いと、すごい叩かれそうだなー。
と試合後の会見記事を見て心配していたところでした。

そうです、楽しかったんです。久々に。
この前は『つまんない』とか書いてすみません、日本代表。

おっしゃるとおりで、ボール持ったら、そいつ信じて、みんなでがんがん、という姿勢が見えました。中田が君臨したペルージャの調子のいい時が昨日の代表には随所にあった。特に右サイドいいっすよね。あとは、まー、点入ればそりゃ、たのしいですわな。あと、巻に頑張ってほしいなぁ。ヘッド惜しかったけど。巻のイメージって、
1.トップスピードでゴール前詰めて行って、
2.紙一重間に合わなくて、
3.つんのめって、
4.ゴールキックになって戻る時『あ"ーっ』って言いながら泣きそうな顔してる。
って、感じしませんか?
点とって笑ってて欲しいもんです。

トゥーリオはPKもらった瞬間、ベンチにダッシュして、TBSの解説曰く、『オレに蹴らせろ』って迫った様子があったらしいですよ。それで外しちゃぁねぇ。当分蹴らせてもらえないでしょうね。ははは。

まま、おちついて。ジーコの件は・・・。トゥルシエとの比較とか。オシムとの比較とか。マスコミの考察の浅さ、監督のキャッチコピーをつければイイや的な単純さ・・・辟易しております。とかいいながらその場に居たら私もたぶん参戦してますね、その論争。
そういえば、川淵さん、まだ居ますよね・・・。元気ですか?なんつって。

わかりにくいから対戦相手も混乱するということで、いいんじゃないですかね。選手は、わかってきてると思いました。僕もちょっとわかってきました。

いやぁ、先日は荒れちゃいましたね。まあ、テレビ業界に身を置く友人さんは、某スポーツ誌を小脇に抱え登場するのが常ですし。あと議論できるような意見が「あちら寄り」だったのではなく、「あちら寄り」の情報は知っているけど・・・ていう空気だったような。

しかしオシム爺のサッカーってよっぽど記事にし難いんですかね、もしくはしたくないのか。今回の結果でも我那覇を賞賛する一方で巻に?マーク、巻を使い続けるオシムに?マーク???こんなことを焦点にしたがるのが業界なんでしょう。「今回の完勝で観たオシムサッカーを徹底解析!」みたいな記事は書けないのかなぁ。

ともかく今回のオシムサッカーの「プレゼン」は素晴らしかった。専門誌でも買ってお勉強したくなりましたわ。素早いポジショニングの入れ替わり、素人では難解でした。でも難しいのがおもしろい。こんなノリでよりオシムサッカーに興味を持った人も多いはず。巷のサッカー談義も退屈でないものに進化していくんでしょうね。

>ユウさん
はじめまして。
オシム爺も、「何もそこまで攻撃的でなくても」(あ、記者会見のことです)と思わないでもないんですけど、本人としては今までのヘンな空気を壊したいんだろうなあ、一石を投じたいんだろうなあ、と思ってます。素で偏屈のような気もしますが(笑)。

でも、確かに、成績が一時的にでも落ち込んだ時が心配。大喜びで次を探しそうな人がサッカー協会のトップにもいるし。

>73000円男さん
楽しかっただしょう。あのガンガン追い越して攻撃が加速していく感じは、今までの日本代表にはちょっとないタイプのサッカーだよね。どこかで強いところと当たった時に裏をとられてカウンターで失点を重ねることもありそうだが……。

>キャッチコピーをつければイイや的な単純さ
オシム爺の話に限らず、日本のスポーツマスコミの貧困さが最も出る部分ですな。

>飛田Q GO!!GO!!さん
こんにちは。

>選手は、わかってきてると思いました。
そうですね。さすがにポテンシャルの高い代表選手たちだけあって、飲み込みも早いのかなあ、と思いました。今回の勝利で確信もって進んで行ってほしいものです。

>e-guさん
先日はどうも。まあ、夕刊紙は軒並みアンチオシムだしねえ。

多分、ジーコのサッカー、つまり「看板」を背負った選手をできるだけ多く起用することで全体に厚みを持たせようとする方法論は、サッカーそのものにあまり興味のない人にもわかりやすかったと思うのね。それはそれで、一つの長所だったとは思うんだけど。

だけど、オシム爺のサッカーは、なんつーか、「時間制」「11人の団体競技」の特徴をより追求する方向性だから、それこそサッカーのゲーム自体に興味がないと、理解のハードルが高いのではないかと。

だから、野球報道(それは、あらゆる報道に通じる部分があると思うが)に慣れ切っちゃったマスコミは、「3番松井は打ったが、4番清原は三振」と同じ感覚で「我那覇は入れたが、巻は外した」と書くわけでしょう。必ずしもそれが間違いとは言えないけど、そういう視点ばかりで批評し続けてしまうところが問題かと。

今のスポーツ報道って、例えば野球についても、長嶋巨人の強さ弱さを書きたてることはできても、ロッテや日ハムの強さを分析する作業は苦手だったりするしね。広い意味で、スターシステムに毒されちゃってるんだな。

>オシムサッカーの「プレゼン」は素晴らしかった
全くです。「誰それが活躍した」だけでなく(もちろんそれはそれで大切よ)、「チームの機能性でやっつけた」という部分についても皆の理解が深まってほしいっす。特に日本は個々のフィジカルじゃ厳しい部分もあるんだから、そういう方向に関心が向いてほしいと、いつも思います。

まあ、僕自身も、オシムさんの意図についてまだまだ図りかねる部分もあったりするので、今後も「考えながら」一緒に「走って」いきたいものだと思っています。

 何だか、「山口百恵を守る会」みたいに、「イビツァ・オシムを守る会」を作りたい心境になってしまいました。

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