●若者たちはたくましい！ （'06アジアユース準々決勝）
夜、ＢＳ朝日でアジアユース選手権準々決勝。日本 ２－１ サウジアラビア。高温多湿に豪雨のコンディションと体調不良、アジアでは強敵の部類に入る対戦相手、そして厳しい試合展開に加えて停電まで。色々な悪条件に見舞われた試合だったが、たくましい若者たちはギリギリのところで持ちこたえてくれた。
前半、さすがに４試合目で現地のピッチにも慣れたのだろう、濡れた芝の上でも日本は落ち着いてパスを回し、相手の陣形が乱れたところでサイドのスペースを使ってチャンスを作る。日本の技術の高さに比べると、サウジの攻め手の少なさやボール扱いの拙さが目立つ。早くも６分、ＦＫのクロスをニアに飛び込んだＦＷ河原が頭で押し込み、先制。その後もこちらの優勢が続く。よしよし、という感じ。
ところが、後半に入ると早くも日本選手の足が止まり始める。悪天候に加えて体調不良の影響もあるのか、押し上げが効かなくなり、単調なクリアを拾われて苦しい展開。ＧＫ林を中心に、ペナルティボックス内でしのぐ場面が続く。林の落ち着いたセービングと、相手の好シュートが２度バーに防がれる幸運もあり、なんとかリードをキープ。ここが我慢の時間帯ということはよくわかっていたようだ。
案の定というか、後半半ばあたりから再び日本の時間。ここで追加点を奪えれば「強い！」と唸るところだが……そううまくは行かなかった。６９分あたりの波状攻撃、その後ＦＫから交代出場のＦＷ青木がバックヘッドで放ったシュート、さらに浮き球でやはり青木がＤＦライン裏に抜け出した場面。試合の流れをあと少しのところでつかみきれなかったこの時間帯は、反省すべき材料だろうか。
逆に８０分、サウジのＦＫのボールがボックス内を横切ったところで、ＦＷ森島がアタッカーを引き倒してペナルティを与えてしまう。「これがＰＫ？！」という感じのプレーだったが、しかし森島も全く足が動いておらず、手をかける形になったので印象が悪かった。ＰＫは林がよく反応して手に当てるが、ボールは無情にも転がってゴールイン。非常にまずい展開である。
ここからの１０数分は、停電で照明が２つ消えたとかで、場内薄暗い中異様な光景のゲームとなった。タッチライン際狭いところの攻防とハイボールへの競り合いばかりになったのは、まさに両チームが消耗している証拠。どちらもろくに足が動かない。もう戦術というより気力の勝負だ、と言いたいところだが……この日本代表は想像以上にレベルが高いのかもしれない。
終盤、体力の限界のはずの日本が驚異的な押し上げから波状攻撃。単純なパワープレイには走らず、こぼれ球を拾っては右に左に回してからクロスやドリブルで仕掛ける。で、８９分、左に流れながらこぼれ球を拾った青木が左足一閃、ボールはＤＦの間を抜けてゴールに突き刺さった。強烈なシュートにＧＫは一歩も動けず。青木にしてみれば「３度目の正直」だろうが、ＤＦ２人が追いすがる状況で、しかし一瞬のチャンスを逃さずよく撃ったものだ。
そして、ロスタイムは危なげなく時間を使い切り、そのまま日本が勝利。見事Ｕ２０Ｗ杯の出場権を獲得した。おめでとう！！
今回のユース代表は、前回の森本や平山、家長、梶山のような「派手」あるいは「異能」のタレントは少ないようだが、しかし多くのメンバーがＪリーグで既に多くの出場機会を持っており、ＭＦ梅崎（大分）に至ってはＡ代表での出場も果たしている。ビジュアル的には確かにまだまだ線が細く頼りなげに見えるものの、しかしこの試合の勝ち方からしても、見た目以上にタフで聡明な連中であるようだ。頼もしい。
マスコミや「代表ファン」の目にはどう映るかわからないけれども、こういう一見地味だが「Ｊの延長線上」にある代表チームは、僕のようなＪリーグファンにとってはかなり気合を入れて応援する対象となるのである。単なる偶然かもしれないけれども、Ａ代表や五輪代表に引き続いて「地味」だが将来性のあるチームが出てきたことは、僕個人としてはまことに喜ばしく思う。
準決勝も頑張れよ！Ｕ１９日本代表！！
