●急転直下の悪夢 (サンフレッチェ広島×FC東京 テレビ観戦)
午後、BS-iでJ1第27節をテレビ観戦。サンフレッチェ広島 5-2 FC東京。好調極まる立ち上がりに、幸先の良い2得点。東京ファンとしては「これはもらっただろう」と思いたくなる展開だったが、後半に暗転が待ち受けていた。10分の間に3失点を喫する守備の崩壊ぶりで、一気に勝点3を失ってしまった。名古屋戦の「ごっつぁん勝利」をうまく利用できないあたりに、今の東京の悩みの深さを感じた試合。
前半立ち上がりの東京は最高だった。前からの果敢な守備と攻守の切り替えのはやさ、そしてつながるパスに湧き出るフォロー。やはり「勝利に勝る良薬はなし」ということなのか、連敗を脱出した前節に比べてもずっといい出来に見えた。選手間の連動性に欠ける広島を完全に圧倒し、特に左サイドは今野と藤山の2人で駒野をチンチンにやっつける。えぐってクロスを入れる藤山の姿には目を見張らされた。
早くも9分、GK下田のミスを突く形でジャーンがヘディングシュートを決めて先制。続く13分にはクロスのはね返りを拾った梶山が右足を一閃、ボールは弧を描きつつゴール左上隅に突き刺さった。ゴ~ラッソ!!その後も東京の勢いは止まらず、中盤でボールを奪っては左右から攻めたてる。セカンドボールも拾いまくり、「もしかしたらこれは祭りになるのではないか」とさえ思える光景。
ところが21分、広島が追撃の1点。柏木のクロスをファーに流れていたFW佐藤寿がボレーで叩き、土肥を抜いてゲット。広島左サイドのパス交換に対して東京のDFラインが絞りながら押し上げるところ、俊敏な動き直しで見事に逆を突いた。まさしくストライカーのゴール。これでちょっとわからないかも、という雰囲気になり、広島も徐々にチャンスを作り始める。
ただ、広島は全体的に布陣が間延びした感じで、フォローが遅れる間に東京の出足のよい守備にかかってボールを失うことが度々。東京が選手間の距離を詰めることに気を配っていたのとは対照的に見えた。また、攻撃の大黒柱・佐藤寿が負傷退場のアクシデントもあり、結局広島は東京のペースダウンに乗じることもできないままハーフタイムへ。この時点では、後半の惨劇など全く予想できなかった……。
後半、ふんどしを締め直した(←古典的表現)東京が再び攻勢に。平山→ルーカスは前からの守備を強化してペースを取り戻したい意図があったのだと思う。実際、チャンスは訪れた。今野がえぐってクロスを上げ、梶山が狙いすましたヘッダーをゴール右隅に飛ばした場面は実に惜しかった。あのシュートを止めた下田(この試合でJ250試合出場)のセーブは、試合の趨勢を左右するものだったと思う。
その後はやや膠着状態に。広島は東京陣まで攻め込むものの、単調なクロスをジャーンや茂庭にはね返され続け、さらには駒野までが負傷退場というピンチ(ただし、この交代は結果的に広島に幸いすることになったか)。東京の方も、広島の両サイドの健闘に押されて両サイドからの攻撃が止まり、なかなかチャンスを作れない。ウェズレイが2度ほどDFライン裏に飛び出しながら、シュートは枠外。
ところが、18分、事態は急激に暗転する。駒野に代わって右サイドに入った李漢宰へ長いフィードが通り、鋭く縦に走ってクロス。逆サイド服部が折り返したボールをゴール正面でウェズレイが胸トラップからオーバーヘッドシュート、これが土肥ちゃんの横っ跳びも届かず右隅に決まってしまう。実はこの直前にも展開パスから李に走られた場面があり、マークをはっきりさせないまま同じ形をやられたのが悔しい。
ここからは急に元気の出た(?)広島がセカンドボールを拾いまくって(逆に東京の出足は鈍って)一方的攻勢に。20分、また右サイド攻撃から、左サイドでパスを受けたウェズレイがグラウンダーのクロスをゴール前へ。これをファーの李がニアに蹴り込んで広島勝ち越し。うーむ……。さらに26分、森崎浩のミドルシュートが決まって4-2。なんか、ここら辺、安直な表現だが、「得点に勝る良薬はなし」か。
東京は意地の反撃に出る。中盤に宮沢を、右サイドに川口を投入し、両サイドも高く位置する捨て身の布陣。しかし、今野のボックス内連続シュートはいずれも下田に止められ、アーリークロスを梶山がつないで戸田が押し込んだ場面もオフサイド。逆に広島はウェズレイの1人カウンターで逃げ切りを図るが、そのウェズレイがロスタイムに豪快なヘディングシュートを決めて1点追加。結局、3点差で試合終了となった。
正直、前半の広島を見て「こんなチームには負けない」と思ったのだが……まさか5点とられるとは。あえて言うなら、佐藤寿の巧みな得点やミスを自ら取り返した下田の好セーブなど、主力が主力らしい働きをした、とは言えるだろうが。負傷退場のアクシデントを代わりの選手たち(特に李!)が立派に穴埋めしたもの勝因。一旦勢いが出ると、あの間延びした布陣もダイナミズムがあるように見えるのが不思議。
東京は……いったい何がどうしてしまったのだろう(現地で観た人、どうでした)?前半立ち上がりと後半10分以降では、「ジギルとハイド」のように別ものになってしまった。チーム全体のパフォーマンスが下降していく中、藤山やジャーンといった、前半活躍が目立っていた選手が逆に「穴」となってしまったような(今野を除く)。東京のかかっている病は、根が深いのだと思い知らされてしまった一戦である。
敗戦の引き金となったのは、平山→ルーカスの交代だろうか。勝っている方が先に動いて「えっ」という感じだったから。上にも書いたとおり、倉又監督としては前からFW+ウイングでチェイスして押し込んじゃえ、という意図だったのだろうけど、後ろがついて来れなかったし、李投入以後サイドを突かれて結局前が孤立しちゃったのを見たら、結果的には失敗だったかも。ルー出すならやっぱ2トップでは?
ただ、じゃあ平山さえ代えなかったら勝てていたかというと……怪しいものだ。名古屋戦ではみんなで一生懸命守備ブロックを堅持してスペースを消すサッカーをやったのだが、それではどうも攻撃力が期待薄な印象だった。で、今日の前半みたいな前からのプレスサッカーで行こう、ということになったんだろうけど、今度は時間の経過につれて後ろの方がついて来られなくなって、守備がスカスカになってもうた。
結局、コンセプトが毎試合変わる上に、それを90分無理矢理続けようとするからいけないのではなかろうか。今日で言えば、ハーフタイムの時点でリードしていたのだから、もう少し落ち着いてポゼッションを保つ方策をとってもよかったのかな、と。ルー投入で前半と同じ(かそれ以上の)プレスサッカーをやろうとしたのは、他の選手の疲労度を考えても無理があったのでは。どうもコンセプト優先の弊害が出ているような。
次はホームでガンバ大阪戦。幸い、ガンバは怪我や病気で離脱している選手も多く、明らかに調子は下がっている状態だ。決して勝てない相手ではない。つーか、そろそろ味スタで勝たないとホントやばいって……ちなみに、味スタでの残り試合はG大阪、川崎F、横浜、浦和である。ひえ~~っ!!
コメント
天皇杯も入れればバンディオンセ神戸もあるのだが
それを含めてもホーム全敗なんて笑えないネタを完全否定できない現実。
まぁ、名古屋と広島のどちらかから勝ち点3がゲットできればと思ってはいたものの、広島の負け方のダメージはあまりにも大きいかなぁ…orz
Posted by: よっし~ | 2006年10月15日 23:13
みんなが「残留確定」ってのが
どうも自分にはピンとこないです。
murataさんが書いたとおり名古屋は
ウチにやりやすいサッカーをしてくれました。
サイドから分厚い攻めをしてきて
個人で決定力のあるチームに対し
うちはきちんと対策を立てて戦えるのか?
今は相手のことを考えて戦い方を
代えたりとか出来る状況とは
思えないんすよね…。
Posted by: たか | 2006年10月15日 23:38
>ホーム全敗なんて笑えないネタ
なまじっか、2003年の「あわやホーム無敗」時代を知っている人間にはなおさらこたえます。あの頃と比べても、メンツ的には落ちてないはずなのにね。
>広島の負け方のダメージはあまりにも大きいかなぁ…orz
名古屋であまりにもあっさりとプレゼントしてもらえたから……ねえ。
>みんなが「残留確定」ってのがどうも自分にはピンとこないです。
確かに、まだ「確定」ではないですよね。確率はものすごく低いのでつい「降格はない」みたいな言い方をしがちなのですが。最低あと勝点3はとらないと。
>サイドから分厚い攻めをしてきて
たかさんもご自分のblogで書かれているように、サイドからの攻め(今日で言えば李や左に流れるウェズレイ)に対する守備がおかしいかもしれません。李の突破に対してチェックに行くのが戸田で、藤山は中で余ってる、というのは私も気づきました。あれ、やっぱり中の人数を余らせたいんですかねえ。
Posted by: murata | 2006年10月16日 00:53
こんばんは。いつも参考にさせてもらっています。
現地にいましたが、SB(後でしっかり守りたい)とSH(前から潰して行きたい)で考え方がバラけていたように感じました。結果サイドが穴に…。試合後の石川のコメントがそこら辺を現していると思います。
しかしヤバイですね。う~ん。
Posted by: 御殿場 | 2006年10月16日 23:47
こんばんは。>御殿場さん
現地観戦、お疲れ様でした。
おっしゃるとおり、本来東京はサイドで数的優位を作れる布陣のはずなのに(そのための4-5-1でしょ)、サイドを突破されまくりで穴になってましたね。
名古屋戦みたいなどん引きスペース消し消しサッカーにも未来はなさそうだし、かといって前からプレスの1本やりだと、よほどアドレナリンが出てない限り広島戦みたいになるし。
私は、来季へつなげるためにも、とにかく中盤を作ることを優先させてほしいと思ってます。わざわざ「ポゼッション」とか言わなくてもいいから。
Posted by: murata | 2006年10月17日 00:28
はじめまして。結構前から読ませていただいてました。
22日は秩父宮で1試合目だけ見て味スタにかけつけるつもりでしたが、日に日にその気持ちが萎えてきてしまっています。
でも22日は東すかの配布日なんですよね・・・
東すかは欲しいが惨めな試合は見たくない・・・
どうしたもんでしょう???(苦笑)
Posted by: オ~スティン | 2006年10月18日 22:15
22日の秩父宮は1試合目がNEC×クボタ、2試合目がトヨタ×セコム……。なるほど、1試合目だけで席を立つのはもったいないような気もするし、トヨタを関東で観る機会も少ないし、と(笑)。
でも、東京×ガンバの試合も、やってみなきゃわかりません。つーか、ここで一発やれおまいら!!みたいな。
というわけで、ぜひ味スタへ(笑)。
Posted by: murata | 2006年10月19日 02:15