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2006年09月20日

●'06ブエルタ・ア・エスパーニャ

遅まきながら、先日3週間に渡って行われていたブエルタ・ア・エスパーニャの感想なぞ。ドーピング・スキャンダルの激震に揉まれた今年のグラン・ツール。締めくくりのブエルタは、まさにそのスキャンダルの渦中にあったアスタナのヴィノクロフが逆転優勝を遂げるという劇的な展開に。まったく、これだからまた、見逃せなくなっちゃうじゃないかよー(笑)。


正直なところ、途中までは熱心に観る気にならない大会だった。ただでさえ3大ツールの中では最もショボい印象がある上に、ツール・ド・フランス後のウンザリする騒動、そして優勝候補の少なさ。そりゃステージ優勝は毎日違う顔ぶれで、そういう意味では面白かったのかもしれないが、総合争いはバルベルデのリードで「無風」の雰囲気だったし。

そんな僕の目を覚ましてくれたのは、何といっても終盤のヴィノクロフの爆発だった。第17S、先に仕掛けて下りに入ったヴィノら3人に対し、バルベルデが驚くべきスピードで単騎追い上げ、追いついたかに見えた瞬間、突如見せた2枚腰。とっさの決断力と、実際に単騎で5km以上を独走したその脚力は「さすが」としか言いようがなかった。

もっとシビれたのは第18S。この時点で既に総合トップに立っていたヴィノクロフは、バルベルデに差をつけられなければそれでよしのステージのはず。ところが残り5km、ヴィノクロフは自らアタックを敢行し、カメラバイクを蹴散らさんばかりの勢いで抜け出してしまうのだ。最後は同僚カシェキンに優勝を譲る余裕も見せての完勝。「王者決定」の瞬間だった。


ヴィノクロフは、昨年のツールの最終Sで超人的な勝利を納めたように、元々爆発力には定評のある選手だった。しかし安定感がイマイチと言われていたのだが……32歳になってついに一皮むけたのかな?運もあったし、カシェキンとの友情やバルベルデを讃える態度もお見事だった。何より、持ち味の果敢さを前面に立てて勝ったのが素晴らしい。

惜しくも敗れたバルベルデも、「次代のエース」に相応しい力は見せたように思う。ケース・デパーニュのチーム力自体がそんなにズバ抜けていたわけでもないし、リスクを冒さない戦法も早くからリーダージャージを獲得していた選手にとっては王道とも言えるもの。だいたい、あのカザフスタン・コンビの強力なアタックに耐えられなかったからって責めるのは気の毒だ。


今にして思えば、ジロのバッソの強さを見た時は興奮すると同時に「強すぎる者の存在が退屈をもたらすのか?」と心配になったものだ。そしてバッソのいないツールは、劇的すぎるほどの展開にはなったたものの、ランディスの検査陽性で全てが吹っ飛んでしまった。そう思えば、最後ブエルタでこんなに熱い「勝負」を観ることができたのは本当に幸運だった。

そして、ヴィノクロフの所属するアスタナが、そもそも去年のブエルタでドーピング・スキャンダルの発端となった(エラス失格&監督逮捕)チームで、今年のツールには出られなかったという経緯が、皮肉というか優勝をより劇的にしたというか……。願わくば、来年のツールではバッソ・ヴィノクロフ・バルベルデによる真の「ポスト・ランス決定戦」が観られんことを。

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コメント

大変遅まきながらコメントを…

バルベルデは、どー見てもマイヨ・オロを着るタイミングが早すぎましたね。
本当に最終的に総合優勝を取りたいのなら、
あんな早く着る事は、絶対に間違っていたと思いますし、
現に落としました。

ヴィノクロフ&アスタナは、モチベーションが違いましたねぇ。
『結果的』にこの大会に照準を合わせ、
ガッチリ勝ちましたからねぇ。
来年も大幅補強するらしいので(クレーデン,ハーゼルバッヒャーとBMCの機材供給)、
来年はもっと見逃せませんな。


で、いつ自転車買うのですか…?

バルベルデがマイヨ・オロを早々に着たのは、確かにおっしゃるとおり早すぎたようですね。もっと言うと、ケースデパーニュが21ステージ全体を戦略的に戦うノウハウを持ち合わせていなかったということなのか……。

ヴィノクロフの勝利には、特別なモチベーションとパワーを感じましたですねえ。来年は、ツールに照準を合わせてくるのかな?

>で、いつ自転車買うのですか…?
自転車ですか?今も持ってますよ。ママチャリですが……(笑)。

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