●熊ボイス最強(笑) (イエメン×日本)
夜、TBSでアジアカップ予選第4戦。イエメン 0-1 日本。「地獄の中東遠征」第2戦、灼熱のサウジに続いて今度は標高2300mの高地。連敗はさすがにマズい日本は、薄い空気と悪ピッチに苦しめられ、パスサッカーでゲームを支配しながら89分間得点が奪えず、嫌な雰囲気に陥ったのだが……終了間際のパワープレイが今度は決まった。土壇場で勝点3をゲットし、アジアカップ本戦出場をほぼ手中に。
彼の地のピッチ状態の悪さは驚異的であった。嵐や雪に見舞われたわけでもないのに、あれだけ凸凹になったグラウンドは久しぶりに見たような。ボールは例外なくイレギュラーバウンドし、強いキックもすぐに勢いがせかれる状態。おまけにピッチの幅がやたら狭いし(センターサークルが大きいのかと思った(笑))。当然のごとく序盤の日本はパス回しに苦労して、なかなか攻撃を組み立てられない。
それでも、イエメンの消極性にも助けられ、時間の経過とともにピッチにも慣れた日本は徐々に押し込んでいく。闘莉王や坪井がボールを奪っては啓太経由でアタッカーへ楔、そして展開。最大の好機は32分。右サイド抜けた田中達が速いクロス、ファーでフリーになった巻がヘディングで狙うもポスト左に外れ。GKとDFは完全に達也に吊り出されており、W杯の柳沢を思い出す鮮やかな逸機であった。
後半、軽率なプレーが目立った達也に代えて佐藤寿が入っても、相変わらず完全な日本ペースで試合が進む。個々人のボールさばきの巧さや当たりの強さは比べものにならず、一対一は完全に日本の方が上。ただし、加地が全く周りと合っておらず、彼と三都主がしばしば無謀な突破からボールを奪われるのはちょっと首を傾げる傾向であった。どうしたのだろう?
そして、いくつかのチャンスを経ても日本は決定機を迎えられず、両チームの足が完全に止まり始めた後半27分、またも大チャンス。DF2人をかわした遠藤が前方へパス、巻がスルーしたボールを左サイドの寿人が折り返し、完全にマークの外れた遠藤がボックスへ走り込んで左足でシュート……も完全な宇宙開発。オシムの血圧が心配になった瞬間である(笑)。
終盤、日本はパワープレイに出る。この状況になると、一時鳴りを潜めていた秘密兵器「熊ボイス」が再び威力を発揮。スタジアムに響き渡る野太い声。闘莉王まで上げた状態なのに、寿人や三都主が細かくつなごうとするのを見てさらにヒートアップする熊ボイス(笑)。いや、思わずテレビの前で俺も同調しちゃいましたよ。「サイドサイド!早く!あげろぉおおーー!!」。
で、後半44分。持ち上がった坪井が不器用ながら思い切ったアーリークロス(うむ)、巻がDFに競り勝ってゴール前に落とし、走り込んだ我那覇がGKの脇を抜いてゲット。よし!!さすがのオシムも「やれやれ」といったジェスチャーを見せたようだ。中東勢相手なら、後は落ち着いてやれば大丈夫。三都主を中心にきっちりとボールを回し続け、そのまま1-0で逃げ切りに成功。いや、本当にやれやれ、であった。
勝ったから言えることだが、最後のパワープレイの場面は実に愉しかった。だって、大熊さんの大声がスタジアムの歓声を完全に凌駕してるんだもの(笑)。途中、タイスコアが続く展開に中東独特の声援(?)のボリュームも上がり、実況アナが「これはベンチの声も届きませんね」なんて言ってたけど、なんのなんの。熊ボイスは1万人の歓声に匹敵する。
いや、冗談抜きで、最後パワープレイの状況では大熊さんの声(オシム監督にどこまで具体的に指示されていたのだろう?)が確実にチームを動かしていたから。そして、闘莉王を上げてからは「早めにサイドから逆サイドを狙え」って叫んでいて、決勝点はまさにその形から決まったから。思わず胸を張りたくなったよ。「どうだ、今度の代表はコーチも戦える男だぜ!」ってね。
ともかく、これで「オシム学校の修学旅行」第1回は、なんとか良い形で終了。新生日本の可能性と課題の両方が見えた遠征だったと思うけど、しかし、少なくとも今度の代表は実に応援しがいのあるチームであることはよくわかった。世界の名将オシムさんが指揮をとり、次世代の名将候補反町さん・大熊さんらがコーチ。そして選手たちは普段見慣れたJリーグの精鋭である。そりゃあ、楽しいに決まってるわなぁ。
コメント
大熊コーチの髪の生え際と「佐藤寿人っぅ!」ってフルネームで叫んだところがちょっと笑えました・・・。
Posted by: asou | 2006年09月07日 01:59
>髪の生え際
それは言わない約束よ(笑)。
でも、ちょっと進行してますね……。
半年の契約が終了するまでに「サンキュー!坂田!!」に匹敵する名言は出るか。
Posted by: murata | 2006年09月07日 02:15
全然関係ナイ話ですが…
イエメンのサナア、いいトコらしいですよ!
今じゃあバックパッカーの聖地とか。あぁ行きたい…
Posted by: けんぴ | 2006年09月07日 10:34
くそ、どっちの試合も現地で見る気満々だったのに…orz
ときに、実は私9月末にリヤドに発つ予定なんですが、
うまくすると、10月にAFCチャンピオンズリーグの準決勝をリヤドで、
しかもケリーのいるアルアインの試合を観ることができるかもしれません。
そこで、その時期ちょうどラマダーン休暇なので万難を排してケリーに会いに行こうかと考えています。
ケリーに何か伝言がある方は今のうちに当方までご連絡を。(笑)
Posted by: サイトヲ@天荒雄酒造 | 2006年09月07日 12:10
えー(^^ゞ
発汗と申します。ども、先日はTBありがとうございました。
大熊監督(コーチでしたね、今は)の生え際、ちょっと衝撃的でした…
彼は俺より年下のはずなのに…
イエメンといえば、アデン・アラビア、ポール・ニザンの世界ですから、そりゃバックパッカーも多いことでしょう♪
Posted by: 発汗 | 2006年09月07日 16:21
御無沙汰しております。
噂に聞いていた熊ボイス、面白いですね(笑)。
うんざりな”何とかチャレンジ”よりも、タフな課外授業をJに差し支えない程度にマメにやって欲しいものです。
Posted by: クロゴマ | 2006年09月07日 21:53
>イエメンのサナア、いいトコらしいですよ!
私、全然知らなかったのですけど、サナアは「世界最古の摩天楼都市」として世界遺産にも選ばれているみたいですね。↓
http://homepage3.nifty.com/sekai-hekichi/album-oldsanaa.htm
ちょっと検索してみると、「憧れのイエメン」みたいな形容をしているblogもけっこうありました。
いや、何も知らないで昨日の試合(というかボコボコのピッチ)だけ観たら、「なんじゃこの国は」という印象しか残らなかったでしょうが(笑)。
>ケリーのいるアルアインの試合を観ることができるかもしれません。
うーむ……。元気で活躍してるみたいですからねえ。ぜひともリポートをお願いします。彼にとってはいい移籍が続いているのでしょうから、「帰ってきて」などとは口が裂けても言えない(泣)。
>発汗さん
どうも。いつもblogを楽しみに拝見しております。
>大熊監督(コーチでしたね、今は)の生え際、ちょっと衝撃的でした…
ええ、まったく。
なんか、髪型自体が「隠す」方向に先鋭化(笑)しているようで、ちょっと思わず引いてしまうというか。白髪も増えてますね。反町さんが五輪代表の方の監督になったりして、色々と考えるところもあるんだろうなあ……。
でも、個人的には、半年と言わず、次のW杯までは代表コーチとして経験を積んでほしいな、と思いますけど。
>噂に聞いていた熊ボイス、面白いですね(笑)。
でしょ(笑)。
>”何とかチャレンジ”よりも、タフな課外授業をJに差し支えない程度にマメにやって欲しい
これまたまったく同感です。
国内ファン向けのプレゼンテーションも強化のための重要なフェイズだとは思うのですが、しかしトリニダード・トバコ戦のように「まず商業主義ありき」は勘弁してほしいものです。
何より、やっぱり昨日の試合みたいな状況の方が、「とにかく勝て!がんばれ!」と純粋に(と私が言っても説得力ないかもしれんですが)応援できますしね。
Posted by: murata | 2006年09月07日 23:51
こんばんは。お久しぶりです。
試合の内容云々より、「熊さんは標高2300メートルでも90分間叫び続けられる」という事実に感動しました。(本当にあれが全部オシムの指示だったのか、気になりますね。)
イエメンは良い所らしいですよ。他のアラブ諸国みたいに金満成金じゃなく、昔のアラブが残っているそうです。行ってみたい国リスト上位の国です。
Posted by: bumbum | 2006年09月08日 20:26
>「熊さんは標高2300メートルでも90分間叫び続けられる」という事実に感動
確かに。
実況アナウンサーが「私たちもこうして喋ってるだけですぐに喉が渇きます」とか言ってましたからね。
それであのスタミナ……。これもまた「部活サッカー」って感じでしょうか(笑)。
>本当にあれが全部オシムの指示だったのか、気になりますね。
いや、多分ほとんど大熊さんの判断じゃないかと思いますね。
もちろんオシムもパワープレイの場面で三都主や寿人がつなごうとしてるのを見てキレてたみたいですから、「オイ、オオクマ、ナントカセイ」くらいのことは言ったかもしれないですけど、大熊さんだって言われずともあの判断の悪さを見れば、テレビの前の我々と同様に「サイド!早く早く!」と思ったでしょうからね。
要するに、あれは熊さんの「心の叫び」そのものだ、と(笑)。
Posted by: murata | 2006年09月08日 23:14