« 温情東京(泣)? | メイン | '06-'07トップリーグ開幕戦 »

2006年08月31日

●FC東京×セレッソ大阪


昨日の夜、国立競技場でJ1第21節。FC東京 2-3 セレッソ大阪。シーズン途中での監督交代後、厳しい日程の中で2勝1敗と上々の成績を挙げている東京。ここはホームで最下位セレッソ相手にきっちり勝って、気持ちよく代表戦のための中断に突入したいところだったが……まさかまさかの(と言っては相手に失礼だが)敗戦。つい1ヶ月前に大勝している相手ということもあり、いささかガッカリな結果だった。


立ち上がり2分、左スローインからのパス交換でフリーになった名波が美しい弾道のクロスを上げ、河村がヘディングシュート。マーカーの増嶋は全く寄せられず、「なして?」と首を捻るくらいあっけなく決まってしまった。いきなりの失点。その後も東京はなかなかエンジンがかからず、セレッソがペースを握る。7分、右サイドを突破した宮本のクロスにボックス内の古橋がボレーで合わせるが、立ち足が滑って枠外。11分、ピッチ中央からのFK、名波のキックがDF裏にこぼれ、拾った森島が折り返すもアタッカーに合わず。

セレッソといえば、西澤に当てて森島・古橋が拾う攻撃のイメージが強いが、いつの間にか名波を中心に丁寧にパスをつなぐスタイルに変貌していた。名波は正確なパス出しと細やかなポジショニングに加え、次々と指示出しもしてまさに「将軍」状態。15分、石川からさらに右へ展開、伊野波のアーリークロスをボックス内の赤嶺が頭で狙うも、枠外。16分には当たりの悪かった増嶋のクリアを古橋に拾われ、ミドルシュートがポストわずか左を抜ける。東京は相手のパス回しに翻弄され、中盤で完全に受けに立ってしまっていた。

ところが17分。スローインを受けたルーカスがオーバーヘッド気味のキックで浮き球をボックスに入れ、赤嶺が走り込む。意表を突かれたのか、追いすがる前田は赤嶺を押し倒してしまいPKの判定。セレッソ優位の中での突発的なプレーであり、微妙な判定でもあった。ルーカスがきっちり決めて同点。ラッキー!である。20分、CKのセカンドボールから名波がクロス、ゴール前で西澤が胸トラップからボレーで狙うもバーの上。23分には梶山が相手のスライディングをかわして持ち上がりミドルシュート、枠外だがこれはなかなか良いテンポだった。

ここら辺から、東京はパス回しのリズムと精度がグンと良くなっていく。やはり梶山の「目が覚める」ことが大きいのだろうか。つなぎながらセレッソを相手陣へ押し込んでいく。25分、浅利→伊野波→赤嶺→石川と、中外の出し入れで相手の守備をかわすパス交換から石川がクロス、ルーカスがボレーで合わせるも、惜しくもミートせず。その直後、DFのパス回しをカットした石川がそのまま持ち上がってスルーパス、赤嶺がきれいにDF裏へ抜けたがオフサイド。よしよし、いい流れになってきたぞ、という感じ。

33分には、ルーカスと梶山を中心に次々ワンタッチパスをつなげる素晴らしい攻撃。アタッカーがポジションを入れ替えながらポンポンポン、とボールが動く様はまるで74年のオランダ代表のようだった、というとちょっと言い過ぎか?フィニッシュはルーカスの鋭いミドルシュートで、GK吉田は弾くのがやっと。実にセクシーな攻撃であった。ただし、それでもセレッソは崩れない。慌てず、落ち着いてまた名波を基点につないでいく。東京の攻撃に粉砕された1ヶ月前とはエライ違いだ。1人の加入でこれほどに変わるものなのか……。

38分、セレッソの波状攻撃、名波のオサレなパス(笑)で右サイドを抜けた宮本が速いクロスを入れてヒヤリ。40分、後方からのボールを受けた赤嶺が振り向きざま強烈なロングシュート、GK正面。そしてロスタイム、相手陣深くでルーカスがボールを奪いショートカウンター、ラストパスを受けた阿部が吉田と一対一になるも、シュートは吉田が足に当ててセーブ。これは決めたかった。続くセレッソのFKは、ゴール右上を襲う古橋のキックを土肥が横っ跳びで弾く。同点のままハーフタイムへ。東京が押してはいたが、薄気味の悪い流れではあった。


後半頭、増嶋OUTで中澤IN、赤嶺OUTで憂太INの2枚替え。増嶋の交代はともかく(前半ミスが目立ったから)、赤嶺を外したのはちと意外だった。ハーフタイムの間に僕が考えていたのは、「どうすれば勝ち越し点を奪えるか」(正直、守備の事は頭になかった)。そしてその結論は、「このままでもイケるだろう」である。ただ、倉又監督のコメントを読むと、中盤を厚くすることで前からプレスをかけ、セレッソのパス回しを寸断する考えだったらしい。なるほど。

交代の意図ははまった。3分、梶山がボックス手前まで持ち上がって右に展開、石川が切り返して左足で上げたクロスを逆サイドの憂太が拾いシュート性のクロス、ポストとルーカスの間を抜けていった。5分にはルーが中へ切れ込んでDFを引きつけ、右の憂太へ。憂太は小刻みなステップからゴール前でフリーになっていた阿部にパスを通すが、2度にわたるシュートはともに吉田がブロック。なかなか得点こそ入らないものの、ルーカスを左右から選手が追い越す攻撃で東京が押し込んでく。

ところが、7分。浅利のクリアが失敗してCK。藤本のヘディングシュートが、土肥の横っ跳びも届かず左隅に決まってしまう。つくづく「流れ」とは無関係に点が入る試合なのであった。1-2。これに対し、東京はもちろん前がかり……になるのだが、先程の勢いはどこへやら、攻撃は停滞。憂太と梶山を中心にそれなりにパスは回る。回るのだが、マークを外す工夫が足りずにサイドへ追い詰められ、仕方なく石川のドリブルに頼っては失敗。阿部はすっかり蚊帳の外。いかにも「悪い時の東京」である。石川の空回り気味の姿が、スタンドのため息を誘う。

そんな東京を尻目に、セレッソがまたリズムを取り戻す。11分、藤本のクロスを古橋が跳び上がって落とし、名波が強烈なボレーシュート、土肥かろうじて押さえる。14分、東京のボックス前でFKとなり、名波のキックは横に跳ぶ土肥の手に当たってポストにはね、詰めた森島が押し込んだ……ところでオフサイドに救われた。16分には名波からの絶妙のスルーパスで森島がDF裏へ抜けるも、一対一のシュートを土肥がビッグセーブ。17分にも藤本のダイビングヘッドがポスト右を抜ける。この間、東京の守備はほとんどフリーズ状態。おいおい。

18分、浅利OUTで栗澤IN。阿部を上げて2トップとし、梶山1ボランチの攻撃態勢である。栗澤は投入直後に左サイドを突破してCKを奪い、ファンの期待をつなぐ。23分には伊野波のカットから石川がアーリークロスを上げ、DFを背負ったルーカスにピタリ合ったが、叩きつけるヘッダーは左に外れ。どうも、ルーカスは一度1トップにすると「師匠」モードに突入するらしい(笑)。その直後、セレッソは足を痛めて走れない西澤を放置し、名波OUTピンゴINという微妙な采配。もはや「一番大事なのは名波先生です!」っつーことなんだろうか。

東京はまたもペースをつかみきれない。選手交代自体はさほどおかしくはないものだと思うのだが、急に色々とイジりすぎたのか、パスをつないでも攻撃全体の方向がなかなか定まらない感じ。29分、ピンゴが右サイドをドリブルで強引に突破、フリーでシュートするもサイドネットで助かる。中澤はどこへいたのやら。その直後、憂太のスルーパスで阿部が左サイド抜けて速いクロスを入れ、ルーカスが弾丸のように飛び込むがシュートは吉田の正面。31分にはルーカスのオーバーヘッドクロスにジャーンが合わせるが、これも枠に飛ばない。

31分、セレッソは森島OUTで柿本IN。単純に年齢順に代えているのかも(笑)。この時間帯になるとセレッソは無理せず自陣を固め、パスは早めにサイドへ散らして逃げにかかる。東京は今度こそ前がかりになってクロスとCKを次々に浴びせるも、セレッソDFはスライディングも交えてよく食らいつき続ける。35分、石川からボックス手前のルーカスへグラウンダー、ルーはダイレクトで右へ返し、DF裏へ抜けた憂太のシュートはGKがブロック、さらにゴール方向へ飛ぶこぼれ球に阿部が飛び込んだが、間一髪クリアされる。

37分、決定的な追加点。自陣深くからの梶山のパスが中澤に当たってこぼれ、ピンゴがカバーに入る梶山を振り切って右サイドを突破し折り返す。これを柿本がさらに左へ流し、西澤が狙いすましたシュートをゴール右隅に突き刺した。1-3……。その後も、吉田の好守にクロスの不正確さも加わってゴールは遠い。ロスタイム、左から切れ込む栗澤が放ったシュートは阿部に当たってしまい、憂太のクロスに合わせたジャーンのヘッダーはまたまた外れ。最後はボックス手前での混戦から憂太が左足のシュートを決めて追い上げるも、時既に遅し。最終スコアは2-3であった。あ~くそ。



前のエントリーを試合直後に書いた時は、セレッソの2点目以降に東京が停滞した印象が強く残っていたのだが、こうして振り返ると、むしろ後半の方が決定機の数は多いくらいで、特に立ち上がりの2度のチャンスのどちらかをモノにできていたらおそらく勝敗は逆になっていただろう。突発的な得点(失点)によって流れがガラリと変わってしまう、当事者にとっては見た目以上に難しい試合だったのかもしれない。それだけに、やはり2失点目が大きかったか。

セレッソ大阪にとっては、宝石のように貴重な1勝に違いない。この日はとにかく名波が素晴らしかった。知力体力技術の全てを駆使して周りの味方を助け、ここぞという場面では自ら危地へ飛び込んで決定機を演出する。その姿がチーム全体に落ち着きと勇気を与え、結果としてあのパス回しと3得点につながったと言っていいのではないだろうか。まさに大黒柱、真の「ピボーテ(軸)」。味方にとっては頼もしいことこの上ないんだろうね、きっと。憂太や梶山は、いつかあの域に達することができるのだろうか。

FC東京も、負けはしたが、ボコボコに悪かったかと言えばそこまででもないように思う。この日披露した「型」を攻撃面で無理矢理分けると、前半はパスをつないでリズムを作る「流動サッカー」寄り、後半は前目のプレスからサイド速攻を狙う「部活サッカー」寄りに見えたのだけれど、個人的にはどちらも捨てがたい、と思う。どっちが良いと決めつけるのではなく、「どっちもできる」のが理想なんだろう、多分。あえて言うなら、今の段階ではまだ部活系の方が勢いが出るかな。フォーメーションも含め、うまく使い分けていってほしいところだ。

この試合の敗因は、結局チャンスに決められなかった事に尽きるのだろう。前後半グダグダな時間帯も多かったがノリノリの流れの時も何度かあり、終わってみればその中でシュートを22本も撃つことができたのだ。それが2本しか(?)決まらなかったのだから、ある意味この結果は「仕方がない」のかもしれない。決定力は文字通り決定的な要因なのである。あと、守備の方で挙げるなら、ボランチのところとセットプレーにおけるマークの甘さかな。今回は浅利の出来がイマイチで、そうなると梶山も90分間もたなくなっちゃうんだよね

この敗戦で、東京は前節に続いて2連敗、倉又監督になってからの星は五分となった。これは仕方がないだろう。よりによって4連戦を前にして監督交代に踏み切ったのだ。戦術練習もコンビネーション調整も不十分に違いない。幸い、次の試合まで10日間。怪我人もある程度戻ってくるだろうし、ようやく倉又監督に「再構築」の時間が与えられるわけだ。しっかり立て直して、甲府戦に勝てば今日の敗北も何てことないのだろう……と思いたい(笑)。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2080

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)