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2006年08月19日

●『ジョゼ・モウリーニョ』

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ルイス・ローレンス著『ジョゼ・モウリーニョ』(講談社)読了。ご存じチェルシーの名物監督にして、数々のビッグタイトルを手にする若き名将ジョゼ・モウリーニョの伝記。傲岸不遜なパブリック・イメージで知られる彼だが、実はその裏側に意外な素顔が……なんてことは全くなく(笑)、いかにも彼らしい人となりを伝えるエピソードが満載。

この本が扱っているのは00~04年の出来事。描かれているのは、今と変わらぬ、巷間のイメージそのまんまのモウリーニョである。自分流を自信満々に押し通す豪腕ぶり。ビッグクラブからの引き抜きに平然と乗る野心家の顔。重要な戦いでは手段を選ばない攻撃性。人への敬意を忘れず、信頼の絆で選手をまとめる名監督ぶり。そして、家族を愛するよき父親の姿。「複雑ではあるが、ブレず芯の通った」人物像。そこが魅力でもあり、嫌われる所以でもある。

特に印象に残ったのは、ポルト時代の退場処分の話と、カマーチョとの交流の話だろうか。前者は、相手チームのスローインを邪魔して退場になった上、ベンチ入り禁止となった次の試合で無線を駆使(違反…だよな?)して指揮をとった「手段を選ばぬ」姿。後者は、サインプレーの得点で勝った試合後、苦境に陥っていたカマーチョにエールを送るため、あえてそのプレーがカマーチョの発明であると発言した「スポーツマンらしい」姿。一筋縄ではいかないお人である。

もちろん、彼の残した戦績も凄まじい。4年間でベンフィカ、ウニオン・レイリア、ポルトと渡り歩くのだが、シーズン通して監督を続けたのはポルトが初めて。しかし、驚くべき事に、そのポルトで2年半の間に欧州CL、UEFA杯、国内リーグ2連覇とビッグタイトルを総なめにしているのである。その後チェルシーでリーグ2連覇を成し遂げたのも、デコやマニシェ、カルバーリョ、コスチーニャといった「愛弟子」たちがポルトガル代表の躍進を支えているのも周知の事実。

わかっちゃいたけど、凄い男である。チェルシーの監督になった時に「私を特別な存在だと思ってもらいたい」と傲慢発言かましたのはマスコミ対策だったということで謝罪したらしいけど、でも自分で言うかはともかくとして特別な存在、あるいは稀有な監督であることは間違いないだろう。だって、「フルシーズン監督を務めれば必ず優勝する」わけだから。インテルとか、ユーベもいない来年のセリエAで優勝できなかったりしたら、もうモウリーニョに頼むしかないよな(笑)。

まあ、あえてこの本の難点を挙げるならば、僕みたいなモウリーニョ好きからすると、ここ数年の成功譚をなぞるだけで終わりなのがやや物足りないかな、と。「らしい」ディテールが並んでファンにはたまらない内容である一方、「ではどのようにしてその名監督は出来上がったのか」という部分についてはほとんど書かれていないのだ。伝記といってもたった4年間の話だからね。ということで、自伝の出版を期待したい……んだけど、なにしろまだ43歳だからなあ。出るのは20年後くらいか?

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