●『封印作品の謎2』
安藤健二著『封印作品の謎2』(太田出版)読了。様々な理由により絶版や放送禁止の憂き目に遭い、今では目にする事のできない過去の名作たち。それら"封印"問題の背景や経緯、"封印"という行為がもたらす問題について追うルポルタージュの第2弾。今回取り上げられた作品は、『キャンディ=キャンディ』『ジャングル黒べえ』『オバケのQ太郎』『サンダーマスク』の4つ。
力作であり、重苦しいルポでもある。前作で対象となった作品はその一部が欠番となっていたに過ぎず、「ある種の抗議と、それに対する制作者側の過剰反応」という"封印"の原因も明確だった。だから、メディアにおける抗議問題の扱われ方の問題点を指摘したり、あるいは作品の復活へ向けたファンらの情熱を汲み上げたりする事で、ある種のカタルシスや納得を得ることはできた。
だが今回は、作品全体が差し止めや"抹消"の状態にあり、しかも原因が著作権者間の権利トラブルであるなど、「本人たち以外には如何ともしがたい」ものが多い(唯一『ジャングル黒べえ』だけは前作の流れに通じる経緯だったようだが)。よって、真相を突き止めるのが困難なのはもちろん、真相が判明したとしても復刻される見通しは全く立たず、最悪の場合著作権が切れる数十年後を待たねばならないかもしれない。これは、何とも重い状況である。
にも関わらず、作品の"抹消"を看過できず、粘り強く一冊の本になるまで取材を続けた労力は評価したいところだ。処女作ゆえかややツッコミ不足のように思えた前作に比べても、取材にしろ書きぶりにしろ、抜かりは少なくなった様子。各章の最後でわからない部分は「わからない」と、書けない部分は「書けない」とはっきり書いているのもよし。結果的に、前作より一見歯切れが悪いようでいて、より出来のいいルポに仕上がっているように思う。
しかしねえ……『キャンディ=キャンディ』とか『オバケのQ太郎』みたいな子供の頃から慣れ親しんできた傑作が、もはや二度と出版できないかもしれない状況にあるなんてねえ……ちょっと信じがたいものがあるが、それが事実なのだからいやはや何とも、という感じである。「作品は作家のもの」なのかもしれないけど、それで本当にいいんだろーか、と思う(多分、よくはないのだろう)。本当にどうにかならんもんかな、一度「世に出た」ものなんだからさ。