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2006年07月17日

●『うつうつひでお日記』

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『うつうつひでお日記』(角川書店)読了。『失踪日記』の大ヒットによって一般世間にもその名が知れわたったロリコン不条理漫画家・吾妻ひでお先生が、日々の生活を「やまなし」「おちなし」「いみなし」で坦々と描いた日記マンガ。

『失踪日記』は2度の失踪やホームレス生活、アル中での入院といった「シャレにならない現実」を明るくダウナーなノリで描いた傑作だった。この本は、同じノリではあるけれど、内容は正真正銘の「日常生活」だけ。ドラマティックな出来事はほとんどなく、プチヒッキー(笑)な吾妻先生だけに、描かれているのは本やテレビの感想と三食の様子と時折襲ってくる鬱と、あと脈絡のない女の子の絵がほとんど。

なのに、ぐいぐい引き込まれてしまう、というより、気がつけば寝っ転がってダラダラと読みふけってしまうのはなぜだろうか。考えてみれば不思議なことである。絵がムチャクチャ上手いわけでもないし(すいません)、さほど変わった考えや発想を披露しているわけでもないし、取り上げるトピックは既に述べたように「日常生活」なわけだし。まあ、元々のあづまテイストがそうっちゃそうなのだが。

もしかしたら、この本の面白さは、「日記」という形式の、つまり日記文学や日記マンガ、さらには現在のブログにまで至る根源的な魅力に通じているのかもしれないな、とさえ思う。その謎を解明することができれば、僕にも人気ブログの一つや二つは作れるのだろうが(作りたいかどうかはともかくとして)……。誰かわかりやすく説明してくれる人はいませんでしょうか(笑)?

それにしても、である。この本の前半部分なんて吾妻先生がビンボー暮らししていた(収入が月4~5万だったとか)時期に同人誌として出版されたもので、おそらく想定読者は数百人といったところだったろう。僕は中野のタコシェで買ったのだが、まさかこういう立派な装丁で角川から再出版されて、しかも店頭に並ぶとは夢にも思わなかった。

まあ要はいかに『失踪日記』がいかに偉大だったか、ということなのだが、巻末の「あとがき」には、その辺の(『失踪日記』後の)出版社や世間のものすごい「手のひらの返しよう」が描かれていて笑える。結局そんなもんだよね、世の中、みたいな。というか、仕事が一気に増えて吾妻先生また鬱になっちゃったらどうしよう、とちょっと心配になったり(笑)。

とにかく、寝る前にでもダラダラ読めば「よし、明日も頑張らないで生きるぞ」と勇気が湧いてくる一冊である。『失踪日記』には及ばないかもしれないが、これはこれで傑作と言えるのだろう、きっと。

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