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2006年07月18日

●アルプスは王者誕生の地となるか ('06ツール・ド・フランス第13~第15ステージ)

あっという間にピレネーも越してしまい(つーか山らしい山は11Sだけだったな)、勝負のアルプス(15~17S)を前にひと休みか…と思っていたところで大きな動きが。「おお、いよいよ始まったぞ!」という感じである。


第13ステージ。230kmの長丁場。フォイクト、ペレイロ、シャヴァネル、クインツィアート、グリブコの5人が飛び出し、ノンビリペースで進む大集団を尻目に、超大逃げが決まった。残り20kmくらいからは5人の中での駆け引きが繰り返される。ここで目を引いたのが、34歳フォイクトの老獪さ。ペレイロと巧みに連携して残りの「若い奴ら」を徐々にふるい落とし(ここら辺については、市川さんの解説が実にわかりやすかった)、最後はスプリントでペレイロに先着して優勝。お見事!である。

そして、フォイクトとペレイロが6位以下につけた差は実に約30分!29分近くあった遅れを一気に取り戻したペレイロは総合でトップに立った。ペレイロと言えば、昨年の「サンドイッチくわえたまま崖下落下事件」(笑)でてっきり「ネタ系」と思っていたのだが、やるときゃやるのお。一方、マイヨ・ジョーヌを失ったフォナックは「体力温存作戦」だったそうが、それにしてもヘナチョコではないか?ディスカバリーやCSCと比べちゃいかんのかもしれんが…。

 
第14ステージ。中盤で6人の逃げが成功するが、さすがに今度はプロトンもみすみす逃がすような真似はせず、クイックステップやリクイガスの引きで着実に差を詰めていく。残り2kmで差は10秒余り、前に残るのはコンメッソとフェドリゴだけ。しかし、漢・コンメッソが力強い踏みで粘る粘る。曲がりくねった道も有利に働き、際どく3秒差で追撃を振り切ることに成功…したのだが、買ったのはフェドリゴの方。コンメッソは最後の脚が残ってなかった…ちょっと気の毒な敢闘賞。

このレースは、勝敗云々よりも途中で起こった逃げ集団の落車が衝撃的だった。下りの右カーブで後輪を滑らせたヴェルブルッヘとカニャダが同時に転倒、ヴェルブルッヘと、カニャダに当たったケスラーとがガードレールの向こうに飛んでいった。ケスラーは幸い軽傷(メットに石が食い込んでいたが)だったけど、カニャダは鎖骨骨折、ヴェルブルッヘも大量出血でともに病院行き。ハスホフトの流血事件もあったし、どうも今回のツールは何かが起こりそうで怖い。


第15ステージ。アルプスでの超級山岳ゴール。つまりは「勝負の日」その1、である。各チームの気合を反映してか、出入りの激しい展開。一時形成された25人もの逃げがガルゼッリのアタックでバラけ、こぼれていく選手をプロトンから飛び出したエース級が追い抜いていく。最後は、その追撃をしのいだシュレクとクネゴの一騎打ちになり、力強いペダリングで突き放したシュレクが優勝。ジロのバッソを思い出させる、どこまでも飛んでいきそうなスパートだった。

シュレクは26歳、例によって「強い80年生まれ軍団」(←勝手に命名)の一員だ。この世代にはツールに出ているだけでもバルベルデ、ウェーグマン、ポポヴィッチ、ボーネン、ベンナーティらがおり、出てない中にもカンチェラーラがいる。本当に粒ぞろいである。万が一来年もバッソが戻らなかった場合、一気に世代交代が進んで、彼らが来年以降のツールで主役の座を占めるのかもしれない。

総合争いの方は、4位に入ったランディスがペレイロを逆転してトップ奪還。周囲の動きに全く動じない、安定感たっぷりの走りだった。メルクスらアシストの活躍もあり、こうなってみると解説のマサ市川氏が強調していたように、13Sの体力温存作戦は成功だったのかもしれない。ただ、意地悪な目で見ると、集団を引く事(不文律によりマイヨ・ジョーヌを擁するチームが行うことになる)自体を嫌がっていたのに、ここでトップに立つのはまた早すぎないか?とも思う。

あと、この日印象的だったのは、やっぱりボーネンのリタイアだろうか。呼吸器系の不調?まだ、かろうじてマイヨ・ヴェールのチャンスもあったのにね。自転車を止めて涙を流す彼の姿にもらい泣きした女性ファンは多かろう(つーか、俺も泣いた)。


[7/22追記]
案の定、というべきか、この後16Sでランディスは大きく遅れ、再びマイヨ・ジョーヌをペレイロに譲り渡す事になった。しかし、17Sではフォナックとランディスは驚くべき底力(根性?)を発揮してペレイロを猛追、19Sの個人TTで逆転に成功する。さすがは「戦国ツール」、すげー出入りの激しい展開。この劇的な勝負を見られなかったのは個人的な痛恨事である(泣)。


(各ステージのリザルトはこちら)

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コメント

ランディス、16ステージで轟沈してしまいました(その一方でラスムッセン、大爆発)。

こうなったら、サストレにチャンス到来かな。あとは17ステージでペレイロの前に出られれば(マイヨ・ジョーヌマジックは要注意だ)。

あ、そうなんだ。ランディス無茶苦茶余裕に見えましたけどねえ。

CSC好きとしてはサストレでもいい(彼今回「14番」ですよね)し、去年の笑撃映像(笑)を見た人間としては、ペレイロでもいいですね。

しかし、土曜日に帰ってから3ステージ分10時間以上まとめて見なくちゃいけないのはけこうきつそうだ。

>あ、そうなんだ。ランディス無茶苦茶余裕に見えましたけどねえ。

ランディス、17ステージで2位のサストレに5分半もの差をつけて独走勝利しました。おかげで1位のペレイロから3位にあがったランディスまで30秒以内の大接戦に。

あと、今大会を見て思ったことは、どのチームも集団を支配する力を持っていないことですね。ケースデパーニュもランディスの逃げをチームの力で追うことができませんでしたし、フォナックの30分の大逃げ許しといい、T-モバイルのピレネー初日といい、昨年のディスカバリーからは想像もできないほどの支配力の無さですね。

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