●オリバー・カーンの花道 ('06サッカーW杯3位決定戦)
早朝、NHK総合でドイツW杯3位決定戦。ドイツ 3-1 ポルトガル。聞くところによると、W杯の3位決定戦については「廃止すべき」との声があるらしい。確かに、選手の体調維持や世間の注目度、順位づけする必要性の低さを考えれば、それなりに合理的な意見ではある。が、ファンとしては1試合でも多く観られるのは嬉しい事だし、少なくともこの試合は、開催国ドイツが出場したこともあって白熱した好ゲームとなったのであった。
前半、これまで通りドイツの前へ出る姿勢が目立った。大黒柱バラックの欠場も勢いに乗る開催国にはお構いなし。序盤のポルトガルの攻勢を止めきると、あとはフィジカルにものを言わせてドイツがボールを支配。クローゼ・ポドルスキーの強力2トップがDFを攪乱、コースが開けば迷わずミドルシュート。20分、ケールのループシュートはリカルドが際どく弾き出し、25分にもFKからポドルスキーの弾丸シュートをリカルドの好セーブでしのぐ。
もっとも、劣勢のポルトガルも、もちろん隙あらばと機会を窺う。マニシェ・デコのパスワークからC・ロナウドの高速ドリブルでいい形を何度か作った。だが、その前に立ちはだかったのが初先発のオリバー・カーン。15分にパウレタがDFライン裏に抜け出して一対一になった場面、慌てず動かず、抜群の読みで脇を狙うシュートをはね返した。結局、両チームとも好機に決められぬまま膠着状態となり、スコアレスのままハーフタイムへ。
後半立ち上がり、中盤にプティを入れたポルトガルが巻き返しを図るが、決定機には至らない。そして56分、左サイドから中央へ戻るようにドリブルするシュヴァインシュタイガーが思い切った右足シュート!ボールはほとんど回転しないまま猛スピードで飛び、リカルドの両手の間を抜けてゴール中央に突き刺さった。この大会一貫しているドイツの「ミドル狙い」がもろにハマった先制点。「シュートは撃たなきゃ入らない」ということだ、つまりは。
続いて61分、ボックス左斜め前からのFK、シュヴァインシュタイガーが今度はGKとDFの間を狙う強烈なグラウンダー、戻りながらクリアしようとしたプティがゴールへ蹴り込んでしまいオウンゴール…。たまたまとはいえ交代選手の絡んだ失点でもあり、ポルトガルにとっては痛い失点だった。2-0。62分にロナウドの折り返しにデコが走り込んで放った強烈なシュートも、カーンが鋭い反応で弾き出す。その後はドイツが2トップを下げる余裕の交代を見せ、一進一退の攻防で時間が過ぎる。
一矢報いたいポルトガルはヌーノ・ゴメス、さらにフィーゴを投入して最後の反撃。78分、ボックス手前のパスワークからフリーになったロナウドが放ったシュートは、これもカーンが弾き出す。まるで02年を思い起こさせる鉄壁のゴールキーピングである。逆にその直後、またも左サイドから切れ込むシュヴァインシュタイガーがミドルシュート、今度はゴール右隅ギリギリに決まった。3-0。もうスタンドはほとんどお祭り状態。
終盤はベテランが魅せた。82分、左サイドから入ったクロスをメッツェルダーがゴール方向にヘディングしてしまいあわやオウンゴールの場面、カーンが辛うじて足に当てて防ぐ。83分にはロナウドの無回転FKがドイツゴールを襲うが、カーンが逆をつかれかけながらも踏ん張って弾き出す。88分にはポルトガルも意地を見せ、フィーゴのGKとDFの間をきれいに抜けるピンポイントクロスをヌーノ・ゴメスがダイビングヘッドで押し込んで3-1。しかし時既に遅し、そのまま試合終了となった。
印象的な3位決定戦だった。ポドルスキーやシュヴァインシュタイガー、C・ロナウドといった若手が活躍すると同時に、カーンやフィーゴら両チームのベテランも充分すぎるほどの存在感を見せつけ、結果として3位決定戦らしからぬ(?)大熱戦が展開されたのだった。いや、これを見ちゃうと「3位決定戦要らない」なんて言えないと思うんだけどなあ。両方ともすげーやる気満々だったぞ。
特に、カーンは「ドイツ国民待望」といった感があり(もちろん僕らも見たかった)、プレーの毎にスタンドから大きな歓声が上がって、それに対して彼も最高のセーブで応えた。後半途中には「オリ!オリ!」の大合唱まで。クリンスマンもちょっとは罪滅ぼし(笑)ができたのかどうか知らないが、とにかくもう代表では観られないんだよな…名残惜しすぎる。試合後、カーンとフィーゴが肩を組んで語り合っていた光景が忘れられない。
さて、いよいよ次は決勝戦、そしてジダンの「ラストダンス」である。個人的に今回のイタリアはここ数年のW杯でも屈指の「傑作」だと思っているので、そちらに勝ってほしい、あるいは勝つだろうと思っている。けれども、何しろ相手はよりによって「最後のジダン」である。もしかしたら人知を越えた結果が出るのではないか、という気がしないでもない。ホントに、どうなるんだろうか?キックオフまであと6時間。