●訃報
訃報:宿沢広朗さん55歳=三井住友銀行専務執行役員 (毎日新聞)
記事のタイトルを見ても、一瞬何のことやらさっぱりわからなかった。日比野さんは「信じられない」とコメントしているみたいだけど、僕も全く同じ気持ちだ。というより、「信じたくない」といった方が正確か。なんででこの時期にこの人がこういう亡くなり方をしてしまうのか…。55歳とはいくらなんでも早すぎるだろう。愕然、である。
実は、昨晩実家で両親と妻と夕食をとっていた時、最近のラグビー日本代表の不調ぶりが話題になり、その中で「早稲田出身の人がジャパンの監督になるといい仕事するんだよ。オールブラックスJrに勝った大西鐵之祐さんでしょ、ウェールズをアウェイで追い詰めた日比野さんでしょ、スコットランドに勝った宿沢さんでしょ…」なんて話をしたばかりだった。まさか、その時亡くなってたなんて。
早稲田が日本選手権を連覇した時の伝説のスクラムハーフ。早々に引退してビジネスエリートとして活躍した後、38歳でどん底のジャパンを救うべくラグビー界に舞い戻ってきた不思議な人。「勝てますよ」と大口を叩いて本当にスコットランドに勝ち、トンガや韓国を撃破してW杯への道をつなぎ、本番ではアイルランドに届かなかったもののジンバブエを圧倒。ジャパンの力を世界に見せつけた名監督だった。
最近では協会の強化委員長として代表のプロ化に取り組み、結果、ジャパンはW杯予選を大勝の連続で突破、本大会でもフランスやスコットランド相手に善戦。甘えたアマチュア体質に風穴を空けたのは記憶に新しい。その後は本業専念でラグビー界の表舞台からは遠ざかっていたけれど、ファンとしては早く戻ってほしかった。森末さんと飲みに行くと、必ず話題になったのは「宿沢さん、銀行辞めてラグビーに専念してくれないかな…」という勝手な願望だった。
いや、あんなに論理的で、行動力もあって、既成の枠組にとらわれない人、ラグビー界には他におらんぞ。銀行の激務と掛け持ちであれだけやれたのは、本当に凄すぎると思う。日比野さんの「かけがえのない人を失った」というコメントが胸に染みる。もったいないというか、やってほしい仕事はまだ山ほどあるというか…しかも、このジャパンがまたどん底に陥っている時に。とにかく、残念だとしか言いようがない。
4年くらい前だったか、宿沢さんの本が出版された時、外苑前のリブロブックスで行われたサイン会に足を運んだ事があった(正確に言うと、秩父宮の試合後にリブロに寄ったらたまたまサイン会をやってたのだが)。笑顔でサインをしてくれた後、握手した。ゴツい感触を予想していたのだけれど、伝説のスクラムハーフの掌は、とても大きくて、柔らかくて、温かかった。
昨日、日本代表はNZの地でサモアに9-53で大敗した。気合いのこもった戦いぶりではあったけれど、相対的に低下していく実力をまたしても見せつけられた試合だった。来週はオールブラックスJrとのテストマッチ。相手は、大西監督(宿沢さんの師匠)率いるジャパンに敗れた38年前を忘れてはいまい。喪章を付けて戦う僕たちの代表は、果たしてどのような戦いを見せてくれるのだろうか…。
宿沢さん、天国からでもいい、日本の、僕たちのラグビーに力をください。
コメント
いやね、もうねこれを国家的損失と言わずしてなんと言うって感じですね。
>あんなに論理的で、行動力もあって、既成の枠組にとらわれない人、ラグビー界には他におらんぞ。
まったく同感です。日本のスポーツ界見渡しても稀有な存在ですね。
日本のラグビー界が受ける打撃は計り知れないものがあるでしょう。
残念としかいいようがないです。
Posted by: ぶらっくばす | 2006年06月18日 03:31
いや、ホントね、まだまだ色々な仕事をできたはずの人なのにね…。
ラグビー協会の会長になって、日本ラグビーを根本的に変えてほしかった。
つつしんでご冥福をお祈りします。
Posted by: murata | 2006年06月18日 19:13