●イングランド×トリニダード・トバコ ('06サッカーW杯)
夜中、NHKでドイツW杯グループB。イングランド 2-0 トリニダード・トバコ。初戦の両チームの戦いぶりからイングランドにとって難しいと思われていた試合。案の定というか予想以上にというか、トリニダード・トバコの組織守備の前に苦しむことに。しかし、イングランド人にとっては幸いなことに、「困ったときのベッカム」は未だ健在なのであった。
開始から、順当にイングランドの優勢。中盤の支配力にベッカムのクロス、クラウチの高さ、そしてジョー・コールのドリブル突破。完全にハーフコート・マッチの状態でじっくり攻めたててる。しかし、トリニダード・トバコの防御は実にしっかりしていた。ぬかりのないマークの受け渡しと素早い守備ラインの構築。ランパードのミドルのこぼれ球をオーウェンが押し込み損ねたりしつつ、スコアレスのまま試合は進む。
前半半ばになると、イングランドも攻めあぐんでフリーランニングが減少。単調な「クラウチ大作戦」に陥っていく。ランパードの必殺ミドルは枠を外れ、ベッカムのピンポイントクロスに合わせたクラウチのボレーは大外れ。逆に終了間際、GKロビンソンの判断ミスからトリニダード・トバコが決定的なシーンも作った(テリーのスーパークリア!)。イングランドにとっていや~~な展開だったのは間違いない。
後半も前半同様、というより前半以上にイングランドが押し込み、トリニダード・トバコは少人数での逆襲を狙う展開。イングランドの攻めあぐみはいよいよ悪化、リズムはすっかり崩れ、パスミスが続く上に選手たちも押し黙って暗い表情。オーウェンはフリーのヘッダーを外してしまい、クラウチは的外れなイライラプレーを連発。変化をつけるためにはルーニーの投入もやむなし、という雰囲気であった。
で、58分、ついにルーニーとレノンを投入、はいいのだが、外れるFWがオーウェンだったのには思わず「おま、そ、ちが、エリクソン!」とどもりながら叫んでしまいますたよ。いや、この日のクラウチって、自分がフリーなのにマークの付いた味方へワンタッチではたいたり、足下のボールをわざわざ浮かせてオーバーヘッドで狙ったりしてたし。そりゃオーウェンを残すべきだろう、と。まあ、結局、正しかったのは僕ではなくエリクソンだったんだけど(笑)。
ともかく、フレッシュなアタッカーが入ったことでイングランドの攻撃にやや勢いが戻り、特に右サイドのレノンはドリブルでDFをちぎりまくるのだが、サイドからいい形はできるのだがクロスの精度が低く、さらにシュートの精度はそれ以上に低いのであった。ランパードが何度もボックス内でシュートチャンスを得るも、なぜか枠外かGK正面ばかり。プレミアで見せてた決定力はどこに行っちゃったんだよー。
ようやく試合が動いたのは、引き分け(あるいは逆襲一発での負け)の気配が漂っていた後半38分。右タッチライン際でレノンの落としたボールをベッカムが拾ってクロス、ファーサイドで伸び上がったクラウチがDFに頭4つ分くらい(笑)競り勝ち、ヘディングシュートがゴール左上に吸い込まれていった。おー。クラウチを残す判断と、レノン投入によるサイド強化が当たった結果に。いや、エリクソン監督、おみそれしました。
あとは試合を終わらせるだけ、と思っていたら、ロスタイム、イングランドは右サイドから切れ込んだジェラードが見事なミドルシュートを決め、追加点をゲット。そのままのスコアで試合終了となった。終わってみれば2-0、しかもベッカムのクロスに自慢の長身FW&豪快センターハーフの得点と、形だけはイングランドの完勝となったのであった。やれやれ…。
FW陣の層の薄さとオーウェン&ルーニーのコンディションの悪さから、、イングランドが得点不足に苦しむことは大会前からある程度は予想されていた。だから、特にトリニダード・トバコみたいな守備の整備された好チーム相手に苦戦するのも、「想定内」と言えば「想定内」と言えるかもしれない。ただ、それにしては、リズムを自ら崩すような堪え性のなさが見えたのがちょっと心配ではあるのだが。
僕個人としては、今回のイングランドは結構行けるかも、と思っている。それは、CBの信頼性の高さと、なんといってもセンターハーフ2人の能力による。公式球のボール特性もあり、MFがドカーンとミドルで決めた1点を守りきってしぶとく勝ち抜くだろう、と。今日はランパードが決定力を欠きながらもジェラードはきっちり決めてきたし、ベッカムのクロスが健在なのもわかった。この苦戦で特に評価は落ちない、と思う。
注目のルーニーは、40日ぶりの実戦ということで、試合勘・体のキレともにイマイチの様子であった。まあ、これは仕方がない、というよりも今の段階から決勝トーナメントに向けて慣らし運転を開始できたのはむしろ大きな収穫である。エル・ゴラッソで西部謙司さんが書いてたように、W杯で上位進出するためには「好チーム」であるだけでは足りず、「スーパーな選手」が必要であるとすれば、イングランドにおいてはルーニー以外あり得ないのだから。
しかし、それにしても、試合後のクラウチのやたら誇らしげな顔ときたら……うーん(笑)。