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2006年05月30日

●アシスト、万歳!!

月曜日の晩。11時前に帰宅して遅い夕飯を食べ終わり、いつものようにJSPORTSをつけてみると、当たり前だが自転車レースはやっていなかった。野球好きだった子供の頃にナイターのない月曜日は、妙につまらない夜だったのをふと思い出した。つーか、もはや中毒ですな、これは(笑)。


結局ジロ・デ・イタリアは全部観てしまった。自転車レースはムチャクチャ面白い、というのは最初からだが、観るたびにその面白さが増しているのだからたまらない。昨年からツール、ブエルタ、ジロと一通り観て、もちろんまだまだ「観る目が付いた」なんてとても言えないのだけれど、個人競技としてのみならず、団体競技としての魅力が分かるようになってきた(ような気がする)ことが大きいのだと思う。

サイクルロードレースは「個人競技の皮をかぶった団体競技」だ。そしてその中心には、エースとアシストととの関係性がある。つまり、「エースなくしてアシストなし、アシストなくしてエースなし」というシンプルな事実である。先頭切ってゴールに飛び込むのは、各チームのエース格の選手たち。しかし、1ステージ200kmもあるレースの大半において「仕事をしている」のはアシストたちなのだ。

今回のジロでは、特に山岳においてアシストたちの活躍が目立った。CSCのサストレにジュリック、そしてフォイクト。サウニエルドゥバルのピエポリ(ステージ2勝!)。平坦でガラーテが、山岳でベッティーニが、互いのアシスト役に回って共にジャージを獲得するというクイックステップの見事な立ち回りも見ることができた。上位の選手の陰には、必ず優秀なアシストの存在があったように思う。

ある時は風よけとなり、ある時は限界を超えたスピードアップを率先し、またある時はボトルや雨具を運んで回る。チームのために、仲間たちのために、そして何よりエースのために。結果、彼らは大抵の場合途中で力を使い果たして遅れていく。優勝争いできるのは展開に恵まれた場合のみ。観始めた頃はその姿に物悲しささえ感じたのだけれど、実はそんなこともないのだと、最近になってようやくわかってきた。

彼らアシストは「エースのため」の存在だ。でも、それは単にエースが偉いとか楽をさせるとかいうことではなく、あくまで勝負所でエースに最大限の力を発揮させる(言い換えれば、一番キツい場面で頑張らせる)ために働いている、ということ。彼らがいてこそエースは輝く。サストレとピエポリの奮闘がバッソ×シモーニの一騎打ちをもたらした16Sは、大会のベストレースと言っていいだろう。別の言い方をすれば、エースもアシストも、結局は平等に「チームのみんなのため」の存在なのである。

そういう意味でも、CSCは最高だった。無敵のバッソに鉄壁のアシストたち。シモーニがピエポリ1人に頼りがちだったのに対し、CSCは上記の3人に加えてセレンセンやロンバルディもいて、しかも全員が完走。彼らが代わる代わるバッソのために状況を整え、バッソは超人的な走りでそれに応えた。おまけに、19Sではフォイクトが自らとチームの株を大いに上げる「プレゼント」まで。これを完璧と言わずしてなんと言おうか(逆に、アシストが健闘したのにエース不在だったミルラムは哀れ…)。

そう、サイクルロードレースは1人のスターでは勝てないし、スターだけではそもそもコンテストにならないのである。そういう意味では、たとえばフットボールや野球といった競技とも、通じる部分は大いにありそうに思える。今回のアシストたちの活躍を見て最初に頭に浮かんだのは、いつぞやの名波の「中盤にはコマネズミがいなきゃ」発言だった。野球の打者に喩えれば2番とか8番、投手ならセットアッパーに近い役回りになるのだろうか。

……てな感じで、ジロをきっかけに「チームとは何ぞや」という命題(の一部)についてつれづれ考えたりする初夏の夜なのであった。いや、自転車は奥が深い。


[追記]
ちなみに。FC東京の中で「アシスト」としてまず僕が思い浮かべるのは栗澤である。憂太を陰で支えてチームにパスサッカーをもたらした、昨年のアウェイ大宮戦の活躍は忘れがたい。もちろん彼は今年の川崎戦で素晴らしいラストパスを通したように、展開によっては主役にもなれる器なんだけど、それだけの能力の選手がアシストに回れればますます凄いっつーことだよね、きっと。

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