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2006年05月23日

●人気者の笑顔、そして「王冠が見えた」 ('06ジロ・デ・イタリア15S・16S)

第15ステージは最後の平坦。逃げの4人を集団が泳がせてコントロール…と展開もまた平坦だった(でも道中、栗村さんの34歳話は楽しかった)のだけれど、残り30kmを切ってからの集団の追い上げは見応えがあった。クイックステップ勢を中心に10人くらいが先頭交代を繰り返してグングンとスピードアップ。ここのところ上りの踏み合いやバラけた下りの走りを見慣れていただけに、この集団走行はかなりの迫力。選手たちが次々と風のように駆けていく。

そして集団は猛スピードのまま逃げを呑み込んで、濁流のようにゴール・スプリントへ。勝ったのはベッティーニ。早め先頭からわずか数cm差押し切る。ペタッキリタイア後のミルラム・トレインを利用するヤドカリ戦法(笑)が実を結んだ、というところか。先日は勘違いのガッツポーズで失敗しただけに、恐る恐る手を挙げたところがまたお茶目。イタリア人たちも大歓声!人気者が勝つと雰囲気が明るくなっていいね。ちなみに、彼も74年生まれだ(嬉)。

 
第16ステージ。伝説の峠「モンテ・ボンドーネ」へ向け、徐々に高まっていく決戦ムード。残り20kmを過ぎたところでCSCを先頭に集団が猛加速、単騎逃げのルビアーノを一気に追い越して峠に突入。あとは延々と続く上りで上位勢の直接対決となった。勝ったのは…またバッソ。同僚サストレの好走で集団の大半をふるい落とし、ピエポリ・グティエレスらを自ら突き放し、最後はシモーニとの一騎打ちを制して独走。総合はこれで決まりだろう。この日のアタックは安定感に加えて爆発力もあった。

一方、負けたとはいえ、2位に入ったシモーニは大健闘。絶好調の同僚ピエポリを活用して揺さぶりをかけ、一か八かのペースアップでサストレを葬り去るなど、彼の立場でできる限りの努力はした。強いバッソに対して座して死を待つのではなく、堂々と、文字通り「勝負をかける」事ができるのはさすがジロ2勝の強者である。立派な敗者がいてこそ勝者はより輝く。ペースアップしたバッソの姿があっという間に小さくなっていった場面、歯を食いしばって前方を睨みつける彼の表情は忘れがたい。

おそらく、今回のジロを後から振り返ってみれば、このステージこそが「王者誕生」の瞬間だった、ということになるのではあるまいか。それほどまでにバッソの強さが強烈な印象を残した一戦。明日は今日以上にキツいコースみたいだけど、さてどうだろう…。