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2006年03月07日

●FC東京×大分トリニータ(後編)


前編から続く)


後半になると、大分が立て直してきた。ハーフタイムの修正に加え悪ピッチにも慣れたのか、アタッカーへのクサビやフィードが正確性を増し、速いパス回しから攻めたててくる。7分、大分のCK、ゴールエリア内を狙った折り返しを増嶋が際どくカット、こぼれ球を三木が狙うが徳永が詰めてシュートは外れる。12分、カウンターで大分3対東京2の危ない場面、慌てない茂庭の構えにドリブルする内村の判断が遅れて命拾い。さらに14分には高松がヘディングシュートを放つも、増嶋がしっかり体を寄せて枠外へ。

東京もパス回しからリズムを取り戻したいところだが、梶山・今野とFW陣の連携がイマイチでなかなかチャンスが生まれない。規郎・徳永も沈黙し、ますます3トップ頼みが強まっていく。16分、右サイドからリチェーリが突破、折り返しをルーカスが合わせたシュートはDFに当たり、こぼれ球をササが右足で狙うもボールはポストのわずか右を抜けていった。そろそろ選手交代のタイミングかとも思えたが、ガーロはなかなか動かない。24分、ゴール正面から梅田が放った強シュートは今野が顔面でブロック。

25分、東京は足を痛めたリチェーリに代えて川口投入。これは成功だった。川口は右で左でボールを引き出してはドリブルで仕掛け、その積極性が攻撃を活性化。26分、川口が右で突破してクロス、逆サイドからササが折り返し、ルーカスが引き倒されるもノーペナルティ。27分、パスカットから伊野波が左タッチ際を駆け上がり、中央への折り返しをルーカスがシュートするが西川の正面。28分にはササからのグラウンダーを川口が反転して流し、走り込んだルーカスのシュートを西川が左足でかろうじてセーブ、さらに規郎のクロスに川口が飛び込んだヘッダーはわずかにバーの上。

大分はDFの上本に代えてMF西山、さらにFW松橋投入と攻撃の枚数を増やして対抗しようとする。しかし31分、ペナルティボックス内で高松にラストパスが通った場面も増嶋がガッチリ付いてブロック。この日の増嶋はたくましいプレーを連発しており、いつもに比べて茂庭の存在が目立たないように感じたほどであった。

終盤になると両チームの守備の圧力が減り、やや淡泊なシュートの応酬となっていく。35分、ゴールライン際からの内村のクロスに合わせた松橋のシュートがサイドネットを揺らす。38分、大分のロングボールに対して増嶋から茂庭へマークの受け渡しが遅れ、山崎のシュートがゴールわずか左を抜ける。ここら辺、大分のシュートの不正確さに助けられたのも事実である。東京も負けじと川口が勝負を仕掛け、得点には至らないながらクロスやシュートでDFを脅かす。

41分に東京は警告を受けたルーカスを下げて憂太を投入。最後は皆でしつこくボールを追いかけ、大分に攻撃の形を作らせない。時間のなくなった大分の放り込みも、増嶋を中心にはね返し続ける。46分、1人まだ得点が欲しそうなササの期待に応え(笑)、川口が左サイドでDFをぶっちぎってクロス、しかしササは体勢を崩してシュートできず。48分には憂太が敵陣深くでFKを獲得、クロスに川口が飛び込むが決まらず。結局、東京ペースのまま試合終了の笛が鳴った。


この試合、途中で僕が思わず呟き、試合後東すか編集長からも同じ言葉を聞いたのだが、「何ともコメントするのが難しいゲーム」であった。ところどころで「つないでリズムを作る」意図はうかがえたものの、大分の前がかりの守備、デコボコのピッチ、リチェーリの予想以上のスピード、と様々な要因が重なってリニューアルしきれない(しなくてもイケちゃう)サッカーになった事は否めないし、大分のもたつきに助けられたのも確か。まあ、まだ開幕戦でもあるし、拘りすぎて状況を無視した「原理主義」サッカーに陥ってもいけないので、とりあえずよしとすべきだろう。

選手・ユニット別では、まず3トップは各自持ち味を出して勝利に貢献。リチェーリはスピードはもちろん、ゴールを目指す意識の強さがいい。ルーカスは相変わらずな感じ。中盤は、伊野波はシブい働きで合格点、梶山はちょっと雑過ぎる印象。今野は守備の方でまだ感覚がつかめていないかな。SBの2人はもっと周りとの絡みを考えないと。特に規郎は、今のままだと前に蓋をされたらお手上げだろう。DFは、増嶋が頼もしくなったのが嬉しいところ。この日のプレーならジャーンを欠いても大穴にはなるまい。あと、忘れてならないのは川口か。FWであれだけやれるとは、ちょっと意外(と言っては失礼か)。

ともかく、ガーロ監督の初戦できっちり勝点3奪えたのは、チーム作りに「ゆとり」をもたらす意味でも非常に大きい。次戦以降も試行錯誤が続くこととは思うが、3月の相手は新潟・清水・川崎・京都。この4戦で徐々にチームを固め、良い状態で最初の山場である4月(横浜、磐田、千葉、ガンバ!)を迎えてほしいものである。


大分の方は……アウェイでの開幕戦、難しかったのだろうが、序盤の出来は昨季の後半と見比べると「あらら?」という感じであった。人材面で質の低下があるのは否めず、特に攻撃の軸であったマグノ・アウベスの穴はやはり埋まらないのかな、と思わされた。「少数精鋭」と言えば聞こえはいいが、強力なユースを抱える千葉あたりに比べても状況は厳しいのだろう。まあ、逆に「その逆境をどうシャムスカが乗り切るか」という意味で興味深いチームではある。
 

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コメント

ゲームの流れがよくわかるので、いつも「あーそうだったそうだった」と頷きながら読んでいます。僕にとっては、読み応えのあるのがまた魅力です。

どうもありがとうございます。
前の週末のゲームの「復習」に役立てていただければ幸いです。それで東京の試合が「一粒で二度おいしい」ものになればなおよし、ですね。

毎度思うのですが、
メモを取りながら試合を見ていらっしゃるんでしょうか。
本当にお世話になってますので
これからも「長すぎ」くらいでよろしくお願いします。
父は東京サポーターでなく、
早稲田ラグビーの熱烈ファンでして
トヨタ戦の観戦記を読ませたところ唸って感服しておりました。
それ以来、一家で「うまねん」です。(笑)

お察しのとおり、私はメモを取りながら試合を観ることがあります。まあ、目でプレーを追いながら筆記するので、恐ろしいくらい汚い字になってたりしますが(笑)。
ただ、今回については東すかの配布もあって余裕がなかったりメモ帳を持って行くのを忘れたり(笑)したので、当日メモを取りませんでした。ですので、肉眼で確認できなかったところ、うろ覚えだったところについてはMXテレビの録画で確認しました。
最近はホームもアウェイも、衛星放送も含めればほぼ全試合(ナビスコと天皇杯の数試合除く)中継してくれるんですから、いい時代になったものです。

ラグビーに関しては、私は早稲田も好きですけど、実はもともとは慶応のファンだったりします。お父上には「たまには勝たせて下さいよん」とお伝え下さい(笑)。

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