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2006年03月22日

●川崎フロンターレ×FC東京(後編)


前編から続く)

後半に入ると、東京は一気にペースアップ。縦パスを多用してどんどん攻め込んでいく。興味深かったのは、これに川崎が「おつき合い」した事。まるでテニスみたいなせわしい攻め合いに。1分、川崎陣深くのスローインをルーカスがボックス内で受け、浮かしたボールを宮沢がシュート、バー直撃。2分、スルーパスでジュニーニョがDFライン裏へ抜ける大ピンチ、土肥が片足でまたもビッグセーブ。6分、右CKのはね返りを再び右へ展開、憂太の低いクロスに対し今野がニアヘ飛び込むが、DFに阻まれる。8分には東京の波状攻撃になり、規郎や徳永からクロスが上がるもゴールには至らず。さらに10分にはジュニーニョのドリブルからの強烈なミドルシュートを土肥ちゃんが片手で弾き出す。

13分、東京ベンチが動く。憂太OUT栗澤IN。正直「大丈夫か?」とも思えたのだが、憂太(栗澤もだが)の怪我上がりの体調も考慮したのだろうし、何より栗澤のプレーぶりが素晴らしかった。絶え間なく動いて各所に顔を出し、味方の攻撃をコーディネートしていく。16分、栗澤から大きく右の川口へ展開、クロスにルーカスが合わせるがヘッダーは力なくGKキャッチ。そして18分。栗澤がボックス横で倒されてFK、宮沢の低く鋭いクロスにファーサイドでDF2人の間から飛び出したジャーンが飛び込み、ヘディングシュートが突き刺さって同点。ジャーンはゆりかごポーズで喜んでいたが、誰がおめでただったのだろうか?

これで東京は一気に勢いづいた。宮沢の大きなフィードから、規郎・徳永がガンガン上がっていく。20分、自ら奪ったボールを徳永が持ち上がって川口へ渡し、ルーカスを狙ったクロスを相澤がキャッチ。21分、中村の巻くグラウンダークロスに我那覇飛び込むも、寸前で土肥キャッチ。23分には規郎のロングシュートがDFに当たって裏へこぼれたボールを今野が蹴り込むが、オフサイドでノーゴール。川崎はDF米山を入れて4バックへ変更、立て直しを図る。が、マーキングに混乱が生じたのか、かえって東京のサイド突破を助長したようにも見えた。28分、カウンターで東京2人川崎3人の場面ができるが、ジュニーニョからMF森へのクロスがブレて助かる。

そして30分。ハーフウェー付近で前を向いた栗澤から、DFラインのギャップへ走り込む川口へカーブのかかったどんぴしゃスルーパス。川口はトラップするや切り返しで追いすがるDFをかわし、さらに前へ飛び出すGKもかわして左足でシュート!ボールは無人のゴールへ吸い込まれた。逆転。東京側スタンドはワッショイワッショイ!!の大歓声。いや~、まさかあの不器用な川口(と言っては失礼だが)がこんな巧みなゴールを決めるなんて……イメージが一変した、とさえ言ってもいい。ああびっくりした。

東京はさらに攻勢を継続。川崎は疲れもあるのか、前がかりになるもなかなかシュートに至らない。左右から雑目に上がるクロスは全て土肥ちゃんが確実に処理。33分、ペナルティボックス横でDF伊藤が内へ切り返して今野に奪われかかるミス、FKを宮沢が直接狙うがわずかにバーの上。36分、ドリブルで攻め込んだ規郎がDFに囲まれながらキープして左足シュート(左に外れ)。川崎はマルクスに代えて期待のFW黒津を投入。黒津は38分に正面から惜しいミドルシュートを放ち、さらにCKから箕輪が落としたボールに合わせてシュート(GK正面)するなど生きのいい動きを見せる。

39分、東京は宮沢に代えて増嶋を投入し、逃げ切り態勢に。しかしこの策が実らず。40分、くさびのボールをジュニーニョがヒールで流してマークを外し、中村がドリブルで前進、茂庭がチェックに入ろうとしたところでペナルティボックスへ走り込むジュニーニョへパスを通す。これに対し土肥が飛び出すが、ジュニーニョは落ち着いてまた中村へリターン、シュートが無人のゴールに転がり込んだ。土壇場で同点。見事な2人のパス回しにマーカーの増嶋・伊野波は完璧にやられる形となった。やはり「いきなりのボランチ」は難しかったのだろうか。

終盤の攻防。川崎は生気を取り戻し、東京はやや受け身に。43分、ペナルティボックスすぐ外で黒津をジャーンが倒し、FKのピンチ。中村のシュートは幸い壁に当たってくれた。ロスタイムには川崎陣で栗澤が粘り、徳永からボックス内でDFを背負うルーカスへ。ルーの戻したボールを栗澤が左足でミドルシュート!これは決まったかと思えたが、ボールはバーの下側に当たってゴールインせず。入れば「サヨナラゴール」……惜しかった。その後の川崎のFKもサインプレーのミスで決定機にならず、結局そのまま2-2で試合終了。展開を考えれば、勝つべき試合だったかもしれない。


意地悪な言い方でこの試合をまとめるなら、「結果オーライまであと一歩」ということになるだろうか。後半、縦のボールを多用してゲームスピードを上げようとしたところ、それに相手が乗ってきてくれたのは幸運なことであった。つーか、僕が川崎ファンだったら「何やってんねん」と思っただろうな。あそこで川崎がしっかりつないでこちらの攻勢を受けて流すようなサッカーをしていたら、かなり苦しかっただろう。もっとも、川崎もまたポゼッションに重きを置いた組み立てができないということなのかもしれないが。

で、両チームにチャンスがあったんだけれど、負傷交代で出た川口の活躍に加えてやはり途中交代の栗澤が大当たり、東京が怒濤の攻撃で逆転、と。ところが、ここで逃げ切ることができないのがまた東京らしいっちゃらしいところか。ガーロの増嶋投入策の是非はとりあえずさておき、「もう1点取れないと勝ちきれないサッカー」ではまるで昨年までと一緒ではないか。アウェイで勝点を取れた事を喜ぶ一方で、課題は相変わらずの現状を再認識させられたように思う。

ポジティブな要素を挙げるとすれば、ガーロが中盤に手をつけ、より機能性の高い構成にしてくれたことか(そう考えると、勝ったとしても「結果オーライ」とは違うか)。結果として全体のバランスは目に見えて改善した。また、後半の栗澤投入は、MFの競争を激化させる意味でも当たりだったと思う。視野の広さと閃きを武器とする憂太に対し、精力的に周りを助けて生かす栗澤。どちらもトップ下としては魅力的。そして、彼らに加えて宮沢、今野、梶山、伊野波。東京の中盤はやりようによっては凄いことになるはずなのだ。あとはリーダー役が誰かいれば……。

とにかく、半歩前進しはしたが、あくまでここがスタートライン。ここから進歩していかなければならない。そういう気分になった等々力の夕べであった。


ちなみに、この日はアウェイ自由席のバックスタンド寄り辺りに座っていたのだが、周りの東京ファンのプレーに対する反応がちょっと気になった。ペースダウンしてのボール回し、特に自陣深くでのそれには状況に関わらず不満の声が上がる。一方、やや無謀めの、「それ相手にボール渡すだけやん」的なロングフィードには歓声が上がったり。やっぱり東京ファンはタテタテサッカーが好きな人が多いのだろうか……。PSMでの増嶋のバックパスに対するブーイングが頭をよぎった。パスコースやスペースがない時、もしくは相手のプレッシャーが厳しい時、一度後ろに戻したりしっかり回して作り直したりするのは決して「攻撃的」と矛盾しないと思うんだけどね。

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