うまねんblog

試合が動いたのは７回表。先頭の松中がライト線を破るヒット。悪い足を懸命に動かして２塁まで走り、頭から滑り込む闘志を目にして「行けるかも」の予感。しかし、日本ベンチは続く多村に送りバントを指示。これは采配ミスだろう。多村は前の打席であわやの大飛球を放ち、守備でもファインプレーを見せるなどノッている選手だった。そして、あの過緊張にならざるを得ない場面でバントを決めるのは非常に難しい。ランナーが松中ならばなおさらだ。結局、多村はバントを２度失敗し、バスターに切り替えて空振り三振。ただでくれてやったような１アウトだった。

ここで得点できなかったらおそらく最大の敗因となったであろう、チャンスでありながらピンチでもある場面。王監督が思いきって送り出した代打・福留（ここまで打率１割ちょっと）の一振りが全てを救った。ライトスタンドに飛び込む弾丸ライナーのホームラン。野球、特にリーグの試合は結構ダラダラと点の入る展開も多く、サッカーの１点の歓びにはかなわないと思ったりもするんだけど、さすがにこの２点は重みが違う。文字通り値千金の一撃、である。燃えたぜ。

福留の一発で解放された日本の選手たちは、別人になったかのように快打を連発。「いかにもキャッチャー」という風貌をした里崎がいかにもキャッチャーらしいスイング（笑）でタイムリー２塁打。アテネ五輪代表主将の宮本が三遊間を抜いて続き、イチローの美しいレフト前ヒットも併せて計５点。さらに８回には多村の本塁打でダメ押し。雨による中断で一旦水は差されたものの、中継ぎの藪田が無失点でしのぎ、９回は大塚が雄大なフォームからの快速球で３三振を奪う。苦しい戦いだったが、終わってみれば快勝の結果となった。

先発の上原はアテネ五輪を含めて過去に国際試合２０登板１１勝負けなしで、まさに「日本のエース」の呼び名が相応しい選手。松中はアトランタ・シドニー五輪に、福留はアトランタ・アテネ五輪に日の丸を付けて出場している。あの７回の場面、いくら相手が右の下手投げ投手とはいえ、福留の過去の経験が無ければ、王監督は今江に代えてまでスランプ中の彼を送り出しただろうか？この一戦だけをとってみても、過去の世界大会における日本代表の苦闘は決して無駄ではなかったのである。

加えて、大リーグから馳せ参じたイチローと大塚の存在感。特にイチローは間違いなく唯一無二の大黒柱で、彼がいることで日本チームはおろか大会全体の格が一段違うものになっているのでは、とさえ思う。そして、彼らをも包容して見事まとめた王監督の大きさよ。イチローが３安打目で試合を決した時の、王さんの優しい表情が忘れられない。ベストメンバーにはほど遠いのかもしれないが、彼らは堂々たる日本の代表である。

次はいよいよ決勝。相手はキューバか。今回の韓国ほどではないにせよ、過去幾度となく国際試合で煮え湯を飲まされてきた相手との対戦である。松坂君、今度は君の番だ。シドニーの、アテネの悔しさを晴らす絶好の舞台だ。