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2006年03月10日

●秩父宮を、守ろう。


昨日、どこの局だったか夜のテレビニュースで、「東京都のオリンピック招致計画の中に(あくまでオプションの1つではあるが)秩父宮ラグビー場を壊して跡地にメインスタジアムを建設する案が含まれている」、という報道を目にして愕然とした。東京五輪についてはまだ計画に不確定な部分も多く、何とも評価し難い(石原さんらしいな、という気はする)のだけれど、もし五輪用多目的スタジアム建設の代償として秩父宮が失われるというのであれば、その1点だけで僕はこの招致については断固として反対の立場をとりたい、と思う。

秩父宮ラグビー場は、「聖地」という呼び方が正しいかどうかはともかく、日本ラグビーにとって数々の栄光と想い出が詰まったスタジアムである。ジャパンの試合だけを思い出しても、イングランドと3-6の激闘を繰り広げたのも、スコットランドを撃破したのも、村田亙がカナダからロスタイムに逆転トライを奪ったのも、岩淵健輔がアルゼンチンをチンチンにやっつけたのも、そして数々の敗戦に涙したのも、みーんなみーんな秩父宮での出来事なのである。少なくとも、日本における最も重要なラグビー場である事は間違いない。


先日まで行われていた2011年ラグビーW杯招致活動にイマイチ賛同しきれなかったのも、当初日本ラグビー協会が作成したプランの中に、その大事な秩父宮ラグビー場が会場として含まれていなかったから。確かに設備等の面で基準に足りなかったのかもしれない。でも、その解決を図ることもなく、外向けのプレゼンテーションに一生懸命で自らのアイデンティティーにあまりこだわらない(ように見えた)招致関係者には歯がゆさを覚えたものだ。まあ、サッカーW杯で国立競技場が使用されなかったのにも同じ寂しさを感じたけれども。

おそらく、東京都の打ち出している「施設をできるだけ既存・仮設で済ますコンパクト五輪」というコンセプトは、右肩上がりの時代が終わった今、そうピントのずれたものではないはずだ。また、現在規格を満たすスタジアムがない以上、どこか既存の場所をリニューアルする必要はあるのだろう。しかし、だからといって、(メジャーとまでは言えずともそれなりの存在感を発揮してきた)ラグビーというスポーツの蓄積を台無しにしかねない案を持ち出すことはないだろう、と思う。どうしても作らねばならないのなら、それこそ従来から「多目的」であった国立競技場の改築で良いではないか。

「昔は良かった」的な想い出ばかりにひたるつもりはない。日本における未来のスポーツ環境の整備というテーマは、この国でスポーツの分野に関わる者全てにとって重要なことだと思っている。でも、やはりスポーツというものは、過去から現在、未来までが1つの連続性・関連性を持ってこそ、初めて「文化」として成り立ち、人々の暮らしの中に「なくてはならぬもの」として定着するのではなかろうか。これまで積み重ねられてきた歴史やその場の意義を軽視するような、東京五輪の無神経かつ唐突すぎるプランには、大いなる危惧を覚えるのである。


……と、まあ、カッとなって一気にまくしたててしまったが、冒頭にも書いたように、東京都の五輪招致計画にはまだまだ流動的な部分が多く、秩父宮の取り壊し案もどこまで現実味を帯びているのかはわからない。ただ、長野五輪とか、最近では神戸空港なんかもそうだが、大規模プロジェクトというのは一旦動き始めると止めたり軌道修正したりするのは大変に難しいものである。だからこそ、あえて行く先が見えない今、第1印象として抱いたものを思うままに書いてみた。

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コメント

そんな話があったのか。
そいつはちょっとオイラも賛同しかねるなあ。
改修ならともかく、スクラップ&ビルドはなぁ。
秩父宮もそうだし、神宮もなにかと思い入れがあるので、あのあたりはつぶさないでほしいねえ。

そうそう。改修して屋根と照明付けてくれるんなら、諸手を挙げちゃういい話なんだけどね。
秩父宮も神宮も、ラグビーファン・野球ファンの思い入れが詰まったところなのに、それが軽視されてしまうとすれば悲しいことだよ。
単純に国立を建て直せばいいじゃん、ねえ?…と思うのだが、スペースが足りないんだろうな、今の場所のままだと。

まったく同感ですね。

代々木公園に新国立競技場を作って、現国立にフットボールスタジアム建設の案もあったから、わくわくしてたんですけどね。
それなら諸手をあげて賛成だったんですけど。

>村田亙がカナダからロスタイムに逆転トライを奪ったのも

秩父宮って雰囲気が最高なんですよね。
あの時のスタジアムの一体感って他では醸し出せないものですよやっぱり。

戦後、ラグビーに飢えてたラガーが手弁当で建設したというような歴史的経緯から行っても死守すべきですね。
それが、出来ないようなら日本は文化をまったく理解していないと言われても仕方ないです。

いやホントにね、まさかそんなことはないだろうと思いつつも、万が一東京五輪のために秩父宮ラグビー場がなくなりでもしたら、全世界のラグビーマンにも大西鐵之祐先生をはじめ日本ラグビーの先人の方々にも申し訳がたたんですよ、申し訳が。

一時の盛り上がりのために、未来を質に入れちゃいけない。その事については長野五輪や宮城スタジアムで日本人はよく学んだはず。それと同様、いやもっと深刻な問題として、2週間のお祭りのために過去を売っぱらっちゃいかんのですよ。数十年の歴史と思い出があるものを。

>大西鐵之祐先生をはじめ日本ラグビーの先人の方々にも申し訳がたたんですよ、申し訳が。

まさにその通りですね。
この問題についてラグビー関係者から声は上がらないんですかね。

>一時の盛り上がりのために、未来を質に入れちゃいけない。

味スタだって、名目上は国体用として建設したわけだし、ものによるというのが私の考えですね。

>2週間のお祭りのために過去を売っぱらっちゃいかんのですよ。

こちらの方に共感です。大切にしなきゃいけない物ってのがあるんですよやっぱり。
そして、大切なものを理解できるって心がつまるところ文化だと思うわけです。

>大規模プロジェクトというのは一旦動き始めると止めたり軌道修正したりするのは大変に難しいものである。

ですね。特に錦の御旗と化してそのプロジェクト成功のためにはなにをしてもかまわないって雰囲気になりがちですね。
そこは注視しなければいけないと思います。

今泉清氏のブログでの告発が結局、なぁなぁになりましたね。
なんか現在のラグビー界らしいなぁ~って思ってしまいました。

まあ、要は方便も含めて、どうやって自分たちの、そしておそらく多くの人にとっても大事なものを守り、伝え、できれば広げていくか、という姿勢の問題だよね。

そこら辺、今の日本のラグビー界がちゃんと声を上げていけるのか、非常に心配。

今泉さんのブログの話も、結局何がどうなったんだか…。彼の告発のどこが間違っていて訂正・謝罪文を出さなきゃいけなかったのか、彼を呼び出した「協会上層部の方々」って誰のことなのか、わけがわからんす。

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