« 第9回文化庁メディア芸術祭 | メイン | 『街場の現代思想』 »

2006年02月26日

●FC東京×ヴァンフォーレ甲府(プレシーズンマッチ)


午後、味スタでプレシーズンマッチ。FC東京 2-1 ヴァンフォーレ甲府。ガーロ東京、3/5のリーグ初戦を前に最初のお披露目&本番前の一叩き。この時期らしく、期待と不安が相半ばするような試合となった。


メンバー発表。東京は、徳永・増嶋・前田・規郎のフレッシュな4バックに、中盤は伊野波が底に入って右に梶山・左に宮沢が構える。で、前線はルーカス・ササ・吉朗。これが今季の基本形になるのかどうかはまだわからないが、とりあえず4-3-3気味という感じか。甲府の方は、スタメンの変動はあれど、全体的にはビジュ・林の加入を除いては昨年とあまり変わらない印象である。藤田は怪我でもしてるのかな?

 
キックオフ後、まず快調に攻めたのは東京。中盤での慎重なパスワークからサイドへ展開、オーバーラップした徳永と規郎がガンガン仕掛けて行く。組み立て方としては、明らかに横パスが増えた。大雑把に言えば、昨年までが「タテタテヨコ」サッカーだとすれば、今日のは「ヨコヨコタテヨコ」サッカーか。単純に速く裏へ、だけでなく相手を寄せておいてその逆を突く、という形も作りたいのだろう、サイド展開からの速いサイドチェンジでSBやFWが抜けるシーンが何回かあった。

しかし、数回、特に徳永・梶山のところからは崩してよい形を作ったのだが、それをFW陣が決めきれない。特に右からのグラウンダーに吉朗が合わせたシュートと、同じく右からのクロスにファーでフリーになったルーカスが頭で合わせ損なった場面。どちらかは決めてほしかった。そうこうしているうちに、中盤のパス回しに早いチェックがかかるようになり、次第に甲府がペースをつかんでいく。

甲府はボールを奪うと後方から次々に選手が飛び出して行き、厚い攻撃を形成。メンツ的にも戦術的にも昨年のベースを変えていないため、動きの連動性が高く、セカンドボールの予測も良い。東京はSBは攻撃参加できなくなり、FWと中盤は分離気味。若いDF陣はカバー等に頑張ってはいるのだがボールを狩る力には欠け、甲府アタッカーにキープされてピンチが続く。

ただ、藤田の不在も影響しているのか、甲府はよくボールをつないでボックス付近まで攻め寄せても、そこからのパンチが今ひとつ足りない。バレーが速いモーションで増嶋のブロックを外した強シュートも、幸いバーに当たって外れてくれた。逆に東京の方も単発ながら個人技を生かしてチャンスを作るのだが、増嶋の攻撃参加から生まれた好機は梶山のシュートがGK正面。さらに徳永の狙いすましたシュートはゴールわずか左に外れ。前半はスコアレスで終了した。


後半立ち上がりは甲府の時間帯。前半から引き続き規郎の後ろを狙われまくり、クロスが何度かGKとDFの間を抜けてヒヤリとさせられた。東京は攻撃にかかっても、つなごうとして相手のプレッシャーを受けもたつくシーンが目につく。そして「前目でボールを動かすために憂太を入れるか梶山を上げるかしてほしいな…」と思い始めたところ、東京ベンチが動いて選手交代の準備。交代選手にガーロの指示が飛ぶ。だが、その途端に先制点が生まれたのだから面白い。

52分。左に流れたルーカスがボックス横から切れ込むドリブル、DF1人をかわして2人目の寸前で中へはたく。このパスをササが受け、正対したDFの脇を抜くシュート!ボールはGK阿部の横っ飛びも届かず、ワンバウンドしてゴール右隅へ吸い込まれていった。「シュートは思い切り撃たなくても入ります」というお手本のようなコントロールショット。お見事である。ルーカスとササが抱き合うシーンはいい光景だったなあ。

54分、ササ・宮沢・規郎に代えて憂太・今野・金沢を投入。これで左サイドは安定したが、憂太と今野は怪我明けだけに感覚が戻っていないのだろう、なかなか試合の流れに入っていけない様子だった。この2人の事だから「走らない」とかではないのだけれど(いや憂太はちょっと走ってなかったな(笑))、動きが味方と合わず戸惑っている印象。10分以上たってからだろうか?ようやく憂太が足下にボールを収めて鋭いパスを繰り出すようになり、今野がボールホルダーに当たる姿が目立ち始めて少しホッとした。

しかし、冷たい雨が降り続くコンディションも影響したのだろう、交代選手がせっかく機能し始めた頃には他の選手の動きが落ちてきた。甲府も攻勢の反動が出たか、フリーランニングは減り、試合はやや停滞。東京は吉朗に代えて赤嶺を、甲府も奈須・石原・堀井らフレッシュな選手を入れていく。で、75分、ゴールライン付近からの増嶋(?)のクリアが甲府アタッカーの正面に飛んでしまい、そこからつながれて、最後は倉貫のシュートがDFに当たってから右隅にゴールイン。自滅気味の失点だったので、このまま終わったらちょっとイヤな雰囲気になったかもしれない。


ここで頼れる男登場。失点の3分後、甲府防御網の隙間でパスを受けた憂太が前を向き、DFの間に走るルーカスへ絶妙のスルーパス。GK阿部が思いきり前へ飛び出すが、ルーカスが先にボールに触ってかわしかけたところで足下へ入ってしまい、PK。これをルーカスがしっかり決めて勝ち越し。憂太の一瞬の閃きとルーカスの尽きぬ運動量がもたらした1点だった。その後は甲府に反撃の余力なく、東京は追加点こそ奪えないもののボール支配で上回って時間を使う。結局、そのまま2-1で東京が勝利した。


ややギクシャクした試合だったが、とにかく勝つことができたのは良かった。ファンも新体制に対して半信半疑の時期、これからしっかり地に足をつけてチームを仕上げていくためにも、とりあえず白星を残せたのは幸いである。「しっかりパスをつないで攻撃を作る」事をベースとするやり方は従来の速攻重視のスタイルとは違うものだが、行き詰まりの感じられるようになっていたチームには相応しいチャレンジだろう。最終的な形はまだ見えないけれど、とにかく成功であれ失敗であれ、ガーロの方針である程度の「結果」を残すところまでは行ってほしい、と個人的には思っている。

不安な点。少なくとも今日の印象として、3トップはイマイチだ。去年とは違ってウインガーを置かずFW調の選手を並べた布陣だが…中盤の人数が足りなくなり、MFの3人から前にボールが進まない。今のメンツなら、後半の2トップ+トップ下の方がいいのではないか、と思った。あとは、DFラインの不安定さか。CBについてはジャーンと茂庭が帰ってくれば問題ないのかもしれんけど、規郎はちょっと…。守備自体も怖いし、左MFにタメれて後方もカバーできるような人材を起用しないと、上がれない規郎は意味がない。今野の復帰でマシになるのだろうか?


あと、気になったのは、試合の終盤、DFラインでボールをつないでいて甲府アタッカーがチェイスに来た場面、増嶋のバックパスにスタンドからブーイングが起こったこと。正直「はてな?」と意味がわからなかったというか、まあ「攻撃サッカー」に対する過剰な期待(勘違い)と、一部には増嶋に対する妙な悪感情もあるかな、とは思ったのだが、あれはいかんでしょあれは。味方の動きが少なくパスコースが見つけられない状況で、どうせ「蹴っとけ」になるのならば一度GKに戻してリスクを避けつつ選択肢を残す、という彼の選択は至極まっとうであった。同点で消極的になったとかならともかく、勝っていてもう時間もなかったのだから、試合を鎮めて終わらせようとするのはむしろ賞賛すべきプレーではないのか。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/535

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)