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2006年01月15日

●『生協の白石さん』

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『生協の白石さん』(講談社)読む。東京農工大学生協に設置されている、利用者の質問や意見を受け付けるための「ひとことカード」。切実な要望からおフザケの入った質問まで、学生たちから寄せられる様々な投稿に対する生協職員「白石さん」の軽妙な回答がネット上で話題となり(→blog版)、ついに単行本化されたもの。最近よくある「ネット発出版」であるが……。

いや~面白いわ白石さん!!飄々としたスマートな文体とか、気の利いた受け答えとか、表現の仕方は色々あるけれども、とにかく文章が何とも言えない「おかしみ」を帯びているのだ。下手くそなコメディアンみたいに無理矢理捻ってウケを狙うのではなく、文章の流れが作り出す雰囲気がとても可笑しい。そしておそらく、本人もノリノリで書いており(時々「あ、腹を立ててるな」という回答もあり)、それが伝わってくるから一層楽しいのだろう。

また、この人は「天然」を装っていないところもいい。「ちゃかし」も含めた相手の意図を正面から受けとめ、自分なりの意図を込めて、しかし生協職員としての分はわきまえて返す。適度な抑制が効いていて、しかし人間味はしっかり入っているという。こういうのを本当のユーモアというのだ。「ひとことカード」だけでなく、単行本化にあたって書き下ろされたエッセイもまた「おかしみ」があって面白い(そしてちゃんと大学と生協に気を遣っている)のにも感心した。やるなあ。

さらに言えば、何よりも読者を幸せにしてくれるのは、こんなにも聡明な人が、実は「普通の、いち生協職員」である、という事実だろう。世の中、どこに幸せの種や素晴らしい断片が隠れているかわからないのである。いささか大げさに書くならば、ネットや本で白石さんの聡明な回答を目にするたび、僕たちは世界の豊かさの一部を再認識しているのかもしれない。……なんて感想を目にしたら、白石さんはまた恐縮しちゃうのかもしれないけど(笑)。

ホント、今後もできるだけ長く、学生との愉快な言葉のキャッチボールを続けてほしいものだと思う。がんばって。


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