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2006年01月10日

●第84回全国高校サッカー選手権決勝

日本テレビの録画で、1日遅れの全国高校サッカー決勝。鹿児島実業 1-2 野洲。滋賀の新星・野洲が持ち味の「技術を前面に出した、見応えのある攻撃プレー」を発揮、前年王者に競り勝って見事初優勝。従来の強豪タイプとは毛色の違うサッカーに、実況・解説も思わずため息。確かに高校サッカーに新しい風が吹き込んだようだ。
 
正直なところ、試合前は「鹿実が勝つのだろう」と思っていた。選手権屈指の常連校であることに加え、準決勝の内容が非常に強さを感じさせるものだったからである。やや粗いが剛性を感じさせる攻撃と、自陣のスペースをギュッと狭めてつぶす守備。遠野にほとんど何もさせず3-0の快勝。おまけに連続9試合無失点。多々良に勝った野洲も確かに面白い存在だとは思えたが、さすがに決勝では鹿実が勝るのではないか、と。

ところがこの結果である。全く異質のやり方ながら、鹿実と110分堂々と渡りあった野洲には驚かされた。想像以上の「しなやかな強靱さ」を持ったチームだった。テクニックと、アイデアと、そして判断を重視したサッカー。それをベースに選手たちが備えたふてぶてしいまでの自信。先制点の後しばらくは、あの鹿実の選手たちが怯んでいるようにさえ見えた。そして延長の決勝点。大きく細かくボールと人が動いて動いて…他のどの高校にも真似できそうにないゴール。大したものだ。

ただ、野洲に対する「セクシー」「最高のサッカー」という賛辞がメディアやネットで飛び交いまくっているのを見ると、へそ曲がりの僕としては「ちょっと待て」とも言いたくなる。確かに野洲は素晴らしかった。自分のスタイルを貫いての優勝は他校のお手本となり得るものだし、快挙には違いない。でも、逆に今度は、優勝校と完全に別路線ではあったけれども、鹿実のサッカーだって決して捨てたものではない、と思うのだ。

僕の好みのせいかもしれないが、鹿実の質実剛健な戦術やシュートに積極的な姿勢、ひたむきなチェイスは決して魅力のないものではなかった。エース栫の欠場にも関わらず、よく健闘したと思う。特に後半34分の同点ゴールは、左右からの揺さぶりに正確なクロス、思い切りのいいオーバーヘッドとヘディングが連鎖したもの。攻めて攻めて壁を破った、興奮度の高い得点だった。まあ、その失点の後すぐに切り替えて反転攻勢に出た姿を見れば、やはり野洲の方が一枚上手だったのだな、とも思うのだが。
 
思うに、独自の方法論で頂点をつかんだ野洲が賞賛されるのは当然として、それは別に野洲のサッカーが正しくて他が間違っている事を意味するのではない。野洲の歴史に残る功績は、「有効な別のやり方」を示す事によって高校サッカー界の多様性の幅、ひいては日本サッカーの可能性を広げてくれたことだろう。そういう意味では、鹿実・松澤総監督の、「色々なスタイルがあるところがサッカーの面白さ」「野洲と当たったことで、この負けがわれわれの今後の指導に大きなプラスになる。常にチャレンジしていかなければ」というコメントは嬉しかった。その通りだよな。

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