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2005年10月06日

●『F.A.37 ゼロの焦慮』

JSPORTSの録画で『F.A.37 ゼロの焦慮』観る。今回の題材は、J1第24節横浜Fマリノス×FC東京@日産スタジアム。毎回、明確な演出意図の下に高い完成度を誇るこのシリーズだが、今度ばかりは完全に制作者の意図を越えた方向へ。ルーカスを襲った突然のアクシデント。そして、皮肉(幸運?)な事に、それゆえに忘れがたい作品となっている。

番組の頭から中盤にかけては、試合前と試合中、岡田・原両監督のコメントを中心に、ともに芳しくないチーム状態の中で懸命に勝点を獲得しようとする様子が描かれる。岡田監督が低迷の原因を試合数過多による調整不足に求め、ある意味開き直って「できることをする」姿勢に徹しているのに対し、原監督は不調の原因が見えづらい中で「原点に立ち戻る」事にこだわりを見せる。ともに苦しく悩ましい状況に置かれながら、あくまで「らしい」振る舞いで打開しようとするあたり、プロの監督の矜持を見た気がする。

しかし、新兵器(マグロン、ササ)も投入しつつ奮闘する両チームだが、ともに譲らず、あるいはともに押し切れない。両監督の作戦も、選手たちの判断も、「負けない」事に関しては思惑通りでありながら、「点を取って勝つ」という事については成功しきれず、時間はジリジリと進んでいく。なるほど、結果の出ない両チームの今季を象徴するような試合であったし、「ゼロの焦慮」とは雰囲気にぴったりのサブタイトルであった。さすが『F.A.』。そのまま終了していれば、いつも通り静かで深い余韻を味わうことになったのだろう。ところが。

番組の終盤「scene.5 不測の結末」と題された部分だけは、同じ試合の中でありつつも、それまでとは全く異質の(違うテーマの)記録となっていた。石川の負傷、そしてジャーンとの衝突によるルーカスの負傷と搬送、穴沢主審の英断による試合の打ち切り。試合中にチームメイトを亡くした経験のあるマグロンのコメントが流れ、ルーカスの周りに心配する人々の輪ができ、やがてスタッフが走り回る中救急車で搬出される様子が映し出される。あの時の、場内のただならぬ雰囲気、動かぬルーカスの足を見て胸が締めつけられた記憶が甦った。

試合後のインタビューでは、もちろんルーカスの回復を祈る言葉が並ぶ。ショックをにじませながらも気丈に話す原監督、声を詰まらせながら誠実に語る岡田監督、そしてルーカスのみならずジャーンをも気遣う中澤佑二。「同じサッカー仲間」という岡田監督の言葉は、とても素朴だけれど僕たちの胸にしっかり届くものであったと思う。アクシデントの結果、この番組は、語りの一貫性は失ったのかもしれない。でも、人の感情を伝え、人の共感を呼び、人を感動させるものとなっているのも確かだ。これぞまさにドキュメンタリー、ということか。

そして、とにかく、大事に至らなくて本当に良かったと、改めて思った…。

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コメント

10/1大宮戦の録画予約しようと朝JS1にチャンネルを合わせたらこれやっていてそのまま見入る。まだ2週間しかたってないのに最後の衝撃のお陰で試合内容は全然覚えてなかったのでいい復習になった。ルーカス事件のあとの混乱もよくまとまっていてFA good job!穴沢さんの生声が聞けたのも収穫。さいたま行くと元気なルーカスが観れて涙。

>最後の衝撃のお陰で試合内容は全然覚えてなかったので
そうなんですよねー。あの試合は東京の中盤の出来が悪くなくって、戸田の惜しいループシュートとか見所もあったんですけど、最後のアクシデントで全部吹っ飛びましたからね。

>穴沢さんの生声が聞けたのも収穫
落ち着いた感じの声でしたね。なんか信頼できそうだな、と思いました。
ついこないだまでは「アナザーワールド」とか言ってたような気もしますが(笑)。

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