●このモヤモヤ、どうしてくれようか(FC東京×川崎フロンターレ)
皆さま、お久しぶりです。この数ヶ月間サッカーもラグビーも色々な動きがあったんですが、仕事の方がテンパっていて正直それどころではなかったのと、あと東京についてはいささかモヤモヤしておりまして(笑)。ともあれ4ヶ月ぶりの更新です。ただ、まあ、次がいつになるかはわかりませんが……。
FC東京 2−4 川崎フロンターレ (J1第7節 味の素スタジアム)
昨日は味の素スタジアムで第27回多摩川クラシコを観戦。3勝3敗と今季ここまで五分の星の東京にとっては無敗の首位・川崎をホームに迎え撃つ重要な一戦だったが、前半の優勢と2度に渡るリードを活かしきれずにあえなく逆転負けを喫してしまった。
序盤優勢に試合を進めたのは東京だった。積極的にボールへアタックする守備からDFライン裏目掛けて早く速く縦パスを送り、チャンスを作る。対する川崎は中村憲剛を中心に後方から丁寧にパスを回して組み立てようとするが、大島欠場の影響もあるのかややぎこちなさが目立つ。4分、田邉の果敢な競りかけからこぼれ球を拾ったバーンズがDFの背後に一気に抜け、ゴール左にシュートを決めて先制。1-0。
しかし東京はこの「もうけもの」のリードを活かせない。11分、DFの位置まで下がった憲剛が前線の大久保に絶妙のロングパス。巧みに小川をブロックしながら抜けた大久保は、目の覚めるようなボレーシュートを左隅に突き刺してあっさりと追いつく。1-1。その後は東京が再びペースを握り、バーンズが2度、阿部が1度シュートチャンスを迎えるが、いずれも枠をとらえられず。同点でハーフタイムへ。
後半に入り、先に決定機をつかんだのは川崎だった。50分、中盤のパスカットから素早く前線に展開し、森谷の折り返しを叩いた大久保のミドルシュートがバーを叩く。さらに54分、ロングボールに対して秋元と丸山がお見合いになったところを小林がかっさらい、あとは無人のゴールへ流し込む……という場面になったが幸いトラップミスで難を逃れた。頭を抱える小林悠。東京にとっては何という幸運(笑)。
ピンチの後にはチャンスあり。流れは再び東京に。56分、東京はボックス左のFKを獲得。小川が鋭く低い弾道のクロスを送ると、間一髪の差で飛び出した前田が鮮やかにゲット。2-1。さらに東京は畳みかけ、ゴール前での決定機を連続して作るが……これを決められない。一方の川崎はサイドに新しい選手を入れながら憲剛やエウシーニョを前に出して反撃を図る。東京は橋本と平山を投入して逃げ切り体制へ。
77分、右サイドでノッキングしたかに見えたエウシーニョが股抜きのパスを通し、ゴール前で粘った大久保を米本が倒してしまいPK。これを大久保が中央に決めてまたも同点。2-2。粘りきれんのう、という感じである。東京はすかさずムリキを投入して勝ち越しを狙うが、逆に81分、エウシーニョが右→左へ斜めのスルーパスを通し、小林が追いすがる徳永を振り切ってゴール上に難しいシュートを決めた。2-3。
追い込まれた東京はバランスを崩して前がかりになろうとするが、ボールを欲しがるムリキが下がってしまうなどチグハグさが目立ち、左サイドから作った決定機もムリキが外してしまう。そして追加タイム、中盤から突如加速した憲剛がドリブルで右サイドをえぐり、ピンポイントクロスを逆サイドのエウシーニョに合わせてジ・エンド。2-4で試合終了となってしまった。
一言で言って「もったいない」という試合だった。
前半は狙い通りの展開だったのだろう。積極的な守備で川崎のパス回しを封じ込め、前田の高さとバーンズの快足を生かすシンプルで速い攻撃が機能し、開始早々の先制点。その後もチャンスは明らかに東京の方が多かった。また、攻め合いとなった後半も、川崎が先につかんだ決定機をものにできず直後に東京がセットプレーで勝ち越しという相手にとってダメージの大きい展開に持ち込むことができた。
でも、この日の東京はそうした運や流れを活かすことができなかった。特に2-1としてからの数分間は押せ押せの状況で、あそこで1本でも決まっていたら勝敗は逆になっていただろう。川崎の個人技は確かに見事だったにせよ、それが発揮される前に自分たちで試合を決めるチャンスも十分にあったのだ。そういう意味で実にもったいなかったと思う。見方を変えれば川崎がよく粘ったということだが。
つーか、中村憲剛や大久保嘉人、前田遼一といった「Jリーグの生んだ傑作」たちの妙技を堪能できて、かつ大笑いの大逸機も含む撃ち合いで合計6点も入った試合。単純にいちサッカーファンの目線で見たらこの上なく面白い展開だったんだけど、やっぱりやられ役は楽しくないなあ、という(笑)。
しかしそれにしても憲剛と大久保は凄かった。大久保の1点目のスーパーボレーシュートも見事だったが、憲剛は本当に金を払って観る価値のある選手というか、ベテランの域になってますます凄みが増しているな、と。最初のバックスピンをかけたロングパスや、後半ロスタイムのあのドリブルとどんぴしゃのクロス。思い切りの良い判断とピンポイントの技術が極みに達していて、国宝級のプレーだと思った。
東京の方も、ハ・デソンはコンディションが上がってきたようで、フィードだけでなくゴール近くでの細かいプレーでも良さが出始めた様子。彼が万全になれば攻撃はもっとずっとテンポや確率が上がってくるはず。前田やバーンズも持ち味を出してきっちり仕事をしてくれたと思う。残念だったのは、交代選手があまり良さを出せなかったことだろうか。中島翔哉はオプションとして入れておくべきだと思うがなあ。
交代といえば、城福監督が試合の流れや状況を観ながら随時「手当て」をするように選手を投入していったのに対して、風間監督は一貫して中村憲剛やエウシーニョら要の選手がよりプレーしやすくなるような意図を持って交代枠を使っているように見えたのは面白かった。結果的に今回ハマったのはフロンターレの方だったけど、あれはピッチ内に状況判断に長けたリーダーがいるせいもあるのだろうか。
いずれにせよ、これで8勝7分12敗とまた少し川崎には差をつけられてしまった格好である。先にリーグ優勝されたらちょっと嫌だな、というのもあるし、せめて直接対決は互角には戦っておきたいよなあ、と思う。次頑張ろう。
なお、この試合は熊本において発生した震災の直後に行われたため、東京のベンチ外の選手たち(東に高橋秀人、中島翔哉ら豪華なメンツ)による義援金募集とキックオフ前の黙祷が行われた。災害の時には普通の生活の中でサッカーのような楽しみを享受できることの幸せさを痛感するし、被災地以外では日常生活を守るべきだけど、「忘れてないよ」と何らかの形で示すのもとても大事なことだと思う。
[付記]
今シーズン最初の観戦記なので、ついでに冒頭に触れた「東京についてのモヤモヤ」の事も書いておこうか。
今日も観ながら感じていたのだけれど、やっぱり監督交代の一件は少なくとも僕個人としては尾を引いてるな、と。クラブ史上最高の成績を残した監督を2年で退任させ、数年前にカップ戦のタイトルはとったけれども2部降格の流れも作ってしまった監督を出戻りさせる。「なんでなんだよ」という思いは昨季の最終戦から5ヶ月、今季の開幕から1ヶ月半がたった今でも心のどこかに引っかかっているのだ。
原さんが出戻りした2007年もそうだったけど、僕は人間ができていないのでこうなってしまうと心の底から楽しむのは難しい。勝てば嬉しいけどでもどこかで「これでいいのか?」と思ってしまうし、負けたら残念だけど「まあそうだよな」とそれほど悔しがれなかったりする。
これはもちろん城福さんにとっては非常にアンフェアな話だ。前回東京の監督をやった時の2年目までや甲府における成績と内容を見ればわかるように、本来とても優秀な監督なのは間違いない。特に割と限られた戦力で結果のみを追求した時には非常に冴え渡るタイプの指揮官だと思うし、今シーズンの東京の戦いぶりもそうそうひどいものではない(名古屋戦で先方の監督と比べた時は特にそう思った)。
でも、だからこそ、監督交代の経緯が引っかかってしまうのは残念なんだよなあ。何とかならんもんかな、これ(笑)。
まあ、城福さん自身は、おそらくそこら辺も覚悟の上で監督を引き受けたのだろう。前回東京を率いた時にはそれこそ志も大義も、最初の頃はモメンタムもあった。それが途中解任という事態になってしまってさぞかし悔しかったに違いない。そこは僕としてもとても共感を覚えるところだ。だから、頑張ってグダグダ物申す僕たちに目にものを見せてほしいんだけどね。獲りうるタイトルはたくさんあるわけだし。
城福東京の多摩川クラシコといえば、やはり思い出すのは2008年のホームゲームだ(もう8年前か!)。あんときゃ向こうにジュニーニョやテセがいて、こっちは赤嶺とカボレの2トップで、撃ち合いの末に大竹のスーパーループとラブリーな今野のゴールで4-2だったんだよね。ちょうど今回と逆(笑)。あの時に戻りたい、とは言わないけど、今度は「最初はモヤモヤだったけど、2年後には笑えたよ」となってほしいものだ。
いやホントに。
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