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2015年11月01日

●最強オールブラックス連覇(ニュージーランド代表×オーストラリア代表)


ニュージーランド代表 34−17 オーストラリア代表 (ラグビーワールドカップ2015 決勝)

1ヶ月半に渡って熱戦が繰り広げられてきたラグビーW杯もいよいよ大詰め、決勝戦である。史上2回目の南半球同士の対決、世界ランク1位と2位とのまさに頂上決戦は、王者NZオールブラックスが無類の完成度と強さを見せ、宿敵ワラビーズに快勝。3度目の優勝、そして史上初の連覇を達成した。


試合は、序盤から引き締まった攻防が延々と続く展開となった。攻勢に出たのはNZ。持ち前の正確無比なパス展開と個々人の強靭さが一体となったアタックが次々と襲い掛かる。しかしワラビーズもじりじり後退しつつも粘り腰のタックルで破綻はせず、一方豪州の攻撃に対してはオールブラックスの水も漏らさぬDFラインがほとんど前進を許さない。なかなか得点の入らない時間帯が続いた。

そんな展開でものを言うのはキックの正確さ。NZのSOダン・カーターは完璧な出来を披露し、8分、27分、36分とPGを刻んでいく。豪州はSOフォーリーが1本決めて9-3。そして39分、NZは一段ギアを上げたかのように速く細かいパスをたて続けに通して豪州のDFを翻弄し、最後はSHスミス→FLマコウ→WTBミルナースカッダーと電光石火のパスをつないでトライ。16-3とリードを広げて前半終了となった。

後半、「攻め抜く」という覚悟の表れなのか、NZは冒頭から切り札のCTBソニービル・ウィリアムズを投入。この交代はいきなり奏功し、42分、3人がかりのタックルを受けたウィリアムズのオフロードパスでCTBノヌーがDFの隙間を抜け、ノヌーはそのままDFの追撃をかわしながら豪快に走りきってトライ。カーターが珍しくコンバージョンを失敗したものの、21-3とリードは2トライ差以上に。

ところが。そのままで終わらないのがW杯である。52分、豪州がカウンターからタッチ際を攻め上がった場面でFBスミスが危険なタックルの反則をとられてシンビン。ここで豪州はさすがの集中力を見せ、モールを押し切ってまず1トライ。21-10。続いて64分、DF裏へのパントをフォーリーが巧みに確保して、CTBクンニドラキが走りきりトライ。21-17。あっという間に4点差、NZにしてみれば思わぬピンチであった。

だがここで、主将のマコウと共に長年チームを支えてきたSOカーターがNZを救う。なおも豪州の攻勢が続く70分、40m超の難しいドロップゴールを決めて24-17。続く75分には50m近くのロングPGを決めて10点差にリードを広げる。その合間にもカーターはビッグタックルを連発し、1人で試合の流れを変えた感さえあった。豪州は前がかりになるも、ブレイクダウンやスクラムの劣勢で思うようにチャンスを作れない。

そして79分、NZはスミスのグラバーキックに反応して飛び出したFBバレットが見事なドリブルから独走トライを決め、今度こそ勝負あり。34-17。そのまま試合が終了してNZの優勝が決定した。


アクシデントによる窮地はあったとはいえ、全体的にはオールブラックスの飛び抜けた強さが目立つ決勝戦だった。

今回のNZはとにかく戦力的なバランスが良く、FWもBKも参加国中最強、適度にベテラン多めのメンバーで精神的な安定感もあった。加えて戦術的にもよくまとまっているチームだったのだから、優勝は順当なところだろう。というか、後半途中までの強さを見たら「これで勝てなかったらそれはそれで気の毒(あるいは不当)だな」と思ったくらいなので、シンビンで自滅する形にならなくてよかったな、と。

まあ、オールブラックスはサッカーにおけるブラジルと一緒で常に優勝候補の筆頭に挙げられるチームなので、8大会中3回の優勝というのは全然不思議じゃないし、むしろそれだけしか勝ててないのがW杯の難しさとも言えるだろう。今回は前回の戦力そのままに、マコウやカーターを中心にさらに円熟味が加わった感じで本当に強かった。ただし、今後はピークを越えたチームの困難さに直面することになるのだろう。

決勝戦のMOMはもちろんダン・カーター。試合前の会見で4年前の決勝に出られなかった悔しさを淡々と語る姿が印象的だったので、本当に良かった。あの勝負所で難しいキックを決める精神的な強さと落ち着きはベテランならでは。また、彼と並ぶ大黒柱のマコウも圧倒的な仕事ぶりで、ブレイクダウンにおける優勢をもたらしていた。2人とも世代交代を考えればそろそろ引き際なんだろうが、まだまだ出来そうだよね。

オーストラリアは、こちらはこちらでNZほどのソリッドさはない代わりにBKに創造性があって、魅力的なチームだったと思う。ただ、この試合に関してはFWの劣勢でBKの展開力を活かしきれなかったのと、CTBギタウが負傷退場してしまったのが大きかった。豪州もギタウにミッチェル、アシュリークーパーといったベテラン勢が抜けた後でどうチームを作っていくか。これから変動期に入るのかな。


ということで、これで今回のラグビーワールドカップは終了。ニュージーランドの優勝は順当として、大会前に予想されていたよりも北半球が勝ち進めず、結果的に大会の盛り上がりとしてどうなったのかが気になるところ。まあ、とはいえ今大会は接戦が多く、優勝・準優勝チームが世代交代期に差し掛かっていることを考えると、2019年はガラリと勢力図が変わっていてもおかしくないようにも思える。

そう、4年後はいよいよ日本大会である。次はどんな国が活躍してどんなドラマが繰り広げられるのか、それまでの世界のラグビー界でどのような事が起こっていくのか。そしてジャパンはその中でどのような役割を果たしていくのか。楽しみにしつつ、また新たな気持ちでラグビー観戦生活を送っていきたいと思う。お疲れさまでした。


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