●これぞワールドカップ後のトップリーグ! (東芝×パナソニック)
昨日は、秩父宮ラグビー場でラグビートップリーグ第5節を観戦。東芝ブレイブルーパス 17-17 パナソニック ワイルドナイツ。既に黒星がついて上位進出のためには後のない東芝と、開幕から順調に連勝街道を歩む王者パナソニックの対決。リーグ戦序盤の大一番は、万力で潰し合うような壮絶な防御戦の末に恨みっこなしの同点決着となった。
この日は晴天に恵まれ、寒さもさほどではない絶好の観戦コンディション(前日の雨でピッチはぬかるみ気味だったようだが)。秩父宮には2万を超える大観衆が詰めかけた。開幕直後にはW杯後の急激な注目度の高まりにラグビー協会が対応できず、「チケット完売なのに空席」という状況が話題になっていたが、ようやくというかやっとというか、ほぼ満員のスタンドが実現できた。協会もさぞかしホッとしたことだろう。
試合は、序盤から挑戦者の東芝が攻める展開。FLリーチやCTBカフィを軸にパワフルな突進で押し込んでいく。が、先制したのはパナソニック。4分、自陣ゴール前のターンオーバーからWTB北川が快走し、CTB林のキックパスを逆サイドのWTB児玉が収めて一気に走りきった。いかにもパナらしい鮮やかなカウンターに大観衆がどっと沸く。0-7。その後も鋭い逆襲を見せるワイルドナイツが主導権を握るかに思えた。
しかし、この日のパナはラインアウトに安定感を欠き、次の得点をなかなか奪えない。すると東芝はPGで差を詰めた後の26分、ラインアウトから怒涛のモールで押し切ってFL山本が右中間にトライし、10-7と逆転。勢いに乗る東芝はさらに攻勢に出て差を広げにかかる。ところが、パナは幾度も食い込まれながらも粘りの守備で追加点を許さない。逆に終了間際、バーンズのPGで追いついてハーフタイムへ。
後半も守備合戦は続き、東芝が攻めればパナソニックがターンオーバーからバーンズのキックで押し戻し、パナが攻めるとリーチが密集の球際で無類の強さを見せて取り返す。均衡が破れたのは61分。今度はパナががっちり組んだモールを一気に押し切って認定トライを奪い、さらにHO湯原が故意の反則でシンビン。10-17。「やっぱりパナソニックか」という雰囲気になりかけたのだが……。
このピンチ、東芝は素晴らしい集中力で幾度かあったピンチをしのぎきり、同数に戻った70分からは逆にスクラムやモールでプレッシャーをかけていく。ハイライトは75分頃からのパナゴール前スクラムの場面。2度反則をとられ、「次は認定トライか」というところでパナは川俣投入で何とか堪えきる。が、あきらめない東芝はそこから展開して波状攻撃をかけ、最後はまたも山本がギリギリ飛び込んでトライ!17-17。
その後はインジャリータイムに入っても両チームが攻め続け、スタンドが大いに沸いた。が、ともに決勝点は奪えず、同点のままフルタイムの笛。結局勝点2を分け合う結果となった。
いやー、熱い試合だった。「これでこそワールドカップ後のトップリーグだ!」と言いたくなる濃密な戦いだった。
東芝にしてみれば、新興勢力のNTTコムに敗れ、まだサントリー戦も控えている状況。追い詰められた中で本来のDNAが覚醒したか、久々にブレイブルーパスらしい気迫と強靭さに満ちた戦いぶりだった。特にFLリーチとSO廣瀬は素晴らしく、前者は密集や突進で好プレーを連発して1人で差を作り出し、後者も落ち着いた判断で難しいゲームをよくさばいて貴重な勝点2をもたらした。さすがとしか言いようがない。
パナソニックの方も、満足の行く結果ではないかもしれないが力は見せてくれた。「攻めながらなかなか点が取れない」のはワイルドナイツの数少ない負けパターン。途中ラインアウトを連続して失敗した時は「悪い流れだな」と思ったものだが、それでもあと一歩で勝ち切るところまで行ったのだからやはり強いチームだ。終了間際、バーンズが狙ったDGが決まっていれば最高に格好良かったんだけどね。惜しかった。
ともあれ、ここ数年は差がついてしまった印象のあった両チームだけれど、東芝もサントリーとともに関東のラグビー界を盛り上げてきた名門チーム。今回の「逆襲」によって今後が楽しみになったのは間違いない。つか、僕らの世代にとっては冨岡「キャプテン」率いる東芝はやはり頑張ってほしいのである。
しかし、三上に湯原、大野、リーチ、廣瀬、カフィ、ステイン、稲垣、堀江、ホラニ、田中、バーンズ、そしてピーターセン……。南ア代表だの豪州代表だのもちろん日本代表だのが(「元」を含めれば)ぞろぞろいて、それこそW杯経験者で1チーム作れてしまう豪華メンバーでもあった。これだけの面子がW杯直後というのに熱気のこもった戦いを見せてくれるのだから、そりゃファンとしてはたまらんよな。眼福というか。
もちろん、スタンドが2万の観衆で埋まったのも嬉しかった。ビッグゲインやトライの時の「やったー!」という歓声やスクラムやモールが動いた時の「うおお!」というどよめき、そしてそれらと対照的なプレースキック時の静けさ。当たり前だけど、客が多い方が雰囲気はずっといいんだよね。サッカーみたいな楽しいチャント(や時には殺気立った雰囲気)もいいけれど、ラグビーのメリハリついた大歓声も最高に素晴らしい。
いずれにせよ、トップリーグはこういう試合をもっと増やしていかないと。それが新たなファン・サポーターを増やし、その人々が既存のフォロワーとともに2019年やその先へ向かっていく。そのイメージをこそ僕たちはしっかり持たねばならんのだとつくづく思うのだ。それこそ、五郎丸のように。
あ、あと書き忘れちゃいけないことが1つあった。この試合では「ウルトラファミリーデー」と題して円谷プロとのコラボレーションが行われたのである。試合前には選手たちはコスプレ姿で紹介され、ウルトラマンX(っていうのか今のヤツは)や怪獣と一緒に入場。試合中も得点のたびに大型ビジョンにウルトラマンの姿が現れ、ハーフタイムや試合後の見送りでもゾロゾロとウルトラ軍団が現れたのであった。
いやー、いいよね、こういう企画。個人的(というか僕の世代的)には昨年度の初代ウルトラマンバージョンの方がストライクな感じだった(田中とか科特隊の制服似合いすぎだったし)けど、今年もそれなりに笑えたというか、バーンズやピーターセンにこんな事させててホントにいいんだろうか、というか(笑)。こういうおバカな企画は(失礼にならん程度に)とにかくどんどんやってほしいと思う。
いいぞ、俺たちのトップリーグ!!
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