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2015年09月24日

●本当の勝負はここからだ (日本代表×スコットランド代表)


日本代表 10−45 スコットランド代表 (ラグビーワールドカップ2015 プールB第2戦)

初戦で南アフリカ代表を破り、「ラグビー史上最大の番狂わせ」とも言われる金星を挙げた日本代表。続く第2戦は多くのファンや関係者が「ここがターゲット」と睨んでいたスコットランドとの一戦だったが、途中まで互角に渡り合いながら、後半一気にたたみかけられて35点差の完敗となってしまった。


悔しい敗戦だった。

序盤から、日本は4日前に比べてイマイチの出来。攻守ともに陣形を整えるのが遅れがちで、ミスや反則が頻発(最初の10分で南ア戦を上回るハンドリングエラーを記録した)。対するスコットランドは予想通り次々にハイパントを上げて日本のさらなるミスを誘いつつ、SHレイドローが淡々とPGを重ねていく。さらには焦りからか松島が反則でシンビンをくらい、日本は南ア戦に引き続いて耐える展開となった。

それでも、地力の上がったジャパンは苦しい前半を持ちこたえた。15分には五郎丸の好タッチキックから一気呵成のモール攻撃でトライし、一旦は逆転。数的不利の時間帯も得点こそできなかったものの相手陣で粘ってスコアを許さず、終了間際には自陣ゴール前ギリギリの攻防をFWの粘りと五郎丸の素晴らしいカバーディフェンスで防ぎきった。南ア戦の後半の出来からすれば勝機はあるように思えたのだが……。

ところが、後半に入っても日本はペースを引き寄せられない。立ち上がりこそマフィらの怒涛のラッシュで押し込んでPGで10-12と迫ったが、直後に頼みのマフィが負傷退場。その後は選手交代を次々にくり出しながら、スコットランドの粘り強いDFをなかなか破れない。逆にスコットランドは「後半にやや弱い」との下馬評(思い込みだったのか?)もなんのその、BK陣が一段スピードアップしてパス展開。

48分、ゴール前の攻防からFLハーディが松島のタックルを跳ね飛ばしてトライ。56分、南ア戦で日本が見せたような見事なムーヴからFBホッグが快走し、最後はCTBベネットがトライ。これで14点差。ここが踏ん張り所であった。そして64分にジャパンは近場の攻めでゲインを切りながら攻め込んで大外へ展開、一気にトライを狙ったのだが……WTBシーモアにインターセプトからの独走トライを許し、万事休す。

その後は日本が意地の一発を狙って攻め込むもスコットランドの壁は崩れず。逆にスコットランドのBKが鋭いランで日本の防御の乱れを突いて2トライを追加し、ボーナスポイントも獲得。最後の日本の攻めもインゴールノックオンとなってしまいフルタイムの笛が鳴った。最終スコアは10-45。後半初めまでの健闘の印象は残しつつも、結果的にはトライ数で1-5の完敗となってしまった。


これまでスコットランドとはW杯で2度戦って第2回大会では9-47、第5回大会では11-32だったわけだけど、いずれも「前半健闘、後半完敗」だった。今回もそのパターンにはまってしまったと言えなくもないのだが……。「さあ後半勝負だ」と盛り上がった期待との落差は、1999年のサモア戦を思い出す。

やはり南ア戦のダメージは大きかったのだろう。終盤の失速はもちろん、前半の時点でも攻撃の形が整えきれなかったし、守っても少しずつ食い込まれる場面が多かった。マフィの奮闘は目立っていたが、焦って空回りしているようにも見えた。ゴール前のラックをマフィが強引に乗り越えようとして防がれた場面も含め、もう少しステディに得点して欲しかったけど、その余裕もなかったということだろうか。

勝因の裏返しは敗因、とは限らない。けれど、この日の日本は南ア戦で良かった部分がことごとく上手く行っていないように見えた。防御の緩さ、ミスの多さ、コンディションの悪さ、得点機会でのプレー選択のちぐはぐさ……。まあ、毎回ベストゲームというわけにはいかないし、スコットランドも相当にこちらを研究してきたとはいえ、大会前は南ア戦よりチャンスが大きいと思っていただけに残念ではあった。

あと、もう一つ、日本本来のパス攻撃で勝負し切れなかったのも残念だった。特に福岡が走る場面をほとんど作れなかったのは悔いが残る。ベテラン中心のスプリングボグスが後半めっきり疲弊したのに比べるとスコットランドは最後まで元気だったし、日本のパス攻撃を警戒して浅いDFラインを敷いていたから同じように行かないのは仕方ないとしても、逆に華麗なパス回しを見せつけられたのは悔しすぎる。

一方のスコットランドは前半こそミスが散見されたものの、ゲームが進むにつれて調子を上げていったように見えた。風向きも味方したのかもしれないが、それにしても後半のシャープなパス攻撃は見事だった。日本はベンチにFWを6人入れていたようにキックと密集勝負を予想していて、前半はその通りの展開だったものの、後半のスコットランドのギアチェンジには全くついて行けなかった。やはり完敗である。

つーか、スコットランドは圧倒的なパワフルさはないものの、ディテールにおいては南アフリカよりも粘り強さがあるように思えた。そこら辺はさすが本気の北半球の強豪(旧5カ国対抗参加国)というか。宿澤監督率いるジャパンが秩父宮でスコットランド代表に歴史的な勝利を挙げながら、本番の1991年大会ではマレーフィールドで目の色を変えた同代表に叩き伏せられたのを思い出した。

スコットランドのキャプテン、SHレイドローは非常にいい選手。PGの正確性もさることながら、味方や審判への働きかけなどのキャプテンシー、そしてマフィのアタックをゴールライン上で防ぎきるなど体の張り具合もお見事だった。おまけにイケメンで……うちのカミさんが「顔で負けてプレーでもやられると腹たつわねえ」と言っていたのだけれど、いや、もちろんうちのリーチもいい男だけどさ(笑)!


いずれにせよ、これで我らが日本代表は1勝1敗。組み合わせから考えれば事前に予想していた以上の成績であることは間違いないが、問題はこの試合で明らかになった南ア戦のダメージ(マフィや小野の怪我も含めて)をいかに回復できるか。もちろんメンタル面での立て直しも必要だろう。次のサモア戦まで9日間空くのは、チームにとって助かると同時にかえって難しい部分もあるかもしれないが。

それにしても初戦と2戦目が中3日(そして2戦目の相手は初戦)、3試合目まで10日間空くというこの日程は何とかならんもんだろうか。昨日の結果について「前からわかっていたのだから言い訳にならない」と書いてる人もいるようだが、前からわかっていようが何だろうが不利なものは不利だろう(笑)。5チーム中2チームしか決勝トーナメントに上がれないシステムも含めて、何とかならんもんかねえ。

とにかくまた次、応援しないと。昔のジャパンだったら「スコットランドを本気にさせた」というだけで一定の評価を得られただろうし、今回もスコアほどの惨敗だったとは思えない。でも、あいにく南アフリカに勝ってしまったから……良くも悪くもあの金星が日本ラグビーを取り巻く世界を変えた(あるいは変えつつある)ということ。ここからが本当の勝負だ。頑張ろう。


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コメント

「モメンタムって怖いな」とFBに書いたのですが、スコットランドはジャパンにモメンタムを渡さないままで前半を終えた。
あの、ラインアウトからのモール、左に流れてのトライという美しい得点のあとにPGであっさりと逆転されて
『これは意気上がるところに水を差されたな』と思いました。そして、日本代表が思うように得点できないままに前半が終わり、五郎丸の素晴らしいディフェンスもスコットランドからしたら「もう少しでトライ、惜しかった…」としかならんのではなかったかと…
点差ほどの敗戦とは僕も思えません。しかし、それにしてもモメンタム…
デカイですね!ラグビーでは…

ホント、怖いですよね。

後から試合展開を振り返ると、前半の後半、シンビンがあったとはいえ敵陣で試合を進められていた時間帯にリードを奪っておかなければならなかったんでしょうけども。

スコットランドも前半は日本に負けず劣らずもたついてミスも多かったのですが、そこを手堅く我慢に徹してましたね。本気で勝ちに来ていたというか。

抽象的な物言いになってしまいますが、モメンタムを引き寄せ、渡さない力に差があったということなのかもしれませんね。でも、ジャパンにとってはいい勉強になったでしょう。

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