●セルフパロディ的、でも面白い(『孤独のグルメ2』)
久住昌之原作・谷口ジロー作画『孤独のグルメ2』(扶桑社)を読了。ご存知、井之頭五郎が日本各地のA級〜C級グルメを食べ歩く……と書くとちょっとニュアンスが違うな(笑)。ダンディなのに中年くさい七三分け背広姿の主人公が、とにかく何処へ行っても腹が減ってしまって何かを食べまくる人気漫画の第2巻。
最初の連載が始まってから20年以上経っている本作だが、谷口さん作画の緻密さも久住さんの独特の語りも変わらず健在。テレビドラマ化もされてすっかり有名になった作品だけに完全に「型」が確立されていて、今回も静岡のおでん屋からパリの多国籍食堂まで色々な題材が取り上げられているにも関わらず、五郎さんが食べる限り全て同じ話のように見えてしまうのは強みというべきかマンネリというべきか。
つーか、ところどころやり過ぎ狙いすぎで、ほとんどセルフリメイクというかある種のパロディにさえ見えてしまうのであった。妙な駄洒落連発とか「俺は腹が減ってるだけなんだ」とかアームロック(笑)とか。まあ、僕を含めてファンが求めているのはそういった部分には違いないし、読んでみるとやっぱり面白いから全然いいんだけど。とにかく美味そうだし。
あと、最近『食の軍師』の4巻を読んだばかりなので余計にそういう風に思ったのかもしれないけれど、久住さんの食べ物漫画ってのは乱暴に言えばどれも同じという気もするんだよね。「個人が食べ物あるいは店と一対一で対峙した時に展開する内的宇宙」をそれぞれちょっとだけ切り口を変えて描いている、という。
『かっこいいスキヤキ』から『孤独のグルメ』『食の軍師』『野武士のグルメ』、『花のズボラ飯』なんかもそうだよね。男目線か女目線か、作り手か食べ手か、「食べ歩き」か「遭遇」か、みたいな。バリエーションは様々なれど本質は一緒。何というか、作家性とエンターティメイントを高いレベルで両立させている稀有な作家なんだろうな、と言うと言い過ぎか(笑)。
いずれにせよ、そういう「食べ物との真摯な向かい合い」こそがこの作者の魅力であり、共感できる部分であることは間違いないわけだ。だって、僕のような食いしん坊かつ一人飯好きにとっては、一回一回の食事が「勝負」だもの(なんて書くとやっぱり言い過ぎか(笑))。店やメニューの選択から食べる順序とか食べ方まで。気がつけば美味く食べるための作戦を延々考えてるんだよね。
そういう意味では、この2巻で僕が一番「おおっ」と思ったのは、とんこつラーメンとご飯のセットにみそ煮の缶詰を付けて「完全食になったぞ」と満面の笑みを浮かべるシーンであった。わかるぞその気持ち、みたいな。ラーメンと白米だけだとイマイチなんだよな。そういや1巻でも五郎ちゃん、渋谷の百軒店で餃子と焼そばを食べて「ここに白米があれば……」とか言ってたな。あれもすごくよくわかる。
(この「ラーメン定食」問題については、いずれちゃんと書いてみたい。)
あと、サッカーファンとしては、信濃町のペルー料理「ティア・スサナ」が出てくるのもポイントが高い。あの口数が多い店員さんも、「スサナおばさん」まで出てくる!南米のサッカーグッズと写真で埋め尽くされた店内もちゃんと再現されているし。なんとも懐かしい。北京五輪前に国立でU-23日本×U-23アルゼンチンを豪雨の中観て、その後全身びっしょりになってあの店にたどり着いたのを思い出した。
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