●レッドドラゴン惜敗と (南アフリカ代表×ウェールズ代表 とか)
南アフリカ代表 24−19 ウェールズ代表 (ラグビーワールドカップ2015 準々決勝)
いよいよラグビーW杯も準々決勝、まさに佳境に差し掛かってきた。土日に4試合が行われたが、事前の予想も実際の試合内容も大いに白熱したのが、南アフリカとウェールズの一戦である。80分間に渡る肉弾戦と僅差のシーソーゲームの末、スプリングボクスが辛くもレッドドラゴンに勝利。
ノックアウトラウンドらしい壮絶な試合だった。
開始早々ウェールズが速い左右への展開でビッグチャンスを掴むも、ラストパスがわずかにそれてトライならず。すると南アが激しい縦突進でウェールズ陣へ入り、ウェールズFWがたまらずたて続けにペナルティ。SOビガーが一本返したものの、17分までに南アが9-3とリード。これに対してウェールズはビガーを中心にハイパントやロングキックで対抗し、FWも密集への鋭い働きかけで盛り返していく。
18分、ピッチ中央で自らハイパントを上げたビガーが目の覚めるようなキャッチから快走し、SHデービスにラストパスをつないでトライ。9-10と逆転した。南アも一旦はPGで逆転するもののキッカーの不調もあって突き放せず、ウェールズはキック戦と自陣での粘りの守備でボクスと互角に渡り合う。そしてロスタイムに入った41分にビガーが狙いすましたドロップゴールを決め、12-13でハーフタイムへ。
後半早々もお互いに攻め込んでペナルティ、の展開となるが、南アのポラードがPGを外し、一方のビガーは確実に決めて50分時点で12-16。4点差となりウェールズとしてはあと一押し、南アにしてみれば追い詰められる展開となった。しかし、ここからスプリングボクスが本領を発揮する。まず52分にポラードがドロップゴールを決めて1点差。さらに重量FWとBKが一体となって連続攻撃を仕掛けていく。
ウェールズは圧倒的にボールを支配されながらもFWが健闘、幾度も自陣深くで取り返してはキックで押し戻す。が、南アも崩れず、縦突進でプレッシャーをかけ続けた。そしてウェールズのハーフ団が交代した直後の75分、22m内左中間のスクラムから隙を突いたSHデュプレアが左隅に飛び込んで逆転トライ!さすがのウェールズもそこからひっくり返す力はなく、南アが接戦を制して準決勝進出を決めた。
激しいぶつかり合いが延々と続く試合展開は、明らかにスプリングボクス向きのものだった。ウェールズもそれはわかっていたろうし、とはいえ今のウェールズBK陣に展開で南アDFを抜ききる力はないのでキック戦しかない、という結論になったのだろう。結果として、目覚ましい成長を見せるSOビガーの闘志あふれるプレーがチーム全体に勢いをもたらし、ウェールズの感動的な戦いにつながった。
驚いたのは、ウェールズFWが密集で南アFWに十分に対抗できていたことである。もちろん全体的にはボクスが優勢だったし、特に終盤は疲弊してアライビングプレーヤーが間に合わないことも多かったけれど、それでも何度もボールを取り返して最後の最後まで勝利の希望をつなげた。ウェールズにとって誤算だったのは、南アFWのスタミナが最後まで落ちなかったことか。それもW杯ゆえなんだろうね。
とにかく熱く、見ていて手に汗を握る展開だった。ホント、これだからW杯は面白い。まあ、ウェールズびいきの僕としては、あと5分、何とか持ちこたえてほしかったんだけども……勝てばウェールズラグビー史上に残る快挙に違いなかったのだから。
デュプレアの逆転トライの直前、ウェールズがビガーを交代させた場面は残念だった。確かに後半半ばを過ぎてキックも少し疲れは見えていたけど、アドレナリン満々という感じだったし、本人も不満を露わにしていた通りまだ戦えるように見えた。失トライの直接の原因ではないのだが、ウェールズの方は悪い意味であそこで「区切り」がついちゃったのかな、と。こういうのは理屈じゃないんだよね。
とはいえ、本当にウェールズはよく戦ったと思う。ただでさえ「死の組」に入ってしまったところ、大会直前にSHウェッブやFBハーフペニーら大黒柱を何人も怪我で欠き、開幕後も怪我人が続出。しかしそんな状況でFWはよく結束し、ビガーは(日本に負けた時とは別人のように)頼もしく成長してチームを引っ張った。開催国イングランドを沈めたのは偉業に違いない。次もまた楽しみなチームである。
一方の南アフリカも、さすがとしか言いようのない戦いぶり。一つ一つの当たりが明らかに他の国より重いんだよね、ここは。相手DFの一瞬の隙を突いたデュプレアのトライは素晴らしい判断の賜物で、WTBハバナの若い頃とは全然違うシブい仕事ぶりやスカルク・バーガーの超人的な奮闘などと合わせて、ベテランの価値を改めて知らしめてくれた。次はオールブラックスと当たるのか。これも楽しみ。
ということで四強が出揃って、南アフリカ、ニュージーランド、アルゼンチン、豪州。大会前は南北の実力接近を見て「これは今までと違う優勝争いになるのでは」と思っていたのだけれど、結局南半球勢の独占になってしまった。「これでええんかいな」。もちろん南半球の方がトップリーグやスーパーラグビーで馴染みの深い選手が多いから、そういう応援のしがいはあるんだけど。でも英国勢全滅か……。
まあ、アイルランドやフランスはともかく、スコットランドは非常に惜しい試合だったのだ。レイドローの正確なPGと果敢な守備を武器に、優勝候補筆頭の豪州を相手に堂々たる撃ち合いを展開。賞賛されるべき勇戦で残り2分までリードしていたのだが……そこでミスと微妙な判定が出るとはねえ。難しいもんだ。ウェールズとスコットランドのどちらかでも勝っていたら、印象も全く違ったものになっただろうに。
それにしても、やっぱりどのチームを見ても、決勝ラウンドはさらに一段ギアを上げたような戦いぶりであった(そこにピークを合わせて来ているからではあるのだろうけど)。やっぱりジャパンも早くあそこに加わって、また違う世界を見られるようにしないとね。頑張ろう。
[追記]
今のスコットランド代表のジャージは襟がしっかり付いていて、とても格好良いと思う。やっぱラグビージャージは襟だよ、襟!
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