●ラグビーはおそろしい （イングランド代表×ウェールズ代表）
イングランド代表 25−28 ウェールズ代表 （ラグビーワールドカップ2015 プールA第2戦）
W杯のプール戦も二巡目に入り、早くも決勝ラウンド進出に向けて重要な試合が出てきたところ。「しの組」とも言われるプールAでは優勝を狙うイングランドと怪我人続出に苦しむウェールズが激突し、ウェールズが接戦を制して下馬評を覆す勝利。開催国が予選敗退の危機に見舞われる波乱となった。
2試合目とはいえ大会の帰趨を決しかねない一戦だけに、序盤から激しいボール争奪戦が繰り広げられ、PG・DGの撃ち合いが続く。イングランドのファレル、ウェールズのビガーという両SOが確実に決めて前半半ばで9-6。大観衆の後押しを受けるイングランドはスクラムの優位を生かして攻め込み、バックスリーにSHヤングが加わる攻撃でトライ。しかしウェールズも終了間際にビガーがPGを返して7点差で前半終了となった。
後半もともに攻め込んではトライを取りきれず、しかしDFも耐えきれず反則、の繰り返し。完璧な出来のファレルがPG2本を決めるが、ビガーも負けじと3本蹴り込んでウェールズが食い下がる。60分の時点で22-18。だが、ここで試合前から満身創痍のウェールズはさらにWTBアモスやFBウィリアムズが負傷退場。いつもとは違う選手配置を強いられた上に、ファレルがPGをたたみかけて25-18。勝負あったか、に思えた。
ところが、ここでレッドドラゴンが底力を見せる。FW陣が根性の縦突進でイングランド陣に入ると、71分、右→左とピッチを横断する広くて速いパス攻撃から途中出場のWTBウィリアムズがDFの背後を狙う絶妙のグラバーキック。これを拾ったSHデイヴィスが中央へトライして同点！。25-25。勢いに乗るウェールズは一気に攻めたて、中央で獲得した50m超のPGをビガーが見事に決めて逆転に成功した。
負けられないイングランドは終盤逆襲に転じ、ウェールズ陣深くでPKを獲得。しかし角度のない位置であったこともあり、逆転トライを狙ってラインアウトからモールで攻める。が、これをウェールズFWが闘魂の守備でタッチ外に押し出して万事休す。ウェールズが3点差で勝利を収めた。
いやあ、熱い試合だった。プール戦からこれが見られるんだからW杯はやめられない。
内容的にはまるでシックスネイションズの優勝のかかった試合を観ているような印象で、とにかく両チームとも様々な手をつくしてスコアにつなげようというガチンコの展開。「死の組」での生き残りをかけた一戦だから当然といえば当然なんだけど、でも強豪国同士の「勝負」はやはり（日本代表の応援とは別の意味で）最高である。ジャパンもこういう次元で戦えるチームになってほしいものだし、なれると思う。
ウェールズは、大会前にSHウェブ、CTBジョナサン・デイヴィス、FBハーフペニーと軸になる選手が大怪我をしてしまい、満身創痍の状態だった。しかもイングランドや豪州と同じ組。もともと世代交代で苦しんでいたこともあり、ウェールズ贔屓の僕も正直苦しいのではないかと思っていた。が、見事な気迫のプレーで勝利。伝統国の底力を見せつけられたし、やはり何かをする力を持ったチームなんだと嬉しくなった。
素晴らしい闘志と集中力でハーフペニーに負けず劣らずのスーパーブーツぶりだったビガーを始め、今回のウェールズには2013年に日本に負けた時の（つまり同年のライオンズ豪州遠征に選ばれなかった）選手が結構含まれているんだよね。代役FBのウィリアムズもそうだし、最後に決定的なグラバーを通したWTBウィリアムズもそう。何というか、日本人としても彼らの活躍は非常に嬉しい。やったな！みたいな。
まあ、とはいえ、ウェールズがこの後勝ち抜いていくのは容易なことではない。この試合でもスクラムでは弱みを見せてしまったし、負傷退場も出た。フィジー戦で勝ったとしても豪州戦大敗で元の木阿弥の可能性もある。逆に、負けたとはいえイングランドはまだまだ悲観するには早い状況だ。PGを狙わなかった後の意志の不統一（南ア戦のジャパンとは対照的だった）含め、終盤のチグハグさは気になったけれども。
いずれにしても、ウェールズが意地の一発を見せてくれたことで、大会は俄然盛り上がってくるのではなかろうか（いや、本当に敗退しちゃったらいくらなんでもマズイか）。つーか、いくらイングランドとはいえ、開催国が「死の組」に入るってのは一体どういうことなんだろう。サッカーのW杯じゃ考えられんよな……。
いやー、この試合の結果もそうだけど、ラグビーっておそろしいね（笑）。
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