« しばし夏休みを (FC東京×ベガルタ仙台) | メイン | 前田!前田!前田! (FC東京×ヴィッセル神戸) »

2015年08月30日

●そしていざ、ワールドカップへ (日本代表×ウルグアイ代表)

昨日の晩は、雨上がりの秩父宮ラグビー場へ。日本代表 40−0 ウルグアイ代表 (リポビタンDチャレンジカップ)。日本代表のワールドカップ前最後の国内テストマッチは、同じW杯出場国のウルグアイを相手に、福岡での第1戦に引き続いて危なげない快勝。壮行試合としては最高の結果となった。


この日のジャパンは序盤から安定感のあるプレーぶりで、持ち前の速いパス攻撃にDF裏を狙うキックやWTBを走らせるキックパスなどを織り交ぜながら攻めたてる。4分、小野のキックパスで福岡がラインブレイクした場面、フォローするマレ・サウをSHオルマエチェアが引き倒してしまいシンビン。日本はこのチャンスを逃さず、12分にFWの突進から右サイドに細かくつなぎ、五郎丸がDFの間を突いてトライした。7-0。

続く15分、ツイの豪快な突破から松島が快走し、最後は田中が中央へ飛び込む小野にラストパスを通して電光石火のトライ。五郎丸がコンバージョンを確実に決めて14-0とした。さらに25分にも近場のパスで飛び出した福岡が快足を飛ばして大きくゲインし、ラックの早い球出しからブロードハーストが豪快にDFを突き破って左隅にトライ。驚くべき正確性を見せる五郎丸のキックがまたも決まって21-0で前半終了となった。


後半も日本の優勢が続く。まず44分にゴール前で大きく右展開、五郎丸が巧みなチップパスを通して松島が右隅を抜けた。難しいキックを決め続ける五郎丸に大歓声が沸いて28-0。続いて50分、連続攻撃から敵味方がひしめく状況で松島が細かいステップでゴールに迫り、最後はツイが飛び込んでトライ。33-0。ウルグアイは時折ミスを突く形で日本陣に入るも、日本のカバーディフェンスを振り切れずに得点には至らない。

圧巻だったのは66分。ウルグアイ陣でのターンオーバーから鋭く切り返すと、田中→小野→リーチ→立川→ブロードハースト→木津→福岡とパスが通り、福岡はあっという間にDFを置き去りにして独走。これは爽快なトライだった。40-0。その後は日本が幾度も攻め込みながらトライこそ奪えなかったものの、最後までアグレッシブなラグビーを貫いてフルタイムの笛を迎えることになった。ジャパン、文句なしの勝利である。


いや、この結果は嬉しかった。何しろ6トライで無失点。本番前のセレクションやトレーニングの意味合いも強いとはいえ、やはりテストマッチの勝利は格別だな、と。

まず良かったのは、この8月に入ってからの3試合でグッとチームの完成度が上がってきたように見えることだ。パシフィック・ネーションズカップ(PNC)や世界選抜戦の段階ではコンビネーションや選手起用の意図が合いそうで合わない、その結果としてあと一歩で勝てないというもどかしさがあった。が、この日はほぼ意図した通りのラグビーができた様子で、つまらないミスや連携のほつれはほとんど見られなかった。

もちろん、勝利それ自体の価値も大きいのは言うまでもない。ウルグアイは格上ではないがW杯常連国で、特にDFの強さと粘り強さはなかなかのレベルである。そこに2試合きっちり勝ち切ったというのは大きな自信になるだろう。元々日本代表は「健闘しながら結果出ず」の悪い伝統があり、PNCも「同格」相手に1勝3敗という悔しい結果に終わっていただけに、これでモヤモヤが吹っ切れてくれればいいな、と思う。

また、選手たちのコンディション自体もかなり上がってきているように見えた。春から「トレーニングで追い込みながらW杯へ向けて仕上げていく」方針が示されていたが、やはりPNCの時点では疲れが溜まってかなりキツい状態ではあったのだろう。本番まで残りあと1ヶ月弱、うまい具合にピークが合ってくれれば。それこそサッカーの2010年W杯を持ち出すまでもなく、短期決戦は何よりコンディショニングの勝負なのだから。

おそらく、そういった手応えというのは選手たちも感じているのだろう。たとえば、僕はメインスタンドの前段で観ていたので途中交代の様子がよく見えたんだけど、57分に畠山が山下と交代した時、いつになく充実した笑顔でスタッフと握手しているのが印象的だった。あれは「おっ」と思った。

で、そうした雰囲気の中、この試合の後に最終的な選手選考が行われるわけだが……三上、堀江、畠山、ブロードハースト、リーチ、ツイ、マレ・サウ、松島、福岡、五郎丸あたりは当確だろうか。SHは田中の調子が気がかりだけど、今の2人で行くしかないような気はする。ヘスケスが入ると山田は外れちゃうのかな。難しいのはSOで、僕は小野がいいと思うのだが、そしたら第1CTBは大型選手になるよな。となると立川か。

それにしても、福岡君はこうして改めて見てみるとホント逸材だなあ、と。DFを抜く時に脚のピッチが上がってグッと加速していく、あの姿の魅力というか期待感はハンパないものがある。猫背なあたりも元フランス代表のクリストフ・ドミニシを彷彿とさせるというか。きっと相手にとっても嫌な選手なのだろうな。特にスコットランド戦は、チームとして彼の見せ場を作れるかどうかが大きなポイントなのではなかろうか。

いずれにせよこの試合を観て、本番がいよいよ楽しみになってきた。グルジア代表との試合も有効に使って悔いのないように仕上げてもらいたいものである。正直8強入りは至難の技だとは思うけれども、南ア相手に「やるな日本」と思わせる試合を、そしてスコットランドから歴史的勝利を!(そしてアメリカにはきっちり勝ってね)というのが今の僕の願いだ。頑張ってほしい。




[付記]

……と、本文では前向きな事を書いたんだけど、実はこの日は純粋に応援に集中できず、少々複雑な心境で試合を眺めていたのである。

春の時点では日本ラグビー界の前途は明るいはずだった。2019年W杯の開催が決まっており、代表もエディー・ジョーンズHCの下でウェールズとイタリアを撃破するなど順調に強化が進み、さらに日本チームのスーパーラグビー参加構想も持ち上がっていた。今年のイギリスW杯で健闘し、そのまま2019年大会や2020年五輪に向けて右肩上がりに盛り上げていく。そんな展望を描いていた関係者は多かったのではなかろうか。

ところが、である。国立競技場(及び秩父宮ラグビー場)の建替構想は頓挫し、その過程で森喜朗元会長の不人気もあってラグビー界はすっかり悪者にされてしまった。メイン会場を失った2019年大会の計画は修正を余儀なくされ、ワールドラグビー(旧IRB)からは開催権の剥奪もあると警告を受けているという。加えて、代表と日本協会の大口スポンサーである東芝の経営問題が起こり、さらにジョーンズHCの退任発表まで。

特に新国立競技場の問題は深刻で、個人的には当初計画の白紙撤回は思い込みと感情に動かされた行き過ぎた決定(声の大きな反対派のかなりの部分がスタジアムでフットボールを観ない人々のようだし)だと思っているのだけれど、嫌なのは2019年W杯自体が「大したことない」と思われている事実が明らかになったことだ。そりゃ五輪やサッカーW杯には及ばないかもしれんが、世界で3番目に大きなスポーツイベントだぜ!!

まあ、結局、今の日本におけるラグビー人気というのは正直大したことないわけで、この日も雨模様とはいえワールドカップの壮行試合なのに残念な(いや、もちろん大勢ではあるんだけど)観客動員ではあった。まずはこの光景を何とかしないと、このままでは開催権を剥奪されても文句は言えんわな……。

てな状況の中、我らが日本代表はいつになく重大な責任を負ってワールドカップに臨むことになるのかもしれないな、と。本当はその競技全体に関わる大きな問題や環境的なものなどを特定の選手たちに背負わせたり託したりするのは本末転倒だしいけないことだとは思うんだけどね。でも、今ジャパンが惨敗してしまったら、日本ラグビーのイメージやステータスはどうなってしまうのだろう、と。とにかくここで勝たないと。

試合後、僕らの世代にとってはやはりこの方がしっくり来る赤白ジャージーの選手たちが並んで拍手を浴びるのを眺めながら、そしてその後酒場に移ってフットボール賢人の森末潤一さんと語り合いながら、そんな事をつらつらと考えていた。とにかく頑張れジャパン。僕たちも頑張ろう。


↓よかったらクリックして下さい。
にほんブログ村 その他スポーツブログ ラグビーへ
にほんブログ村

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2820

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)