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2015年09月15日

●28年目のラグビーワールドカップ (前編)

ということで、今週の金曜日はいよいよ、全世界ラグビーファン待望の第8回ワールドカップの開幕だ。開幕戦は開催国イングランドとフィジーの一戦である。

4年おきにワクワクドキドキハラハラさせられるこの大会だが、今回はこれまでになく楽しみなのだ。それは、優勝候補の拮抗ぶり(まあ普通に考えりゃNZなんだろうが、おそらくそうは問屋がおろさない)もあるのだけれど、何といっても我らが日本代表が「史上最強」と称される状態にあるから。世界のスターたちのスーパープレーももちろん見たいんだけど、やっぱり見慣れた「俺たちの」チームが健闘しないと、ね。

思えば、サッカーと違ってラグビーのW杯はたったの8回目、始まってからまだ28年の年月しか経っていないのだが、たかが28年、されど28年。僕の人生の過半はこの大会と付き合ってきたことになるわけだ。今週は、これまでの僕のラグビーW杯に関する体験と記憶を振り返ってみよう。


ニュージーランドを会場に第1回ワールドカップが行われたのは、1987年のこと。開催国NZが優勝し、招待参加の日本代表はイングランド、オーストラリア、アメリカ相手に3戦全敗だった。

正直、この頃は大学ラグビーに夢中(お気に入りは魂のタックルの慶應)だったので、W杯をやっていたことは途中で知った。確か「Number」誌の見開き記事かなんかで見たんじゃなかったかな。まだW杯がほとんど知られていなかった頃、観客のまばらなスタンドを背景に、アメリカ相手に思わぬ敗戦を喫したジャパンの面々ががっくり肩を落としている写真が記憶に残っている。苦難の道はあの時から始まったのか(笑)。

優勝したNZはとにかくフィジカルがたくましく、「これは全然かなわない、別次元だな」と思わされるチームだった。実際、その後来日して日本代表と対戦した時は全く歯が立たなかったし。とりわけトライを量産して優勝に大きく貢献したWTBのジョン・カーワンは凄まじく……まさかその後日本で二度に渡って再会(NECでプレー、その後日本代表ヘッドコーチに就任)するなんて夢にも思わなかったけども。


第2回イングランド大会(1991年)はオーストラリアが優勝、日本代表はスコットランド、アイルランド、ジンバブエに対して1勝2敗だった。

この大会、日本のラグビーファンの期待は大きかった。当時のジャパンは2年前に宿澤広朗監督が就任してからそれまでの数年間の不振を払拭し、スコットランド相手に金星を挙げ、トンガ・韓国・西サモアが揃う難関のアジア予選も2勝1敗で見事に突破。理知的な宿澤監督に平尾、朽木、大八木、吉田らタレントが揃ってチームとしての完成度も高かった。もしかしたら本番でもどでかい仕事をやってくれるかも、と。

しかし現実は甘くなく、スコットランドとアイルランド相手に健闘しながら、いずれも後半突き放されて連敗。特にアイルランド戦はミスも多く、「もう少しやれるのでは」ともどかしい思いが残った。だがそれでも見せ場は作り、最後のジンバブエ戦では9トライを奪って快勝。ジャパンのポテンシャルの一端を見せた大会でもあった。でもまさか、その「次の1勝」に20年以上かかるとは……後から振り返ると愕然とするね(笑)。

優勝した豪州は前回のパワフルなNZとは異なり、スマートなスタイルで組織力を売り物にしたチームだった。トライ王になったWTBのデイヴィット・キャンピージには第4回大会アジア予選の時にシンガポールのナショナルスタジアムで握手してもらったなあ。大きな掌だった。


第3回の南アフリカ大会(1995年)は開催国の南アフリカが優勝し、日本はウェールズ、アイルランド、NZと戦って3戦全敗だった。

この大会は日本ラグビーにとっては悪い意味で忘れられない、忘れてはならない事件であった。3試合とも50点以上を奪われる大敗、しかもブルームフォンテンで行われた最終戦ではNZに17-145で敗れるという失態。当時は僕も「145」の意味がよく飲み込めなかったんだが、時間が経つほどにジワジワ来るんだよね。C・イーストウッド監督の『インビクタス』でも笑い所になってたけど、ほんとシャレにならんわ。

大会の見所は、NZの怪物WTBジョナ・ロムーの暴れっぷりと、その最強NZを南アが壮絶なディフェンスで破った決勝戦だろうか。セレモニーでネルソン・マンデラ大統領が登場した瞬間に「空気が変わった」のが、衛星中継の画面を通してはっきり伝わってきたんだよね。あれは鳥肌が立った。で、延長戦ドロップゴールによる劇的な勝利。スポーツには理屈を超えた要素が存在することを思い知らされた一戦だった。

まあ、日本のファンにしてみれば、あの「145」と映画の題材にもなったドラマティックな決勝戦、自分たちと世界との距離感を痛感せざるを得ない大会ではあった。あれから20年、見方によっちゃジャパンはずっと敗戦処理をやらされてるような気もするんだよな……。


中編へつづく)


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