●山田飛び、サモアに完勝 (日本代表×サモア代表)
日本代表 26−5 サモア代表 (ラグビーワールドカップ2015 プールB第3戦)
プール戦も佳境に差し掛ってきた3試合目。世界のラグビーファンを驚かせた南アフリカ戦、失意のスコットランド戦と1勝1敗の日本は、世界最強クラスの打撃力を誇るサモアとの対戦。色々な意味で正念場の一戦と思われたが、南ア戦を思い起こさせる素晴らしい戦いぶりでまたも下馬評を覆す勝利をつかんだ。
思わぬ完勝、というか。
試合は序盤から日本ペースとなった。中9日で回復した日本は守っては粘り強く網を張ってサモアに大きなゲインを許さず、攻めてはお得意の連続攻撃でじわじわと押し込んでいく。開始早々に五郎丸がPGを決め、さらにゴール前まで攻め込むとサモアがラフプレー2発でたて続けにシンビン。数的優位の時間帯に南ア戦を想起させる強気の攻めが功を奏し、24分にはスクラムで押し込んでペナルティトライを奪った。10-0。
サモアも15人に戻ってからはパワフルな近場の連続攻撃で日本の防御を崩しにかかるが、畠山やホラニの素晴らしいタックルにノックオンを連発し、流れを変えられない。そして五郎丸のPGで3点を追加した日本はさらに41分、ゴール前でのしつこい連続展開から畠山が右隅に走り込む山田へラストパス。山田はサモアDFのタックルを受けるも鋭いスピンで振り切り、ジャンプ一番右隅へ飛び込んだ。20-0でハーフタイムへ。
後半も日本は気迫の攻守を見せ、前半からナーバスだったサモアは次々に選手を入れ替えるも反則を連発し、五郎丸が2本のPGを決めて26-0。これで勝負あり、あとはトライ4本のボーナスPを狙うだけに思えたのだが……。64分、日本はゴール前まで攻め込むが、ターンオーバーからの逆襲でトライを奪われてしまう。26-5。68分にもサモア陣左中間でPKを得たが、トライを取りに行かず、しかも五郎丸がゴールを失敗。微妙な場面だった。
終盤は両チームとも疲れが出てミスが頻発するややルーズな展開となり、いずれも深く攻め込む場面を作るも得点には至らない。リードしている日本は負傷者が何人か出たものの、複数ポジションをこなせる堀江とツイを使いまわしてしのぎ、その他は特に慌てる場面もなくそのまま21点差で試合終了となった。ジャパンにとっては初の「大会2勝目」である。
南ア戦の後は正直どう反応したらいいものかわからなかったのだが、今度は普通に嬉しいな、と(笑)。ある意味、南ア戦以上にジャパンの成長を感じられた試合だった。
サモアはフィジー・トンガと合わせた南太平洋3カ国の中では最強チームで、日本もこれまでの対戦であまり勝てていない相手だった。大会前、僕は日本の成績を「よくて2勝、まあ1勝3敗か」と予想していたんだけど、その「2勝」の内訳はスコットランドとアメリカだったんだよね。最初の2試合がキツい相手だからそこで力を使ってしまい、相性もあるし、サモア戦については勝つのが非常に難しいのではないかと。
ところが、この完勝。山田のトライで突き放すまでも流れは一貫して日本ペースだったし、勝敗に関しては全く危なげがなかったと言って良いのではなかろうか。サモアの縦突進に対して一発で倒せなくても二の矢三の矢のタックルが効果的で、相手がミスするまで粘り切ってPGを積み重ねていく対アイランダー必勝の法則を実現できた。もちろん、(60分までは)南ア戦並みにミスが少なかったのも大きな勝因である。
この試合でも日本のスクラムは良かった。あの超でかいサモアFWをめくり上げるくらい押し込んでペナルティトライをとれるんだから、ダルマゾコーチの作り上げたスクラムは世界的に見てもなかなかのレベルにあるのだろう。今年の日本選手権でのヤマハ優勝の時も思ったけど、やっぱりスクラムはラグビーの根幹の一つであるというのは強調されるべきだろうし、そこで日本が世界と戦えるのは本当に素晴らしいことだ。
なんつーか、特別な戦いをしたというより、普通にやって普通にいい部類の出来だったら完勝できた、というのが嬉しいんだよね。より地力が上がったという感覚を得られるというか。選手たちも過去の対戦成績に関わらず自信を持って試合に臨んでいるように見えた。
個々の選手について言うと、FWではまず畠山が感動的な奮闘を見せてくれた。個人的には彼がMOMだと思う。ホント、前回大会の仇は完全にとった感じである。今大会初登場のホラニも特にディフェンスで見事な働きを見せてくれたし、堀江やトンプソン、大野もさすがの仕事ぶりだった。リーチは相変わらず主将らしい体の張りようだったけど、あまりに頑張りすぎたか、終盤にパフォーマンスが急落したように見えた。
BKでは、小野と立川、松島は南ア戦同様にほぼ完璧な出来。五郎丸も良かったけど、あの入れどころを外す癖は何とかならんもんか。素晴らしかったのは山田で、前半終了間際のトライは彼にしかできないプレーだ。身体能力の高さはもちろん、アメフトとの二足の草鞋を履いてた選手らしい鋭いスピンとダイブ。「あ、空を飛んだ!」と思ったもの。本当に凄い男である。後半に負った怪我が軽症でありますように……。
と、ここまでは基本的に「良かったね」なんだけど、一つ残念だったのは、4トライのボーナスポイントをとれなかったこと。68分だったか、サモア陣左中間のPKでショットを狙ってしまったのは、21点差の状況、かつ五郎丸にとって苦手な位置ということもあり、少々納得の行かない判断だった。かなり疲労していたピッチ上の選手たちには余裕がなく、リーチ主将も強気の判断をできなかったということだろうか。
でも、歴史的な勝利を2つも積み重ねているだけに、この試合で勝点5を取れないことで準々決勝進出がさらに厳しくなってしまったのはやっぱり悔いが残るような気がしてしまう。この大会のジャパンの戦いぶりからすれば決勝トーナメントに出てもちっともおかしくないと僕は思うし、また、エディー・ジョーンズHCも目標をそこに置いていたはず。だからあそこは断固としてトライを取りに行ってほしかった。
まあ、そういうある意味贅沢な望みが出てくるのも勝ったからこそであって、そこも含めて南ア戦・サモア戦の成果ではあるのだろう。とにかく、あとは最終戦でアメリカに勝つこと。その上でもし3勝1敗で準々決勝に進めなかったとしたら、そこは反省点として残る、と。そう、ようやくジャパンも本気で「大会を勝ち抜く」ために参加するチームになったということだな。うん。
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