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2006年03月01日

●ロースコアの醍醐味、そして幸せな結末 ('06日本選手権決勝)

JSPORTSの録画で、ラグビー日本選手権決勝。東芝府中 6-6 NEC。東芝の三冠がかかったシーズン最後のゲーム。近年日本ラグビーの覇を競ってきた社会人二強の直接対決は、激しい攻防の末に両者優勝の結末を迎えた。


降りしぶく雨、ぬかるむグラウンド、狭い地域で果てしなくぶつかり合う選手たち。悪コンディション下の真剣勝負はキックと近場の攻め中心の展開を呼び、厳しいタックルの応酬に両チームとも細かなミスが頻発。ただしミスと言っても「下手」の類ばかりではなく、ともに最後まで崩れず均衡した攻防が続いたということ。結果としてのノートライ。ボールを速く大きく動かすのが難しい状況は東芝の不利に働いたようにも思うが、しかしNECがマイクロソフト杯準決勝に比べてかなり立て直してきたのも事実だろう。

終盤の攻防は圧巻だった。FLマーシュをシンビンで欠くNECに対し、東芝は連続モールで押しつぶしにかかる。泥だらけになり踏みつけられながらも、低く当たって耐え続けるNECの選手たち。ロスタイムに得たPKも、キッカーの疲労を考慮したのと「ぶつかり合い」で決着をつけたいという欲望が働いたのだろうか、東芝はあくまでトライを狙う。この選択はもしかしたら評価の分かれるところかもしれないが、僕は王者・東芝が選んだ道ゆえにその心意気を買いたいと思う。

そしてラストプレイ。東芝はゴールライン間際でモール+縦突進。積み重なった選手たちの体から白い湯気が立ち上る。WTB廣瀬から横へ展開、SO日原が完全に抜けた、と思った瞬間に飛びついたのは武井か?さすがジャパンのFB!と感嘆の声を上げる間もなく、再び押し寄せる東芝アタッカー。SH吉田がボールを拾いながらインゴールへダイブし、サヨナラトライか、と思ったところで楕円球は前へ跳ねていった。試合終了のホイッスル。なんという終わり方だろうか……。

心を揺さぶられる試合だった。それは、試合中の激突ももちろん、試合後の様子があまりに素晴らしかったからでもある。両チームの選手たちが笑いながら体を叩き合い、肩を組み、レフリーとも固い握手をする。その笑顔と友情の交歓は、カップを両チームで受け取る表彰式の間も写真撮影の間も延々続き、おそらくアフターファンクションでも続いたのだろう。こんな光景見たことないよ!!記録としても、東芝は三冠達成、NECは連覇達成。まったくもって「幸せな結末」だった。


僕が両者優勝と聞いて思い出すのは、ちょうど20年前の大学選手権決勝。慶応と明治が12-12で引き分けた試合だ。あの時も悪天候で、終盤明治の猛突進を慶応が猛タックルでしのぎきったのだった。やはりロースコアだったけれども、引き締まった雰囲気が忘れられないゲームで、あれを観なければ今ほどラグビーを好きになっていたかどうかさえわからない。個人的には、鮮やかなトライもラグビーの魅力と思いつつ、あまりコロコロと点が入るのは好きになれない。むしろ均衡した1点を巡る攻防にこそ大きな醍醐味を覚えるのである。もっとも、あの時は日本選手権出場をかけた抽選が後に控えていたため、「両校とも喜べない」という今日観た試合とは逆の表彰式になっていたけれども……。


ともかく、シーズン最後の試合に相応しい戦いを見せてもらった。いい試合だった。両チームの皆さん、どうもありがとう。次は、ジャパンがいい試合を見せる番だね。

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