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2005年10月14日

●『健全な肉体に狂気は宿る』

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『健全な肉体に狂気は宿る』(角川書店)読了。仏文学者・内田樹さんと精神科医・春日武彦さんの対談本。明白な形で単一のテーマが示されているわけではないのだけれど、あえて言うとすれば「生き方」に関するよもやま話、といったところだろうか。気が合う2人ゆえに興がのり、ずけずけとした物言いがテンポよく続く。頷いたり考え込んだりする部分は色々あれど、とにかく面白く読み進めることができた。

「よもやま話」なんていうと、さぞかし痛烈あるいは暴言チックな言葉が並ぶ「放談」を想像しがちだけど、内田さんが「常識」という言葉を多用してその大事さを強調しているように、この本で示されている2人の考えは至極まっとうなものが多い。「「自分探し」はもうやめよう」とか「人間は、わかり合えっこない」とか「親子関係は希薄な方がいい」とか「外見で人を判断しよう」とか。

でも、こういうのは、薄々わかっていても、日常の中でなかなか言語化して整理はしないものなんだよね。そういう意味では、こういう本を読むことで常識に立ち返る、あるいは自分の姿を見直してみることは、それなりに意義のあることではなかろうか。「人事を尽くして天命を待つ」「自ら「変人」のシールドを張る」「まず掃除しなさい」といった話も、ホントそうだと膝を打つ。

『寝ながら学べる構造主義』を読んで、内田さんはユーモラスだけど皮肉屋っぽい人なのかな、と思っていたのだけれど、これ読んでみたらテンションが高くて高くて…。全体の8割くらいは内田さんが喋ってるんじゃないか。しっかり自分というものがあって、ある意味容赦がなくって、話し出すと止まらなくなって。ちょっと松沢呉一さんみたいな感じかな。ちなみに、専門のはずの現代思想の話はほとんどなし。合気道の話ばかりじゃん…と思ったら、プロフィールに「専門は、武道論、フランス現代思想、映画論」とある。オモロイ人だ。

ま、なんにせよ、程度の差はあれ、生き方に躊躇したり悩みがあったりする人は、一度この本を読んでみたらいいのではなかろうか。「ああ、そういうのもアリか」と気が楽になったりするかもしれないよ。説教ってのは、納得さえできれば案外気持ちいいものだし。逆に、何かに大きな自信やこだわりがあるような人が読んだら、神経を逆なでされるかもしれないけれども。

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