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2005年07月24日

●'05ツール・ド・フランス第20・21ステージ

2005年ツール・ド・フランスもいよいよラストである。さすがにハイテンションで3週間も続いた大会、見続ける方の感慨もなかなか大きなものがあり、まさしくサッカーW杯や五輪と並ぶビッグ・イベントなのだと思い知らされる。


第20ステージ。ジュリクやヴィノクロフの「スーパーラップ」、バッソの闘志溢れるチャレンジ、そしてウルリッヒの超人的スピード。その全てを超越したのが、王者ランス・アームストロングだった。これで文句なし、か。これまでのステージ、ランスは強さを示しつつも一線は越えず、常に優勝の座は譲ってきた(結果として何人もの初優勝者が出た)わけだが、最後はやっぱり自分で締めて花道。違うんだね、この人は、やっぱり。レース後は子供たちに群がられてちょっと苦戦してたけど(笑)。

可哀想だったのは、総合3位につけていたラスムッセン。最初に転倒したのはまあ自分のせいとして、複数のメカニカルトラブルも重なって…なんでもない緩いカーブで路側に突っ込んで一回転した光景には、さすがに目を覆いたくなった。総合順位は7位まで後退。怖いね、大きな大会は。五輪や他の競技のメジャー大会でもそうだけど、あり得ない事が起きてしまうものなんだね。ただ、それでも後半持ち直してゴールまで我慢したところは素晴らしかった。ゴール後にメカニックと喧嘩でもしてなきゃいいのだが(笑)。


そして最終第21ステージ。実況席にも現地にもランスとの別れを楽しもう(寂しがろう)という雰囲気が充満し、スタートからしばらくは祝賀&お別れパレードの様相。色んな選手がわざわざランスの脇に寄ってくるわ、ランスも各チームカーに挨拶回りするわ、ディスカバリーチームはシャンパンで乾杯するわ(これは恒例の事らしいが)、しまいにゃバイクにまたがったカメラマンまでランスにサインをねだるわ…。まあ、最終ステージは途中まで流すという「伝統」に加えて、総合優勝は決着済、あとはポイントとステージ優勝の争いが残っているだけとなれば、こういう雰囲気になるのがかえって自然なのかもしれないね。のんびり幸せムード。

その雰囲気が一変したのは、最初のスプリントポイント手前。総合6位のヴィノクロフが5位のライフェマー(ゲロルシュタイナー)との2秒差を逆転すべく、突然のアタック。ゲロルシュタイナーのアシストは猛追するが、ヴィノクロフが2台のゲロルシュタイナーを従えてポイントを越え、総合タイムで並びかける。ま、ここで終わってればなんてことなかったのだが、、ゲロルシュタイナーの1台がそのままペースを上げたのと、さらに混乱に乗じたフランセズ・デ・ジューの1台がアタックをかける予想外の展開。そして諫めに追いすがったディスカバリーがなんと集団転倒。さすがに一旦クールダウンする集団。CSCの御大ロンバルディが逃げたヤツに説教かましていたのが面白かった(笑)。

で、どうにかこうにか落ち着いた状態でシャンゼリゼ周回コースへ。いや~、パリの街並みに色とりどりの自転車は映えるね…なんて平和な空気もつかの間、中盤のアクシデントと雨で滑る石畳にレーサーの本能を刺激されたのか、ここに来て我も我もとアタックをかける者が続出!もしかすると、この日が最も入れ替わりの激しいレースになったのではないか?パンクや転倒が続出する中、狂ったようにペースは上がっていく。さすがにこの時間帯だけはランスもかすんでいた。

そんな激戦を制したのは、やっぱりと言おうか、ヴィノクロフだった。スプリンター有利のコースなんて知るかよんなもん、という感じでまたもロングスパート、一旦はマッグギーに先行を許したものの、諦めるそぶりも見せずに追いすがり、最後はまさしく「根性」という文字が見えそうな走りで突き放した。強い!すごい!信じられない!!なんか、最後の最後でとてつもないものを見せてもらったような。特にファンでもなかったのに、ゴールの瞬間思わずガッツポーズしちゃったよ。

レース後は表彰式とパレード。神を見たとでも言いたげなヴィノクロフ。ポポヴィッチの爽やかな、ハスホフトの安堵の、ラスムッセンの吹っ切れた笑顔。そして、ランス、バッソ、ウルリッヒの三強揃い踏みの表彰台。子供たちを交えたやり取りを見ていると、どうもランスはウルリッヒを自分に次ぐ「好敵手」と、バッソを「継ぐ者」とみなしているような、そんな気がした。


3週間余りの大会。終わってみて残ったのは、大いなる達成感と、そしてささやかな感傷。戦いすんで日が暮れて。解説の今中さんや栗村さんが言っていたように、シャンゼリゼのゴールを通った瞬間に「全てが洗い流された」ような、そんな気持ちになるのが不思議である。いや、ツール観戦1年目、ホント楽しかったですよ。ありがとう。

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コメント

完走おめでとうございます。
>>いや、ツール観戦1年目、ホント楽しかったですよ。ありがとう。
視聴をお勧めした甲斐がありました。以前コメントしましたが当方ヴィノクロフの大ファンなので、シャンゼリゼのゴールシーンでは部屋中大騒ぎでそりゃもう大変でした(笑)。本当に熱かった!!そういえば、表彰式前にヴィノクロフとアームストロングがお互いの胸のあたりを指さして話をしてたように見えたのですが、もしかしてヴィノクロフは来期。。。
あと、ディスカバリーに所属している別府選手。今中さんに続いてぜひ近い将来ツールに出走して欲しいものです。

どうもどうも。

ツール、本当に面白かったです。なんつーか、システム化されているチームプレーも興味深いですが、その合間にきちんと人間の顔が見えるところが何とも魅力的です。デッケル先生の大逃げとか、フォイクトとモローの固い握手とか、ヴィノクロフの常識を超えたアタックとか、あともちろん最終日の健闘を讃え合う雰囲気もね。

ヴィノクロフ、もう最後は「意地と万力の1km」という感じでした。「人間ってこんなにすごいんだ!」とさえ思いましたよ、大げさでなく。ああいう常識にかからない選手は貴重ですよね。ディスカバリーに移籍するのかな…。

>あと、ディスカバリーに所属している別府選手。
そうですね。欠けているのは日本人選手ですね。ツール出場までどのくらいの近さまで来ているのでしょう、別府さんなんかは。

>ツール出場までどのくらいの近さまで来ているのでしょう、別府さんなんかは。
彼の今期の成績を詳しく調べていませんが、世界的にトップクラスのチームに所属している(所属できた)ということは、かなり有望であることは間違いないでしょう。
なお、ヴィノクロフはリバティ・セグロスへの移籍がきまったようです。
現段階でエラスやらベロキやらいますが、どうなりますかねぇ?

>ヴィノクロフはリバティ・セグロス
ああ、そうなんですか。エース扱いしてもらえるといいんですが。彼の力量が並々ならぬものであることは、今回のツールで明らかであったと思いますからね。

他にもメルクスがフォナックとか、カンチェラーラがCSCとか、ペタッキがドミナとか、フレチャがラボバンクとか、既に色々決定した移籍があるようですね。自転車人生も大変だなあ、と。とりあえずファン的には、来年までにディスカバリーチャンネルのナンバー1が誰になるか、とか注目しておけばいいのかな?

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