うまねんblog

昨シーズン、東京の戦い方において残念だったのは、４－２－３－１フォーメーションへの拘泥から今野を生かし切っていないように見えた事であった。試合の終盤にリードされていてもアタッカーを増やさずに今野＋もう１人のボランチという組み合わせを続けるケースが多く、それで相手に逃げ切られた日には、「なんで前を増やさないねん！」と地団駄踏んでしまうのであった。もちろん、必ずしもアタッカーを増やすことが攻撃力増加につながるとは限らないし、かえってバランスを崩して得点が遠ざかる事もある。でも、東京には、何しろ今野がいたのである。

今野泰幸は、日本有数のディフェンシブＭＦだ。昨年の五輪予選（特にホームのＵＡＥ戦）、そして２ｎｄステージとナビスコ杯決勝の浦和戦。今野は中盤の底で右へ左へ動き回り、少なくとも通常のＤＦ２人分以上の守備力を発揮していた。彼なくしては日本のアテネ五輪出場も、東京のナビスコ優勝もなかっただろう。彼の特長は、間違いなくその守備力と運動量にある。中盤の底でアンカーを務めるには最適の人材だ。しかし、東京に加入してからは、２ボランチの１枚として守備に偏ることなく、むしろ攻守にバランスよい動きを心がけているように見えた。

おそらく、原監督にしてみれば、怪我人続出や五輪組の欠場等でメンバーの入れ替わりが激しかった昨季は戦術上の柔軟性を発揮するところまでチームを熟成できず、一番やり慣れたやり方（４－２－３－１！）で混乱を防ぎつつシーズンを乗りきるしかなかったのだろう。そして、今野にしてみれば、より中盤の選手として高みを目指すために「攻撃も、守りも」こなさなくては、という気持ちもあったのだろう。もちろん今野の鋭い攻め上がりはしばしば威力を発揮し、原監督もそれを評価していたようだ。ただ、その使い方もあって（誰が悪いということではなく）、せっかく「日本のマケレレ」今野が加入したのにチームへのプラスは思ったより少なかったように思う。少なくとも、攻撃力を増す材料にはできなかった。

今年は、昨年とは状況が違う。加地と土肥以外の選手は（怪我がなければ）おそらくシーズン通してチームの戦いに参加できるであろうし、メンバー自体が昨季とはほとんど入れ替わりがないのである。チームとしての引き出しを増やせる時間は十分にあるし、チームがステップアップする絶好のチャンスとも言える。原監督がそういう発想の下に「１つ大きな試み」をするのであれば、それは（たとえリスクを伴うにしても）ファンにとっても歓迎すべき事だろうし、今から開幕まであれこれ想像に胸ときめかせてみるのもいいのではなかろうか。

ただ、１つだけ引っかかるのは、レンタルで大分に行ってしまった阿部吉朗の事。もし今季の東京がアタッカーを増やした布陣を基本とする（あるいは重要なオプションの１つとする）ならば、残留していれば阿部の働き場もより増えたはずだし、チームにとっても彼の移籍はやはり大きな痛手のように思えるのだ。ちょっと複雑な気持ち。帰ってこねえかなあ。

ま、何にせよ、オフィシャルのたった一文を基にここまで長い文章を書いてしまうのは、我ながらバカというか、そろそろ禁断症状が出始めているというか（笑）。