● 終わりよければ何とやら!(日本代表×アメリカ代表)
日本代表 28−18 アメリカ代表 (ラグビーワールドカップ2015 プールB第4戦)
早いもので、もうプール最終戦。我らがジャパンにとっては、前日にサモアがスコットランドに惜敗して決勝ラウンド進出の望みは絶たれていたものの、過去最高の成績を収めている大会だけに下手な幕切れはできない一戦であった。結果は、米国の激しいラグビーに苦戦しながらも、3つのトライで見事な勝利。
苦しい戦いだった。
前半、今大会まだ勝ち星のないアメリカは、粗いながらも速く浅く前に出る攻守で日本を苦しめる。キックオフから前がかりに押し込んで5分にマッギンティのPGで0-3。しかし日本も弾丸のような米国BKの突進を粘り強いタックルで受け止めて反撃。7分、DFの間を突いた小野の快走でゴール前へ迫り、速い左展開で巧みにリーチ→堀江→松島とつないで左隅へトライ。五郎丸がコンバージョンも決めて7-3。
その後もタイトな攻防は続き、24分、今度はアメリカが速い横展開を見せて右WTBングウェニアがトライ。7-8。だが、日本は直後のキックオフで藤田が勘の良いポジショニングでボールを確保し、FWの連続突進からモール、最後は藤田が勢い良く飛び込んで14-8。さらに33分には五郎丸が40m超のロング PGを撃ち抜いて17-8。終了間際の日本ゴール前のピンチもしっかり防いで、12点のリードで前半を終えた。
後半、日本は攻勢に出ようとマフィを投入し、開始早々五郎丸がまた40m超のPGを決めて20-8。だがアメリカの前に出る勢いと激しいタックルは衰えず、日本は自陣での我慢を強いられることに。攻めても密集でのTOやラインアウトのミスで機会を生かせず、55分にはアメリカがマッギンティのPGで20-11と詰め寄る形に。リードはしているが予断を許さない、というこれまでの米国戦で何度となく見た光景。
62分、日本がリーチ・立川らの突進で米国陣深く入ったところ、アメリカのPRがファウル連発でシンビンとなり、日本は迷わずラインアウトからモールを組んでマフィがトライ。25-11。勝負あったかと思えた。ところが五郎丸が左中間のコンバージョンを外してしまい、さらに14人のアメリカも諦めず反撃。71分、縦縦でゴール間際に迫ってから大きく横に振ってFBワイルスがトライ。 25-18。ここは嫌な雰囲気だった。
本当に勝負あったのはようやく77分、五郎丸がこの日3つめのPGを見事に蹴り込んで28-18とした場面だった。終盤にはアメリカが意地の猛攻を見せるものの、日本は粘りのタックルでトライを許さず、10点差のまま逃げ切りに成功した。ジャパン、史上初の大会3勝目である。
いや、実に価値のある勝利だと思う。これをやってほしかったんだよ、という。
これまで8回のW杯で日本がたったの1勝しか挙げられなかった由の一つに、同格、ないし格下と思える相手に対して試合運びの拙さで取りこぼしていたことがあった。特に北米勢には、アメリカには第1回・第5回と最終戦で敗れ、カナダには第6回・第7回とこれも最終戦で連続して引き分け。毎大会スコットランドなど強豪に健闘しながら、PNCなどでは勝てている相手に勝ちきれない歯がゆさが続いていた。
それが今回は、体力的にもモチベーション的にも難しい最終戦できっちりと勝利。アメリカはアグレッシブに前へ出る動きと激しい接点で日本を大いに苦しめ、終盤はさすがに日本も疲弊した選手が多かったように見えたが、常にリードを保ちながら得点を重ねていく安定した戦いぶりで見事に逃げ切った。ミスもそれなりに多かったけれど、動揺したりするシーンがほとんどなかったのは成長の賜物なのだろう。
とにかく選手たちはよく頑張った。FW陣では、まずトンプソンの接点・密集での素晴らしい働きぶりが際立っていた。彼はこのW杯で大野とともに「ロックとはかくあるべし」の模範を示してくれたと言えるだろう。主将のリーチやコリニアシ、ブロードハーストも然り。マフィはまたしても決定的な得点に絡み、もはやジャパンの「主砲」である。どんな国のどんな相手に対しても当たり負けないんだもん、凄いよ。
BK陣では、立川は相変わらず完璧なプレーぶりで、ホント人が入れ替わったのではないかと思うくらい(笑)。小野も見事な出来で、あの小さな体でよくあれだけゲインしキープできるもんだ、と感心しきり。松島は、なんだかんだいってほぼフル稼働だったんだね。ウィングは出来はイマイチだったけど出られてよかった。五郎丸は、あのフォームで一つキックを決める毎、チームに勇気と力をくれる選手になった。
まあ、とにかく終わった、というかやり終えた、というところか。3勝1敗。本当に素晴らしい成績である。そしてそれでも決勝ラウンドに進めない悔しさも残った。
試合後の五郎丸の涙には思わずもらい泣きしてしまった。何というか、若者の志の高さというのはいかに尊いものか。本気で準々決勝に進む気だったんだな、と。いや、それとも全力を尽くして感極まったのか。いずれにせよ、スタジオ解説の清宮さんも言ってたけど「胸を張って帰ってこいよ!」と思う。「頑張った。感動した」だけじゃなくて「次は決勝ラウンドで暴れようぜ」と思えるのは本当に素晴らしいことだ。
テレビで観る限り、他の選手たちはやはり涙を浮かべたり、逆に晴れ晴れとした笑顔を浮かべていたりと様々であったようだ。そりゃそうだろうな、と思う。何しろこれまでの日本代表が全く到達したことのない領域での戦いだったのだ。「目標(準々決勝進出)を達成できなくて悔しい」と思う選手もいれば、力を出し切った事に満足している選手もいるだろう。呆然としている選手もいたかもしれない。
応援する側も様々だろうが、僕としては、終わってしまって寂しいな、という気持ちが非常に強い。今回の日本代表は志の高さといいタレントの量や質といい準備万端ぶりといい、間違いなく過去最強のジャパンであり、実に応援しがいのあるチームだった。彼らがどこまで行けるのかどれだけやれるのか、もっともっと見ていたいと思わせる集団だった。いや、ホント、ここで一区切りついてしまうのは実に惜しい。
とにかくこの3週間余り、これまで僕がラグビーファンをやってきた30数年間の中では最も充実した期間だったかもしれない。日本代表の皆さん、どうもありがとう。2019年に向けて次の階段をまた一緒にのぼりましょう!!
(大会の総括については、またそのうち改めて。)
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