●『キッスで殺せ』
これはずっと前にWOWOWで放送された、ロバート・アルドリッチ監督『キッスで殺せ(完全版)』。私立探偵マイク・ハマーは深夜の路上で裸にコートをまとった女クリスティーナを車に乗せるが、何者かに襲われて女は殺され、ハマーも重傷を負ってしまう。回復後FBIの尋問を受け、事件の背後に陰謀を感じ取ったハマーは女秘書ヴェルダとともに真相を究明していく。彼は関係者を次々尋問し、クリスティーナと同居していたリリーという女を保護するが……。
不気味さというかダークさというか、独特の引っかかりを持つ映画だった。
筋立て的には、陰謀に巻き込まれた探偵が仲間・美女の協力と自らのタフさを武器に真相を追い、ついに追い求めるモノにたどり着く、といういかにもハードボイルドなもの。しかし主人公のハマーはこの手のヒーローにありがちな正義感や賢さを感じさせることもなく、終始何を考えているのかわからない風。肝心の調査・推理も暴力頼みで、正直魅力に欠けるのは否めない。しかも彼だけでなく、ほとんどの人物が共感を拒むかのように描かれているのであった。