●『ニッポンの音楽』
佐々木敦著『ニッポンの音楽』(講談社現代新書)を読んでみた。1960年代末から現在までの約45年間、日本のポピュラーミュージックにおいて脈々と続いているある重要な流れについて、日本音楽の「内」と「外」や1990年代に誕生した「Jポップ」、そして「リスナー系ミュージシャン」といったキーワードを用いて振り返る一冊。
この本が特徴的なのは、10年ごとに「物語の主人公」を設定してそのディケイドの音楽シーンをひとつの物語として語っていることだろう。70年代ならはっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)、80年代ならYMO(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)、90年代なら渋谷系(小山田圭吾と小沢健二、ピチカート・ファイヴ)と小室哲哉、ゼロ年代なら中田ヤスタカ、という具合である。
このような書き方は、描く対象がより明確になってわかりやすい反面、当然ながら多くのものを省略して削ぎ落とすことになるわけで、著者も書いている通り網羅的な歴史書や資料ではありえない方法論だ。ただ、読み物として考えればおそらく正解で、「主人公」の誰か1人にでも思い入れや興味があれば確実にツボに入る本となっている(逆に言えば、全くピンと来ない人も多いだろうが)。