ホームでは完勝!今後に期待も持たせ、4連勝達成!!

 

 

 試合前の見所は、なんといっても東北からはるばる駆けつけた仙台サポーターの応援だった。さすがに数はさほど多くないのだが、黄色いレプリカを着た数百人がコーナー付近に固まって長たすきを一杯に広げ、上下に揺れながら「べーがーるーたせーんだーい!おお!レッツゴーせーんだーい!!」と揃った声をスタジアムに響かせる様はなかなかの壮観で、歌が一区切りつく度に東京側のスタンドからも拍手が飛んでいた。4月に仙台スタジアムで見た光景を思い出す。3年前に東京がJ2で戦っていた頃とは大違いだが、2年前の浦和戦あたりでは既にテレビで黄色一色の光景を見たように記憶している。その間に何があったのだろう。

 

 キックオフ後、東京ゴール裏はいきなり「ルパン3世」のテーマ。前週神戸戦のいい流れをそのまま持ち込もうということか。そして、この目論見(笑)が成功したと言っていいのかどうか、東京の先制点は早い時間に入った。3分、左サイドに回った宮沢のクロスがDFに当たって浮いたところ、ゴール前の混戦でケリーと戸田が落ち着いてつなぎ、最後はアマラオが右足で蹴り込んで先制。まだ相手の足が地に着かない「いい時間帯」にゲットし、素晴らしい先制パンチとなった。

 もっともこれで一気に流れが東京に傾いた訳ではなく、仙台もDFラインを高く保ちつつ反撃を試みる。7分には藤山の後ろのスペースを鈴木健仁に使われ、パスを受けたマルコスのシュートがサイドネットに突き刺さった。9分には岩本テルのCKがゴール左上スミを襲い、土肥ちゃんがかろうじて枠の外へ弾き出す。11分にはDFライン前でボールを持ったアマラオがシュートを打つが、大宇宙開発(笑)。東京ゴール裏からは「ブランメルー仙台!」なんてちゃかしも飛んではいたが、この時間帯は両サイド、特にやや弱さの目立つ藤山周辺を安藤・山下・岩本に使われ、少々押され気味になっていた。ただし、東京は土肥が着実なキャッチングでピンチの芽をつんだことと、2人のセンターバックが強さを見せていたことで崩れる様子はなく、高く保たれた仙台DFラインの裏を狙っていくことで徐々に主導権をつかんでいく。

 16分、右サイドで加地、ケリー、アマラオらが少ないタッチで滑らかなパスワークを見せ、「セクシー東京!」のコール。20分、CKからのこぼれ球をジャーンがバックヘッドで流してケリー・戸田が飛び込むも高橋セーブ。24分にはマルコスがペナルティエリア正面で後ろからのロングボールを受けて小回りの利いたターン、シュートまで持ち込むが、ボールは枠外へ。26分、右サイドでケリーがヒールパスでDFを抜いてアマラオに渡り、左へ大きく展開してフリーの宮沢からDFの触れぬ決定的なクロスが入るが、走り込む戸田が惜しくもオフサイド。29分には自陣ペナルティエリア内で藤山が奪ったボールを石川が持ち上がり、右サイド駆け上がる戸田へアウトサイドキックで美しいスルーパスを通す(戸田がシュートふかしてノーゴール)。30分、バックパスに加地が詰めて高橋がキックミス、ケリーがDFと競って高橋の前にボールが落ちたところに再び加地が詰めるが、一歩間に合わず高橋セーブ。さらに34分には仙台の左サイド攻撃から入ったクロスを浅利がはね返し、カウンターの形に。宮沢から戸田にやはり好タイミングのスルーパスが通りかけるが戸田と高橋が交錯して得点ならず。このあたりの時間帯、アタッカーがボールホルダーをフォロー(あるいは追い越)してコースを作る動きがきちんとできていたため、パスがつながりまくり、横浜戦以来の非常にスムーズな攻撃を見ることができた。

 先制した後で流れをつかみながら追加点が奪えず相手の反撃を許す、というのは今季何度となく痛い目にあったパターンだったが、しかしこの日は幸いなことに「2点目の壁」は前半のうちに乗り越えることができた。36分、仙台陣で左サイドに流れたボールをアマラオが長駆追いかけ追いつき、安藤との一対一で数回フェイントを入れてから強いグラウンダーをゴール前へ。これはセンタリングともシュートともつかないボールであったが、ニアサイド走り込んでくる戸田の姿に惑わされたか、ボールは見送った高橋の脇を抜けてそのままゴールイン。何ともあっけないというか、敵失に助けられた印象ではあったが、ともあれ追加点は追加点。流れとともにスコアでも完全に優位に立つことになった。40分には加地の鋭いドリブルでとったCKからケリーが鮮やかなターンでDFをかわし、クロスにジャーンが頭で合わせてシュート(枠のわずか左にそれる)。そのまま東京ペースで前半が終了した。

 

 ハーフタイム、場内モニターで「マナー向上キャンペーン」の呼びかけ映像が流れたのだが、鈴木や伊藤のセリフが棒読みなのはまだいいとして、目線が完全にカンペに向かっているのはいかがなものかと思った(笑)。あれくらいは覚えてやってくれい、プロなんだから(笑)。

 

 後半頭から仙台ベンチが動き、安藤に代えて村上。シルビーニョを右サイド前方に出してより攻撃的な形に。開始早々、いきなりその村上のミドルシュートがゴールポスト左を抜ける。さらに4分にはオフサイド崩れで山下がDFラインの裏に出、土肥ちゃん飛び出すもボールに触れぬピンチ。スタンドで観ている側としては仙台の意欲的なラッシュにやや嫌な感じも受けたのだけれども(2点はセーフティーリードではない)、しかし、本当に脅威を感じる前に仙台は自らゲームのバランスを崩してしまう。5分、笛が鳴ってふと見ると、東京陣中央で茂庭とマルコスが倒れている。砂川主審はイエローカードの提示。数人で主審に詰め寄って抗議する仙台の選手たち。で、もう1回イエローが出て、すぐにそれが赤い色に変わった。どうも(その場面は見逃したのだが)マルコスが茂庭に乱暴を働いたらしく、さらに彼の抗議に対して2枚目で「合わせ技退場!」だったらしいのだが、砂川主審が抗議する選手から逃げながらあらぬ方向へ(笑)カードを掲げたために誰がどう警告を受けたのか分からず、見ていて非常に困惑させられた。何のためにカードを使っているのだ、と言いたい。

 ともあれ、これで仙台は生まれかけていた反撃の芽をつぶし、再び東京ペースに試合が戻った。8分、敵陣左サイドに生まれたスペースへ広々と展開し、中央でのアマラオのつなぎからペナルティエリア付近の石川へ。石川は後ろから上がってくる加地をおとりにしつつ思い切ったシュート(高橋キャッチ)。9分にはケリーが自分の股を通すようなトリッキー・パスで宮沢をフリーにし、スルーパスに対して自らDFと併走しつつ飛び出すが、センタリングを狙ってDFに防がれてしまう。11分には藤山が左サイドから切れ上がってゴール右上をかすめるシュートを放つ。こうなると、もうボールとり放題、パスはつながり放題、何でもやり放題、という感じであった。12分にはスルーパスに対し戸田が左からDFライン裏へ抜けるが、高橋が勇気ある飛び出しで防ぐ。仙台もDFラインが次第に下がり気味になる一方、東京が上がってきた分両サイドからのカウンターでチャンスらしい形は何度か作るのだが、しかしクロスが上がったところでいかにもアタッカーの数目が足りない感じ。15分には右サイドをえぐった山下からペナルティエリアへグラウンダーのクロスが入るも、合わせるアタッカーがおらず加地が軽々とクリア。18分にはアマと藤山の連携ミスからカウンターの形にされ、テルからファーサイドのリカルドに渡るが、再び左へ折り返そうとしたところを戻ったアマにカットされてしまう。

 仙台が引き気味になったのを見て、東京側も選手交代。戸田に代えて佐藤由紀彦投入。石川が左に回り、「ついにやってくれた」という感じで右由紀彦・左石川のフォーメーションが実現した。23分には由紀彦のダイレクトパスで右サイドを加地が突破、アマへドンピシャのグラウンダークロスが入る。残念ながらシュートは枠外にそれたが、しかしワンタッチで流れを変えられる由紀彦らしい好プレーにスタンドは沸いた。25分前後には仙台が前に出てこないのを見て、東京のバックラインとミッドフィールドが人をくったようなパスを延々と回し続ける場面も。27分、中央の由紀彦から左の石川にパスが通り、マイナスのクロスからケリーがシュートを放ってボールがバーの上を通過。期待された組合せのアタッカー陣はきれいなタッチのパス回しでチャンスを量産、美しいサッカーが展開されていたのだが、惜しむらくはシュートが枠に飛ばなかった(笑)。28分、GK高橋が詰めたアマラオにボールを奪われかけ、「やっちゃった」というプレー。案の定、以後東京ゴール裏からは「ノリオ!」コールが連発されることに(笑)。直後には由紀彦が頭でボールをカットし、そのまま右サイドを突破。中央のアマラオ目がけて鋭いクロスが入るも、わずかに届かずクリアされる。恐ろしいことに、由紀彦がボールをさわるとほとんどの場合チャンスに直結するのであった。

 一方の仙台は千葉に代えて山田を入れる(※追記)も、散発的なカウンターだけではあまり怖さは感じられず、次々とジャーンや茂庭の餌食になっていった。全くもって、勝敗だけを考えるならほとんど何の心配もなく観戦することができる試合。由紀彦は右サイドでのえぐりに加えてゴール前に入ってボールをほしがり、積極アピール。相手にアチョーキックをかましてイエローカードくらっていたのもご愛嬌か(笑)。しかし余裕のスタンドもさすがにもう1点くらいは欲しく、30分には「点とれー、東京!」、36分には「こっち(サポーター側)で点とれ!」、38分には「そろそろ点とれ!!」とゴール裏から催促(笑)が飛ぶ。その声に応え、39分には超点ほしそーな由紀彦が超思い切ったロングシュートを狙い、やっぱり超宇宙開発(笑)。40分には由紀彦のパントパスがDFと併走するアマに渡ってシュート、ノリオが意地の好セーブで弾き出す。しまいにゃジャーンまで上がって44分に加地の浮き球でゴール前に飛び出すが、オフサイドでノーゴール。3点目こそ奪えなかったものの最後まで攻めの姿勢を失わなかった東京は、宮沢に代えて下平、さらに累積警告2枚のケリーに代えて喜名を入れ、盤石の態勢でタイムアップを迎えた。ホームで「今度こそ」の完勝で、4連勝である。

 

 ヒーローインタビューは、もちろん2得点のアマラオ。水原アナのハイテンションの質問に対し、初めは日本語で答えていたくせに途中からポルトガル語なんぞ使いだし、当然スタンドからは「日本語しゃべれ!!」の野次が飛ぶ(笑)。で、最後にはホントに日本語でしめていた。さすがジャパニーズ(笑)。

 

 ベガルタ仙台は、セカンドステージでの失速ぶりも何となくわかるような試合だった。立ち上がりフワフワしたまま、あっさりと失点。その後DFの頑張りもあって1点差で抑えていたのをGKノリオのミスっぽいプレーで失点。ハーフタイムで立て直しを図って、さあ後半反撃だ!、というところでマルコスの子供じみたプレーで数的不利に。最後までちぐはぐなままゲームを終えてしまった。磐田戦あたりでやや立ち直りを見せたかと思いきや、未だ1stの快進撃が嘘のような悪い流れの中にいるようである。まあ今年は大目標のJ1残留がほぼ確定しているので変に戦い方を変えることもないと思うが、こういうステディなスタイルと一部タレントの底力で勝ってきたチームは、近い将来そこからのステップアップに苦しむことになるのだろう(東京が今季そうであるように)。山下については全力で引き留めを図るとして、補強すべきポイントは両SBとGK、それにFW・CB・左サイドハーフの控えあたりか(そう考えると、やっぱり層が薄すぎるな、このチーム)。何といっても熱狂的なファン・サポーターがついているチームであるし、今年の活躍でスポンサーも増えればさらなる上昇も望めるが……。さて、これから東京(あるいは浦和)になるか、それとも札幌になるか。

 FC東京にしてみれば、攻撃時のフォローし合う動きの良さと守備の安定感に敵失を加え、今シーズン最も安心して観ていられる試合であった。終始攻撃する姿勢を失わなかったこと、にも関わらず後半には相手をはぐらかすようなパスワークもあり、この日に限っては技術・戦術に加えて冷静さと余裕でも相手を上回っていた。ファン待望の由紀彦−石川併用にも目処がたち、とてもハッピーな試合であったと言えるだろう。もう2点くらいとれればもっとハッピー(笑)だったが、10人になった仙台はDFラインが下がってしまい、その分使えるスペースも限られたので決定機の数は意外と増えなかった(ただし、その分失点する危険も減った)。ま、それでももう1点くらい……とは思うけれども(笑)。興味深いのは、次節以降サブも含めてどうメンバーを組んでいくかということ。好調なだけに先発はそのまま、という考えもあるが、やはり由紀彦と石川の併用というのは攻撃の厚みを考えると捨てがたいし、何より原監督のコンセプトにもピッタリだと思うのだ。さあ、どうなるか。

 個々の選手では、2得点のアマラオは涼しい季節になって90分動ける体力を取り戻した様子である。このままの調子で行けば、あと1〜2年は本人も周囲も続ける気になってくるだろう。ケリーはシュートを枠に飛ばしてほしい(笑)。石川は純粋な攻撃だけでなく、スピードで相手ボールを奪取しに行く動きでも貢献していた。戸田もいい動きをしていたが、どうも得点に恵まれない。由紀彦は攻撃のリズムを一瞬で変えられる貴重な存在だ。中盤と守備陣はいずれも問題なかった(安定しすぎて目立たないくらいだ)が、序盤藤山のサイドがかなりやられていたのはちょっと気になった。場合によっては、また左に茂庭を置くことも考えた方がいいかもしれない。

 これで今期初の4連勝で、順位も2位ガンバと勝点2差の5位まで上昇。正直言って首位のジュビロに追いつくのは(直接対決がないだけに)苦しいと思うのだが、2位までは充分狙える状況だ。まずは残り4試合で勝点6以上とって過去J1での最多勝点に並び、その上初の賞金獲得を目指したいところだ。今年苦しんだ上でその域までたどり着ければ、チームにとっても大きな自信になり、「さらに上」を目指す機運も高まるだろう。まずは次、アウェイのグランパス戦である。

 

 

2002年10月26日 東京スタジアム

Jリーグセカンドステージ第11節

 

FC東京 2−0 ベガルタ仙台

 

[追記]
 ここの選手交代について、帰りのバスの中でつれが「どうして仙台は財前を使わなかったんだろう?」と質問してきたので、次のように答えておいた。
 当然の事ながら仙台の選手交代はマルコスの退場に大きく影響されたもので、完全な東京ペース下での数的劣勢ともなればしっかり守って東京DFの裏を突くカウンターしか活路はなく、それに見合った特長を備えた山田の投入となったのだろう。もし前半と同様に高いDFラインからの攻撃姿勢を保つことができたならば、おそらく前で守備陣をかき回せる財前の出場もあり得たのではないだろうか。
 逆に、東京の戸田の交代はある程度予定されたものだったと思うが、しかしあの時間帯戸田は前で狙うべきスペースを失いかけており、クロス職人でかつ繊細なコンビネーションで敵を崩せる由紀彦の方が状況に適していたのもまた事実であったろう。
 フットボールの攻防とは、かように綱引きのようなものなのだと思う。


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