ホッと一息か。東京、前半の猛攻で札幌に勝利!
ケツに、失礼、尻に火がついてきたというところだろうか。W杯中断明けのFC東京、初戦こそ広島に4−0で圧勝したもののその後は磐田に完敗し、さらに前節は「ここにだけは負けちゃいけない」ブービーヴェルディ相手に痛恨の逆転負け。このままでは、三浦文丈の負傷からいきなり失速したシーズン序盤の二の舞である。おまけにこの日は前日の試合でヴェルディが快勝、東京から勝ち点にして上下3点に6チームがひしめく状態で試合を迎えることになった。相手は最下位コンサドーレ札幌。ここが浮沈の分かれ目、負けられない試合であった。
メンバー発表。東京はジャーンが出場停止で茂庭が先発。ディフェンダーの控えは小林稔だが、もし故障がちの茂庭が途中退場を余儀なくされたらセンターバック藤山とかになるのか?恐ろしいことである。攻撃陣では、御大アマラオが2戦連続で先陣をきることに。夏の連戦で疲労が心配だが、なんだかんだ言って代わりがきかないのだからやむを得まい。札幌の方はしばらく試合を観ていないのでよく分からないのだが、昨年夏に札幌ドームで見たメンバーが半分くらいしか残っていないあたりに岡田辞任以後の激動がかいま見えるような。小倉の名前をまた別のチームで見てしまったことには思わずため息が出た。いつもアマラオの代役が問題になるたびに、彼のことが脳裏に浮かんでしまうのだ。縁があればねえ……。あと、レフェリーは長田さんで、正直かなり不安だった。しかし最近ネットでレフェリーの話題が多くなった(それ自体は悪いことではない)せいもあって主審の名前(「恩氏」とか「石山」とか「柏原」とか「梅本」とか「奥谷」とか。多いな(笑))で妙な先入観を持ってしまいがちな面もあるので、「公平に見よう」と自分に言い聞かせる。
キックオフ。まずちょっと驚いたのは、札幌が4バックにしてきたこと。DFラインの前にビジュ・森下が並び、サイドに2人の外国人、そしてトップ下に山瀬で1トップが小倉。両サイドの位置取りは結構高く、東京のフォーメーションにも似ている布陣。柱谷監督が試みていた4バックシステムはその後放棄されたと聞いており、意外な印象を受けた。東京のサイド攻撃を消したかったということなのだろうか。しかし、この作戦は失敗に終わる。急造4バックによるライン防御は全く機能せず、序盤から東京アタッカーがオフサイドをとられることなくDFライン裏に飛び出す場面が目立った。5分には下平のパスから戸田が裏に抜け(GK佐藤前に出てキャッチ)、10分には戸田が再び裏に出て一対一からシュートを放つ(佐藤の体に当たってノーゴール)。一方の東京はMFとDFラインの間が狭く保たれており、センターサークルに近い高めの位置で複数人で守備に行く形ができていた。茂庭も素早く体を寄せるハードなプレーで札幌アタッカーを自由にさせない。山瀬・小倉のところでプレッシャーをかける分両サイドはフリーになるが、そこにすかさず配球できる気の利いたプレーが札幌には欠けていた。
1点目が入ったのは11分。アマラオが突破してとった左CKのはね返りを宮沢が拾ってゴール前へ放り込む。このボールを茂庭が競り勝ち、またしてもドンピシャのタイミングで飛び出した戸田がGKと一対一に。戸田のどう考えても強すぎる(笑)シュートは2度にわたって佐藤に防がれるが、動けぬ札幌DFをしり目に詰めていたケリーが頭で押し込んでゴールイン。鮮やかではないが、しかし苦労をせずに取れた印象の先制点だった。その後も東京の守備は機能し、ボールをとるや中盤で時間をかけずにDFの裏を狙っていく。21分、ケリーがミドルシュートのこぼれ球を自ら拾い、右サイドの石川へ。石川はオーバーラップした加地に渡し、加地は一旦ペナルティエリアに入った後ディフェンダーが寄せてくるのを見てスライディングパスで石川へ戻す。GK佐藤が前へ出かけたのを見た石川はこのボールをダイレクトでシュート、柔らかく放物線を描いたボールが佐藤の頭上を越してゴールネットを揺らした。U21代表の才能が光る、技ありの2点目。先週のこともあるので、早めに追加点を取れたのはとてもとても大きかった。
2点目をとられ、さすがに札幌が反撃に出る。4バックを崩して和波が上がり気味になり、森下・ビジュから意図的にサイドへ配球して圧力をかけてくる。東京はディフェンダーが4人いるが、両サイドはあまり守備力が高くないためにこの策は正しいように思えた。29分にはジャディウソンのFKがゴール右隅を襲い、土肥が横っ飛びでファインセーブ。その他にも東京はファウルが増え、セットプレーからのこぼれ球にヒヤリとする場面がいくつかあった。
そんなイヤな時間帯、覚醒した戸田がまたやってくれた。33分、FKの早い仕掛けからつなぎ、ケリーの裏を狙ったパスでまたまた戸田が抜け出し、佐藤と一対一に。戸田は今度はらしからぬ(笑)異様な落ち着きを見せ、しっかりボールを止めてから佐藤の右側を抜いてゲット!3−0となった。そしてまことにタイミングの良いことに「東京ブギ」の万歳が終わった直後、ドドドドーンと神宮球場の方角で花火が上がり、ゴール裏からは「たまや!」コールも起こって場内は最高の雰囲気に。まあ、「がんばれサッポロ!!」コールはいくらなんでも(まだ半分以上時間が残っているのに)やりすぎだろうと思ったし、そういうことをすると苦戦の影が忍び寄ってくるのが勝負事であろう。39分に戸田がスルーパスで裏に出て一対一(いったい何度目だ?)になり、終了間際には加地が小倉にかわされ一対一の場面を作られながらともにGKがセーブし、3−0のまま前半が終了した。
後半、札幌は和波に代えて酒井を投入、両サイドをさらに攻撃的にしてきた。開始直後いきなり右サイドでフリーの酒井にパスが通り、シュートがゴールわずか左を抜ける。さらに森下も前がかりになり、前半とはまるで攻撃にかける人数の違う札幌がペースをつかんだ。東京は右サイドから逆襲を狙うも、次第に攻撃が単発的になっていく。9分、右サイドのショートコーナーからペナルティエリア角付近でバーヤックが左足でシュート。ボールは外から巻いてゴール左上に突き刺さり、スコアは3−1に。このプレーの際にボールホルダーに寄せに行っていたのは宮沢1人で、それでは見事なシュートを打たれてもやむを得ない。ちょっと集中力も欠いていたかもしれない。
さらに札幌の攻撃は続く。東京は失点前後の時間帯に運動量が低下、各自が至近のボールにしか反応しなくなった。ウイングハーフの中への絞り・ディフェンダーの前へのチャレンジがなくなったことでボランチ2人は孤立してボールを「追いかけ回す」形になり、高い確率で抜かれてしまう。そうすると山瀬の中央突破を警戒してディフェンダーは中へ集まり、そこでサイドへ開かれるとたちまちピンチになってしまう。DFラインは下がりっぱなしになり、土肥ちゃんが飛び出しにパンチングにキャッチに大忙しに。14分にはCKをすらされたところでマークがずれ、ジャディウソンが頭でミートするが幸いボールはバーの上を越えた。直後には右サイドを崩され、ファーサイドの酒井が飛び込んでシュートがポストを直撃(オフサイドだったが)。さらに追い打ちをかけるように、石川が脚を痛めて動きが極度に落ちる。ここで失点していたら試合はわからなかった。苦戦。
25分、東京ベンチが動く。石川に代えて星を投入。ゴール裏からは「石川温存!」のコールも飛んでいたが、それほど余裕のある展開でもなかったような。ともあれ、この交代は非常に効いた。まず動けなくなってDFラインに吸収されがちだった石川が前よりのポジションをとれる星に代わって、全体のバランスがぐっと良くなった。また、サイドにしっかり基点を作れる選手が入ったことで攻撃時に大きな展開からのチャンスが出始め、試合は再び均衡状態に入っていった。32分には右サイドを突破した星のクロスでニアサイド戸田がジャンピングヘッド、惜しくも佐藤にキャッチされたが大いにわかせるプレーを披露。で、戸田はここで脚がつってお役ご免。大きな拍手を受けながら福田と交代した。戸田はハットトリックした広島戦の時も同じような交代の仕方だったような気がするが、もしかして狙っているのではあるまいな(笑)。まあ、それだけ走っているということなのだろう。代わって出た福田はロングシュートを放つなど積極的なプレーぶりだったが、気の毒だったのはもう星以外の選手がバテていてアシスト役が足りなかったこと。本当はトップに張ってクロスを待ちたいんだろうな。
終盤になると、さすがに両チームとも疲れが出てスピード感が無くなった。札幌はFW曽田を投入するが流れを取り戻せず。東京はフラフラの宮沢に代えて喜名を投入。喜名は左右によく動いてチャンスメークするも、もはやアタッカーの足がついて行かない(笑)。ロスタイムになると札幌が必死にクロスを入れ、それを東京ディフェンダーが必死にかき出す。小倉のヘディングシュートがゴール左下を襲い、土肥ちゃんが横っ飛びで手に当てて防ぐ。結局3−1のまま試合が終了した。
今日のコンサドーレは、前半の3失点、それも最初の2失点が全てだった。東京の長所を消そうとしたのは分かるが、そのための策を実行する準備に欠けていた。後半布陣を戻して立て直したことからするといささかもったいないようにも思えた。チーム再建途上だけに、そのプロセスを一旦止めて勝ち点を取りに行った判断は後になって問われることになるかもしれない。GK佐藤は奮闘したが、あれだけ一対一の場面を作られてはどうしようもない。そして失点はディフェンダーの能力というよりシステム・訓練の問題だろう。森下・ビジュ・両外国人は飛び抜けた能力はないがちゃんと仕事はしている。途中出場の酒井は突破役を果たしており、先発で使われないのは攻守のバランスを考えてか、それとも途中出場でアクセントをつけたいのか。山瀬は真ん中で頑張っていたけれど、もう少し周りを使い周りに使われてチャンスを作らないとなかなか決定機には至らない。小倉は……ボールの収まりは相当にいいから、あとは使いようだと思うのだけれど。こうしてみると選手もそれなりに粒が揃っているし、決して戦えない戦力ではない。1stステージのうちに揺るぎない戦い方の柱を構築できるかどうか。
FC東京にしてみれば、状況的にも内容的にも、とにかく勝てて良かったという試合だった。前半は札幌の弱点をうまく突いて3得点(「あれは東京の攻撃がいいんじゃなくて札幌のDFが弱すぎる」的な物言いをする人もいるかもしれんが、しかし相手の弱い所をついて勝つのがゲームというものだ)。後半は札幌優勢の展開で0−1。今季の東京らしいと言えばらしい勝ち方だった。もう、夏場の連戦では後半バテが来るのは仕方がない。あとは落ち込みをどれだけ戦術や采配で補うかの問題だが、今日は前節と異なり交代枠も3人使い切ったのが良かった。攻守にわたってボランチに大きな負担のかかるシステムになっているだけに、いくら宮沢といえども動きが落ちた時に代えねば全体が機能しなくなってしまう。
この日の殊勲者は、何といっても戸田だろう。ちょうどここ数試合点に絡むコツをつかんできたところで札幌の急造4バックが相手。いわば狩りを覚えた若い狼の前に草食動物が姿を現したようなもので、GKと一対一のチャンスを1人で量産し、2得点に絡んだ。トライ&エラーがきちんと実を結ぶのは見ている側も嬉しいものだ。石川は札幌の戦術との関係でいつもより突破する場面は少なかったものの、あっと驚くゴールを見せてくれた。「1年限り」というのがますます残念に思えてくるね。マリノスは彼を手放す気など毛頭無いだろうが、彼自身の気持ちはどうなんだろう。21歳だから移籍金の係数は7.5か……ナビスコ優勝しないと駄目かな。あと、星は苦しい時間帯に途中出場してしっかり自分の役目を果たし、チームを助けた。守備陣では、土肥ちゃんは相変わらずのゴールエリア番長ぶりを発揮。茂庭はジャーンほどの強さはないものの、しつこく体を寄せるディフェンスでそれなりに穴はふさいだ。あとは攻撃の方向を見極める判断かな。下平はむしろ攻撃面で頑張っている感じだけれども、守備時にもう少し動いて宮沢を助けてほしいと思う。
サポーター・ファンも選手もスタッフも、とりあえずホッとしただろう。でも、まだまだ連戦は続く。
2002年7月28日 国立競技場
Jリーグファーストステージ第11節
FC東京 3−1 コンサドーレ札幌
[追記1]
長田主審は、普通に試合をコントロールできていた。笛の遅い場面はアドバンテージ絡みもあったし、特に問題なしでしょう。[追記2]
この日は試合の楽しさの一方で、後ろの席に座っている奴が最悪だった。感想はこちら(←かなり感情的)に書いたが、みんなも、あんまり周りの迷惑になるようなヤツをスタジアムに連れてくるのはやめよう。1人のお馬鹿さんのせいで観戦が嫌になる人が出てしまったら、それはクラブの損害に他ならないのだから。