勝負強さの証明か?劣勢の中、シーソーゲームを制す!!

 

 さて、今回は「因縁の」浦和戦である。1stステージの駒場スタジアムでは3−1と東京が快勝したことに加え、レフェリーの不安定なジャッジに東京サポーターの悪ノリもあって大荒れの試合となり、試合後アウェイ側スタンド(「出島」ってヤツですか)をレッズサポが取り囲む事態となった。私はその日観戦していなかったので当初「まあ東京側もやりすぎたかな。でも、頭きたからって囲んだり石投げたりしちゃいかんだろ、やっぱり」ぐらいの感想しか持っていなかったのだが、その後の川淵「ファシスト」チェアマンのくそ依怙贔屓偏見発言を見るに及んで今度は自分がエキサイト。オフにツゥット(現:トゥット)をとられた恨みもぶり返し、「あんなチームにぜってー負けっかよ!!」と意気込んでこの日を待っていたのだった。エメルソン加入のニュースに少々ビビりながら(笑)。

 

 スタジアムに到着すると、この日は「フェアプレーデー」だそうで、その旨アナウンスされていた。一瞬「さては前回の対戦を踏まえて、両サポーターの衝突を避けるためにJリーグが企画したのでは」という考えが頭に浮かんだが、まさかそんなことはないわな。ただ、「選手もファンの皆さんもレフェリーに従い」云々のアナウンスについては、先日の仙台3人退場事件を念頭に置いたファシストの指導によるものと思われる。

 試合前練習で両チームが登場し、メンバー発表。浦和は永井がスタメンで先発し、「看板飛び越え男」アドリアーノはスタメン落ち。ボランチの鈴木というのはよく知らない選手だ。サブに福田が入っていなかったのがちょっと残念。東京はいつもの通り。サブに久々に戸田が復帰。……という話は、実はどーでもいい。前々から気になっていたのだが、相手のメンバー発表の時とかにやたらめったらブーイングするの、やめない?この日で言えば、東京サポーターがトゥットにブーイングを浴びせるのはある程度仕方がない。互いのサポーターに対しても、色々思うところがあるだろう。だけど、別に浦和の選手やスタッフに恨みがある訳じゃないし、彼らへの無条件のブーイングは不毛じゃないかと思う。「You’ll Never Walk Alone」やヒーローインタビューがレッズサポのブーイングでかき消されちゃったりするのも、気持ちのいいものではないだろう。肝心なときに効果的なブーイングをするためにも、出し惜しみして時と場所をよく考えた方が良いと思うのだが、どうだろう。

 キックオフ直前、浦和側ゴール裏から地響きのような大歓声が上がる。この日は2万7千の観衆が入っていたのだが、おそらく半分近くがレッズ側の応援だったのではないか。ゴール裏だけ見ても、東京側は1階席だけの占有だったのに対し、浦和側は1・2階席ともほぼ全て埋まっていた。声の量でも向こうの方がずっと上。試合前の「こんちくしょう」という気持ちもどこへやら、ひたすら感心してしまった。というか、実は浦和戦を見に行くときはいつもレッズサポの大声援が密かに楽しみだったりする。この日はずっと生で聞きたいと思っていたトゥットの応援歌(「ミッキーマウス」のテーマ)も聞けたし、サッカー場らしい雰囲気になって盛り上がったし、それでいて試合の結果はご存じの通りということで、まあ良かったかな、と(笑)。

 キックオフ。開始直後、アウェイ側の大声援に押されたか東京の選手の動きがどうにもぎこちない。前方へのパスが全くつながらず、次第に押し込まれ始める。6分にしびれをきらした藤山が福田とのワンツーからペナルティエリアへ入っていくがラストパスを受けたケリーのシュートはDFにブロックされ得点ならず。7分にはトゥットのタックルで倒れた後エメルソンにボールをぶつけられた文丈が激怒してエメルソンを突き倒し(運良くお咎めなし)、荒れる試合を予感させる。しかし東京の序盤の見せ場はこのくらいで、以後しばらくは浦和の時間帯が続くことになる。

 浦和は超速2トップ+永井の3人のみでも充分破壊力のある攻撃を構成できるため、3バック(場合により5バック)+ダブルボランチ(うち1人が前方へのパス能力のある阿部)と後方を厚くすることができる。由紀彦もスペースを与えられないため東京はサイドに散らすこともままならず、ダイレクトパスで中央突破を図っては失敗が続いた。入れ替わり立ち替わり攻め寄せる2トップ+永井のスピードに対し東京は小峯を中央に入れて対処するがどうしても下がり気味にならざるを得ず、そうなると今度は中盤で阿部を自由にしてしまい好パスからピンチを招き、同時に攻撃にも悪影響が出る。おまけに焦れた藤山・伊藤が前目にポジションをとるとその裏を山田・城定が狙ってくる、という具合で、ひたすら東京陣でのプレーが続いた。

 13分、後方からの長すぎる浮き球にエメルソンが走り込んだ場面、背中で押さえて処理しようとしたサンドロがボールをさらわれかけてボールがゴールマウスをかすめる。普通のFW相手なら余裕を持てるシチュエーションであり、奴と対戦したことのないサンドロにしたら全く未知の体験であったことだろう。何なんだ、あのスピードは。さらにその2トップは前から積極的にプレッシャーをかけ、東京DFにも余裕あるパス交換を許さないのだった。15分には下がってボールを受けたトゥットからゴール前に走り込んだ山田に決定的なパスが出るが、福田必死の戻りでクリア。そして17分、CKのはね返りを拾った鈴木のミドルシュートがゴール右上隅に突き刺さり、ついに浦和先制。混乱する東京DFとはまことに対照的な、若手らしからぬ落ち着いたプレーぶりが光った。さらに20分には浦和アタッカーの速いボール回しに東京DFが全くついていけず、山田がフリーでセンタリングを上げるが、永井のヘッドはバーの上に。

 このまことに嫌な流れを断ち切ったのは、ここのところ絶好調の由紀彦だった。21分、中盤での競り合いからこぼれたボールが珍しく中央寄りに位置していた由紀彦の足元に転がる。由紀彦は少しだけドリブルで持ち上がった後に思い切ってロングシュート、ボールは横っ飛びになったGK西部の手をはじいてからポストに当たり、ゴールに吸い込まれていった。今季の「ニュー由紀彦」を象徴するような、劣勢からチームをすくい上げる豪快なプレー。才能の開花を目撃するのは、同じチームを応援し続ける上での大きな醍醐味である。この一撃で、一時的ではあるが試合の流れが東京側に傾くことになった。

 24分、自陣中央でトゥットからボールを奪った小峯がチェックに来る相手を低い重心(笑)とパワーを生かして強引に抜き、右サイドでスタートをきったフリーの由紀彦へパス。由紀彦はやや減速してから相手DFの間をぬう絶妙のグラウンダーをアマに送るが、シュートはDF石井にブロックされて惜しくもノーゴール。そして29分、カウンターの態勢に入ってケリー→由紀彦→ケリーとつないでゴール前に進み、ケリーがDFを引きつけてから左サイドの福田へ。福田は中寄りに大きく切りかえして飛び込んでくるDFを交わし(ここの動きの鋭さが、やっぱりFWだ)、思い切り右足を振ってシュート。ゴロで飛んだシュートはそれほど強くはなかったが、バウンドに惑わされたか西部がファンブルし、詰めていたケリーがDFと競り合いながら押し込んだ。生命線である速攻が炸裂し、東京、逆転に成功。ここら辺のたたみかけ方が最近の好調の所以ではあるのだろう。

 その後は再び浦和の攻撃の圧力が強くなって東京は自陣に押し込まれ、小峯が素早く足を動かし体で当たり手で押しまくりおいおい)、何とかしのいでいく。38分、サンドロがペナルティエリア外正面でファウル、一番危ないところでFKのピンチ。阿部は低くゴール左隅直前で弾むまことにいやらしいシュートを放つが、ここは我らが土肥ちゃんが横っ飛びでかろうじてはじき出した。42分には右サイドに流れたエメルソンに小峯・福田が2人で寄るも止めきれずファウル、FKを土肥ちゃんが必殺猫パンチで逆サイドに弾き出す。44分にはトゥットのミドルがゴールポストわずか右に外れる。とにかく怖いシーンの連続で、その間東京は2本ほどロングシュートを放ったのみ。そして東京サポーターのほとんどが「このままハーフタイム!」と思っていたであろうロスタイム、ペナルティライン付近で混戦となり、そこからトゥットが右サイドへパスを出すと、なぜかエメルソンがフリーになっていた。懸命にブロックに行く福田の寄せも届かず、エメルソンは得意の右足で逆サイドに突き刺した。同点。「あ〜あ」という空気が東京側スタンドに広がる(浦和側はもちろん狂喜)。昨年札幌に在籍していたエメルソンが無理な体勢からもきっちり枠に飛ばしてゴールを略奪するシーンを散々見せられていた者としては、角度のないところとはいえ「そこでフリーにしちゃ何の意味もないんだ!」と叫びたい気持ちになった。エメルソンはスピードばかりが強調され、従ってつい裏をとられることだけを警戒してしまうのだが、彼の真の凄さはボールを持ってからの動き・シュートにある。とにかくボールをもたせちゃいかんのだよ。いずれにせよ、最悪の雰囲気で前半が終了することになった。

 

 後半は立ち上がり一進一退の攻防となったが、4分にエメルソンの狙いすましたシュートがバーを叩いてからはまたしても浦和が一方的に押しこむ展開に。応援でも圧倒されっぱなしの東京ゴール裏はレッズサポのいつもの応援テーマ(「大脱走のテーマ」)をパクッて応援してみたりもするが、試合の流れが悪い中ではあまり心楽しくもならない。12分には左サイドを疾走するエメルソンに小峯が完全に振りきられる場面も見られた。東京は13分に喜名を投入(浅利OUT)してボールキープ率という点ではやや改善が見られたものの、劣勢に変化はなかった。20分前後にはFK・CKの連続をギリギリのところでしのぐ。東京は攻撃も全く散発的で、全体が引きすぎの中孤立気味の福田や由紀彦が無理なドリブルを挑んではとられ、「手数をかけないにも程があるだろ」という印象。相手陣で後ろから倒された由紀彦がファウルをとってもらえないなどジャッジもやや東京に辛めの印象で、勝機はほとんど見えなかった。

 しかし、23分、大熊監督は福田に代えてラッキーボーイ(「ボーイ」っつー歳でもないけど)加賀見を投入。この数試合、彼の投入がキーポイントとなって東京は勝ち点を積み上げてきたのだが、この試合でも不思議なことにここから数分間は東京がペースをつかむことになる。25分、加賀見が左サイドからセンタリング、ファーの由紀彦が折り返してケリーが飛び込むチャンス(西部キャッチ)。そして27分、藤山からペナルティエリアやや外の加賀見にパスが通り、キープ。加賀見は浦和DFのオフサイドトラップのタイミングを見計らって裏へ出ようとする由紀彦にドンピシャのタイミングでスルーパスを出し、由紀彦が飛び込んでくる西部をひらりとかわしてゴールライン際で粘り、センタリング。これはゴールライン上でカバーに入った井原が小さくクリアするが、それをペナルティエリア内に走り込んできたケリーがダイレクトでキック。シュートともパスともつかないボールがやはりゴール前で待ちかまえていたアマラオの足元に入り、アマがゴールど真ん中へ蹴り込んで決めた。3−2。ホント、今の由紀彦と加賀見は頼もしい。

 残り20分ほどのところで勝ち越した東京は、いつも通り専守防衛態勢に。この日は元々引きすぎの感があったが、ここからは全体的に輪をかけて上がらなくなり、ボールをとっても全くフォローが続かず、プレー位置・ボール支配ではまたしても圧倒的な劣勢に立つことに。31分、自陣右サイドでトゥットと競り合った喜名がゴールキックをとろうとして体を入れ替えられピンチになり、思わず「セーフティに行けや!」と叫ぶ。一方、浦和は36分に城定を代えてアドリアーノ投入(スタンドの一部からは「オーレーオレオレオレー!バ〜カ〜!バ〜カ〜!」のコールも(笑))、再び追いつくための手を打つ。ところが、ここから浦和の攻撃のペースが思うように上がらない。攻撃スピードへの免疫ができたのか東京DFがいつものペースを取り戻したのだ。小峯が接近戦を制し、伊藤が2トップの前でボールをカットし、危ない場面ではサンドロがカバーリングに現れる。そして怖い縦のボールは土肥ちゃんが落ち着いて処理。40分を過ぎたあたりで苛ついたトゥットとエメルソンが相次いで警告をくらい、勝敗はほとんど決した。終盤東京はチャージをくらうたびになぜか選手が転がりまくり(笑)、お久しぶりの戸田も投入、小峯が死ぬほど余計なイエローをもらったりケリーがよせばいいのにキープせずゴールを狙う場面もあったが(笑)、きっちりと時間を使い切ってタイムアップを迎えた。試合後、両ゴール裏の雰囲気が対照的であったのは言うまでもない。

 FC東京は今回終始ボールを支配される苦しい展開だったが、勝負所できっちり得点を決めて大きな勝ち点3をものにした。守備の方では2トップ+永井にかき回されながらも危ない場面ではポジションを問わず体を張り、何とかしのぎきった。2点目はともかく1点目は予期しがたい相手の素晴らしいシュートによるもので、そういう意味では2失点ながら及第点と言えるだろう。特に小峯はエメルソンにはやややられ気味(まあ、今の日本に一対一で奴を止められるDFはほとんどいないが)でもトゥットの方は接近戦で抑えきり、勝利の立て役者の一人となった。一方攻撃の方は、数少ないチャンスを生かして確実に点数を積み上げた。好調の由紀彦は、得意のサイド攻撃はほとんど見られなかったものの、むしろいつもより中央寄りの位置でキレた動きを披露、3得点全てに絡む活躍。また、先週イマイチだったケリーも狭いスペースにおける巧みなドリブルで浦和を苦しめた。ラッキボーイ加賀見も決勝点の場面で冴えを見せ、もはやサブには欠かせないと言って良いだろう。ただ、全体的に超速2トップを警戒しすぎて引きすぎ(パスの出所もなかなかおさえられず)、大半の時間帯主導権を相手に渡してしまったのも事実。持ってる武器は強力だが種類は少ない浦和だから何とかなったとも言えるのであって、これから対戦する上位陣相手にこれだけ押しこまれるとさらに苦しい状況になるだろう。

 浦和レッズは小野の移籍後エメルソンを獲得、攻め手を少なくして勝ち点を拾う「残留モード」の戦術を採用しているようだ。確かに、エメルソン・トゥットの2トップは迫力充分。人数をかけずともそれなりの得点力があるということは守備に人数をかけられるということでもあり、資金的に問題のあるチーム(三菱は苦しいだろう、今)が「とにかくJ1にとどまる」ことを目標にするならば正しく現実的な方法である。しかし実際には2ndステージは得点9・失点15の1勝6敗、15位にとどまっている。おそらく原因は、守備の部分にあるのだろう。石井・井原・路木の3バックはいかにも不安定だし、それ以外でも苦しい防御時に頼りになりそうな選手がピッチ上に見あたらない(西野ってどこ行ったの?)。数は多いが効果的な守りを行いきれてない印象だ。残り8試合の今補強するのも難しいだろうが、残り2〜3試合になっても残留争いに残っているようだと勝負弱いことで有名なチームカラーだけに、ちょっとヤバいかもしれない。

 今回の勝利で東京はホームで連勝、降格におびえホームでのふがいない戦いに憤慨していたのもいつのことやら、これで2ndステージ3位に浮上した。このままの調子で行けば、歴史が語るとおり棚ぼた得意のチームだけに優勝も笑い事では済まなくなってきそうな勢いだ。次からは名古屋・磐田と上位陣との対戦。そろそろ欠場選手も出てきて(次は文丈が出場停止、伊藤も試合中負傷で駄目かも)苦しい状況にもなりそうだが、正念場でこそ東京らしいひたむきな全員サッカーで戦い抜いてほしいと思う。結果は、きっと後からついてくるさ。

 

 

2001年9月29日 東京スタジアム

Jリーグセカンドステージ第7節

 

FC東京 3−2 浦和レッズ

 


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