東京圧勝!そして北の大地にJの理想の一端を見た、ような気がする。

 

 今回はアウェイ、北の果て札幌でのゲーム。FC東京は2ndステージ開幕のレイソル戦、ロスタイムに追いつかれて痛い勝ち点を落とし、対するコンサドーレ札幌も鹿島アントラーズに敗れて黒星スタート。中位の同じような位置にいるこの2チーム、開幕からの数戦で続けて星を落とすようなことになると下位がぐっと接近してくるだけに、この試合は文字通り「落とせない一戦」だ。私も夏休みということで観光も兼ねて(笑)新設間もない札幌ドームにかけつけた。

 

 札幌ドームは最寄りの地下鉄福住駅から徒歩10分ほどのところにあった。いや、「あった」というより「そびえ立っていた」と言った方がより正確だろう。銀色で、コンロで作るポップコーンのホイル(わかるかな?)みたいな形をしたドームはあまりにも巨大で、眺めていると遠近感が狂っていく。中に入ると、スタンドに囲まれた中央に鮮やかな緑色のピッチが照明に照らされて浮き上がっていた。スタンドや通路はやや暗めで、ピッチが舞台のように(実際、移動式のピッチのため野球のグラウンドレベルに対し高くなっている)存在感が強調されているところに、日本におけるスタジアム設計思想の進化を感じる。邪魔なトラックなどもなくスタンドの傾斜も急で、特にコーナー付近ではピッチが非常に近くて見やすい。見やすいところが一番であろうし、またアウェイで心細いので私たちもバックスタンドの一番東京側ゴール裏寄りに席を確保した。

 試合前、わざとらしいDJが「勝利の女神の登場です!」なんて紹介するから何が出てくるのかと思ったら、「コンサドールズ」なる派手なコスチュームの女子一団が出てきて踊り出した(ちなみにチームマスコットは「ドーレ君」……徹底して直球勝負だ)。札幌側ゴール裏のサポーターは手拍子などしていて温かいが、踊りの場所が客入りの悪いメインスタンド前でもあり、はっきり言ってショボい(笑)。彼女らはボールボーイ入場の際にも登場し、ボールボーイと一緒に輪になって踊っていたうーむ。あのお姉ちゃんたちは11月の厚別でもあの格好で出てくるのだろうか(笑)。同じ盛り上げの努力にしても、北海道新聞のCM(というかコンサ応援フィルム)の方はかっこよかったのになあ。

 開始30分ほど前になるとスタンドはもう8割近い入り(最終的には3万3千人)。ゴール裏以外のレプリカ着用率が高いため、見渡すとどこも真っ赤だ。みんなメガホン叩いて応援に参加する意識もあるみたいだし、札幌ファン・サポーターの熱心さには感心させられた。私の周りやゴール裏にはちらほらと東京サポーターの姿も見られるが、せいぜい100〜200人といったところだろうか。バックスタンド自由席にしていてつくづく良かった。もし指定席にしていたら、東京のタオルマフラーを巻いた私と由紀彦のレプリカを着たつれはコンサ軍団に囲まれて滅茶苦茶浮きまくっていたであろう。完全にアウェイの雰囲気であった。

 スタメン発表。東京は右サイド小峯にサブはノーFWで、いつもの面々。コンサドーレ側には名塚・野々村の名前がない。今現在名塚の貢献度がどうなのかは知らないが、野々村の方は昨年見ていた限り中盤の重要なリンク・プレーヤーであって、チームの戦力ダウンは否めまい。

 引き続いて試合前練習が行われたのだが、キックオフの時間が近づいてスタジアムDJが繰り返し「ピッチ練習の時間が過ぎています!」と注意しているのに(これは草サッカーか?)両チームとも平然と無視し続けているのが面白かった。

 

 キックオフ。得意のホームだけあって試合開始直後から札幌の攻撃に勢いがある。対して東京側は場内の大歓声とドーム独特の雰囲気にとまどった様子で、あれよあれよという間にFW播戸に頭でのファーストシュートを許す。これは土肥が弾いたものの、続いて4分、左サイドでスピードに乗ってドリブルするMF山瀬が浅利をぶっちぎってペナルティエリアに侵入、さらに鋭い突っかけでサンドロを抜きかけたところでサンドロが後ろから思い切り足をはらってしまい、これまたあれよあれよという間にPK。FWウィル(いわゆる俺王というヤツですな)に先制のゴールを許す。アウェイで先制を許し嫌なムードの東京は直後から反撃を図るが、札幌は5バックで堅守する形を見せる。この手のカウンター得意チームに先制を許すことほど嫌なことはない。好調時の東京と対戦する相手も、こんな感じでイライラするのだろうなあ。

 しかし、意外なことにこの嫌な時間帯は長続きしなかった。東京は中央突破が難しいと悟るや右サイドへの球出しに攻撃の糸口を求める。まず由紀彦のセンタリングにアマラオが合わせてファーストシュート(GK佐藤セーブ)。続いて10分、ケリーのパスから右サイドのスペースを駆け上がった由紀彦がグラウンダーのセンタリングでアマラオを狙うが、コンサドーレ守備陣も必死に戻ってDF森がスライディングでカット……したボールはGKの逆をつく形になってゴールマウスの中へ流れ込み、何とオウンゴール。まあカットしなけりゃ東京側が押し込んでたろうし、非常に処理が難しい球ではあった。でもオウンゴール(昔で言えば自殺点)だけに、喜んでいいのやらどうなのやら…。ともかく、これで試合は振り出しに戻った。

 その後も東京は右サイドにボールを集め、由紀彦+サイドへ流れた文丈がMF和波らを追いつめていく。さらに後方から逆サイドのスペースを狙った長めのパスを次々と出すが、小峯からのパスの精度が低く、こちらはなかなかチャンスにならない。小峯はこの後も攻撃に有効に絡むことができず、やはり内藤のいた時とは攻守のバランスに差異が出てくることが一層明確になった。一方札幌も、不運な失点にめげずに速攻で東京ゴールを脅かす。特に山瀬は動きのキレがずば抜けており、彼とウィル・播戸・MFアウミールが短いダイレクトパスをつなげてスピーディな攻撃を展開した。いわゆるトップ下「10番」不在のサッカーだが、手数をかけないシンプルさはカウンターサッカーにとっては逆に強みとなるものだ。センターバックがそれほどスピードのない伊藤・サンドロだったこともあって東京はコンサドーレの速さに対応できず、DFラインの裏へ抜けかけられる場面が頻出した。

 次に点が入ったのは27分。札幌陣左サイド深い位置、スローインを胸で受けたケリーがいきなりオーバーヘッドでセンタリング。シュートに備えてニア寄りに位置をとっていたGKの脇を抜けてボールはファーサイドに飛び、由紀彦と和波がゴール方向へ競り合ったところでボールが当たり、そのままゴール。東京、逆転に成功。最初場内アナウンスで由紀彦のゴールと発表されたが、すぐにオウンゴールと訂正。1試合にオウンゴール2発も珍しいが、それがホーム側、しかも堅守の札幌に起こるとは…。ちょっと居心地の悪い逆転劇だった(別に後ろめたいことは何もないのだが)。

 その後はどちらかと言えばコンサドーレの攻めが目立つようになる。2−1となった直後にはまたしてもダイレクトでつながれ、DFライン裏にボールが出るピンチに陥るが土肥ちゃんがタイミング良く前に出てセーブ。34分にはアウミールのミドルシュートをやはり土肥ちゃんが横っ飛びでキャッチ。この時間帯、東京右サイド、小峯の裏のスペースを使われる場面が目立った。いい球が出ないことが自分でも分かっていたのだろう、小峯の意識が前がかりになりすぎ、後ろを突かれては戻れないという感じであった。ただし、小峯のフォローがあてにできないだけに由紀彦が自ら相手MF・DFにことごとく勝負を挑み、結果としてチームのアグレッシブさが増すことになっていたのは良かったが。東京は42分にもしっかりクリアできぬまま自陣で次々とボールを拾われ、我々を冷や冷やさせてくれた。

 ところが、次に得点したのもまた東京だった。ピンチをしのいだ直後の43分、苦心してボールをつないで前線へ運び、アマラオ目がけてセンタリングが上がる。これは精度が低くゴールは難しいかに思えたが、ジャンプしたDF大森が手で触ってしまい、何とPKに。私の席からは遠い位置だったため本当にハンドかどうかは見えなかったが、プレー後すぐにケリーらがアピールしていたのでいかにもそれらしい状況ではあったのだろう。それにしてもいい時間帯にPKをもらったものだ。アマが落ち着いて蹴りこんで3点目。その後は44分に右サイドのスペースを持ち上がった由紀彦がDF2人を手玉にとってセンタリングを上げるがシュートは佐藤にキャッチされ、ロスタイム札幌のFKもウィルのシュートが枠をわずかにそれて、3−1のまま前半終了。

 

 後半、コンサドーレは和波に替えてFW黄川田を投入、前の人数を増やしてより攻撃的な形にシフト。好調の由紀彦には主に大森がマークにつき、封じ込めにかかった。

 いきなり1分、MFビジュの勢いあるドリブルを止めきれず、浅利が後ろから倒して警告をもらい、ペナルティエリアやや外でのFKとなった。ウィルが左足で放ったシュートは左外から大きく曲がり落ち、ゴール左上に決まってゴール。3−2。ウィルは「どうだ!」と言わんばかりに自分の胸を指さしてアピールし、場内われんばかりの大歓声。これは完璧なシュートで防ぐことは難しく、ビジュを倒してしまった時点で勝負は決まっていた。このゴールを機にコンサドーレは再び勢いに乗って東京陣で猛攻をかける。5分には波状攻撃から山瀬がミドルシュートを放つが、ゴールわずか左に外れて助かった。一方の東京は今度は左サイド小林に続けてボールが渡るが、足を痛めている小林にはいつもの繊細なボールタッチが見られず、ともに逸機してしまう。7分には劣勢を感じ取ったアマラオがウィルに対してディフェンスに入り、中盤で延々と競り合いを見せてくれた。この「抜こうとするウィル、くいさがるアマラオ」のバトルは「エース対決」の緊張感にあふれ、非常に見ごたえがあった。カッコよすぎである。

 11分、大森がチェックに入ろうと内に寄ったところ右サイドにボールが出て由紀彦が久々にスペースに抜け、センタリング。これは大きすぎたのだが逆サイド好判断で上がっていた藤山が拾い、フリーのアマラオへ渡す。アマは左からやや中央寄りにドリブルで入り、札幌DFの寄せが甘いと見るや、足で逆サイドゴールネットに突き刺して4点目。このシュート、スピードはないもののGKの位置をよく見て柔らかくコースを狙ったもので、アマの判断力と技術が光った1点だった。ただ、この追加点でもコンサドーレ側の戦意は衰えず、全体的にはまだ札幌の攻勢が続くことになる。東京は雰囲気こそ悪くないもののボールをとってからのDFラインの上がりが遅く、あまり褒められたサッカーではなかった。「カウンター長年やってますからまあ何とか帳尻は合わせてます」的な、いかにも今年の東京らしい試合展開であった。

 21分、またも大森の裏に抜けた由紀彦のセンタリングがはね返されたところ、ケリー・アマが長い手足を利してボールキープし、再び右で待ちかまえる由紀彦へ。由紀彦がDFラインの裏を狙って上げたクロスは一瞬ゴール寄りすぎるかと思えたが、空中で「ギュン!」と音をたてて(そう私には聞こえた)鋭く曲がり、DFの間に飛び込んできた文丈の頭にピタリと合った。5−2。3点という決定的な点差と、由紀彦の完璧なセンタリングを目の当たりにして、場内は異常なほどの静けさに包まれた。もちろん、東京側ゴール裏の一角を除いて。

 コンサドーレは残り時間わずかになるまでは試合を捨てず、25分には播戸に替えて曽田が、27分には大森に替えて森川を投入し、東京陣で意地の猛攻を見せる。ただ、リードした東京はいつもの通りMF・DFが下がりっぱなしになってスペースを埋め、札幌のアタッカーはそのスピード・突破力をいまいち発揮できない。中央で突破を図っては雲霞のごとく集まる東京DFの足にボールがかかり、苦しまぎれのクロスやアウミールのロングシュートは土肥ちゃんの餌食になった。こういう時はサイドチェンジやFWがサイドへ流れるなど横の揺さぶりが必要なのだろうが、札幌にはそうした意図を発揮するだけの余裕はなかった。

 30分、小林OUT加賀見IN。40分にはバックパスをかっさらった文丈がGKと一対一になるも、迷いまくった末に外すお約束の場面が見られた。終了時間が近づくと両チームともに雑なミスの続く退屈な展開になったが、東京は41分にお疲れのアマを下げて時間潰し要員増田を投入。ロスタイムには文丈→喜名の交代で時間と交代枠を使い切り、5−2のままタイムアップ。FC東京、J1に上がってからはあまり見られなかった派手な展開をものにし、アウェイで貴重な勝ち点3をゲットした。

 5−2というと確かに完勝ではあるしアウェイでの勝利は素直に喜ぶべきなのだろうが、しかし東京にしてみれば反省点もまた多い試合だったように思う。開始直後は浮き足だって全くやりたいサッカーができず、幸運な同点ゴールまでは(わずかな時間ではあったが)はっきり完敗ムードだった。それ以後も守備陣は3点差がつくまで札幌の速攻にやられっぱなしで、この日は攻撃陣の出来の良さと札幌の欠場の多さに助けられた感が強い。特に右サイドの小峯ははっきり攻守のウィークポイントとなっているようで、彼の人に対する強さは確かに貴重ではあるのだが、スペースを巡る攻防という面が強いサイドでその長所が生かせるのかどうかは疑問だ。バランス感覚のある伊藤を右に回すか、さもなくば梅山を使った方がいいように思う。次がJ最強のサイドアタッカー、アレックスを擁する清水との試合だけに気になるところだ。

 攻撃陣は怪我の小林を除けば、各々良い面が多々出せたように思う。特に絶好調由紀彦は今や東京オフェンスで最も重要な起点であり、ケリーと並ぶインパクト・プレイヤーだ。この日は札幌側の対応不足もあったが、ともあれサイドを制している限り得点力は維持できる。次の清水戦でアレックスと対峙してサイドの優位さを確保できるかどうか。上で述べた右サイドディフェンス面での不安と合わせ、今後を占う鍵になるのではないかと思う。今季あまり良くないホームで清水に勝てればチームは勢いに乗り、それこそ上位進出の目も出てくるに違いない。8月25日東京スタジアムは、必見の一戦だ。

 札幌は、やはり名塚と野々村の欠場が響いたように思う。2つのオウンゴールとアマラオのミドルの場面に表れたように、DFラインは状況に対し不安定で、チーム全体としては攻勢にありながらズルズル失点を重ねてしまった。混乱状況では「重し」となるベテランの存在がいかに大きいか岡田監督が知らなかったはずはないが、しかし名塚の代わりとなる選手はいなかった。また野々村が欠けたことは攻撃におけるワイドな展開を減少させ、終盤の沈滞につながった。これで開幕2連敗。1st序盤の貯金も使い果たし、チームは浮沈の分かれ目に立ったと言えよう。ただ、選手の顔ぶれを考えれば「堅守速攻」のチームコンセプトはまことに理に適っているし、実際攻められている時の圧迫感は相当なものがあった。そしてこのチームには、熱心極まりないファン・サポーターがついている。焦らず今のやり方を続ければ、2部落ちの心配はおそらくないだろう。

 日記にも書いたが、今札幌の街を歩いていると人通りも少なく不況の風がびしびしと感じられ、ともすれば寂しい気持ちにもなってしまいそうな雰囲気である。そういう状況を目にした後で札幌ドームを埋めた大観衆が一喜一憂する様や地元企業の厚い支援を見ていると、コンサドーレ札幌は「街のシンボル、人々の心のよりどころ」という、Jリーグの目指すクラブコンセプトに非常に近いところにいるのではないかと感じられた。黄色いビブスを付けたボランティアや試合終了直後(!)に配られる試合結果を速報する号外、そしてスタンド最上段で嬉しそうに観戦する車椅子の人たちもまたしかり。私の前の席にはコンサのキャップにレプリカで身を固めたおじいさんと「9 EMERSON」と書かれたシャツを着たお孫さんが並んで座っていた。そのおじいさん、杖をついて足元よろよろなんだけど、やっぱりすごく嬉しそうに観戦していて、コンサドーレが失点するとその度に絶望的な表情を浮かべる。で、ハーフタイムにはお孫さんに100円玉を渡して「ジュースでも買ってこい」つって「これじゃ買えないよ」なんてつっこまれたりして(笑)。ともかく、とても幸せそうだった。私も、父にスタジアムに連れて行ってもらってた頃を思い出して、ちょっと胸が詰まった。あの光景こそが、この社会におけるプロスポーツの本当の存在理由なのだと思う。私はあくまでFC東京サポーターだが、試合終了後、あの場で、一言言いたくなった。がんばれよ札幌、と。

 

2001年8月18日 札幌ドーム

Jリーグセカンドステージ第2節

 

コンサドーレ札幌 2−5 FC東京   

 


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